
「Getty Images」より
リクルートキャリアが昨年実施した調査によると、兼業・副業を禁止している企業は71.2%あることがわかった。副業に関心を寄せるビジネスパーソンや就活生は増えているが、企業がそのニーズになかなか対応できていない現状がある。
8月31日、一人ひとりのキャリアを支援するキャリアセンター「minatos」がセミナー「ねぇ、副業ダメな理由、言えます?」を法政大学で開催した。同セミナーでは、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔氏とIT会社員として働く傍ら、モデルとして活躍している竹本萌瑛子氏、minatos代表でパラレルワーカーの境野今日子氏が副業が浸透しない理由やメリットなどが議論された。
「副業=浮気」という思考は依存体質?
個人が海外で安い商品を輸入してフリマアプリやネットオークションで転売して収益を上げることが容易になるなど、副業をするハードルが下がっている。政府も副業推進を掲げているが、それでも副業を禁止する企業にはどのような理由があるのか。
田中氏「日本企業では、『我が社に入社したらあなたの人生を守ります』と終身雇用で働かせるのと同時に、『あなたを我が社で縛るので、余暇はレジャーをしてください』というメッセージも伝えます」
従業員の公私いずれも会社が管理する形が常態化していた日本企業において、余暇の過ごし方として副業は「ふさわしくない」と見られがちなのかもしれない。
また、田中氏によれば、副業禁止の背景には「自分の会社で囲ってきた人材が、別の仕事に面白味を感じて離れてしまうのが怖い」と、まるで「副業=浮気」のような解釈から、「他社と接することで離職されるかもしれない……」という企業側の不安があることも指摘する。
この発言を受けた竹本氏は「メンヘラですね。むしろ束縛されると違う相手を探したくなりますよね。よその会社を見ることで自社の良さに気付くこともあると思いますけど……」と続けた。
よその会社を見たことで「心が救われた」
社員の副業が、本業の会社にメリットをもたらす可能性もある。
竹本氏は「私の場合だと、本業では広告分野のマーケティングを担当しています。副業では広告において実際に消費者が目に触れるモデルの活動を行なっています。広告に関わる仕事を多方面から携わることで、業界理解も深まり、アイデアの切り口も広がっていると感じます」と話す。「副業での経験が本業にも活かされる」という好循環が起こり、ますます自身の成長を時間できるようになったそうだ。
また、「社外でも成果を上げることで、勤務先の会社も一緒に注目してもらえるような流れを作れることが理想」と、“副業を容認してくれた会社に貢献したい”という気持ちも生まれ、本業に対するモチベーションもアップしたという。
田中氏は、クリエイティブな欲求を副業で発散できる点をメリットに挙げた。
田中氏「本業は結構、ルーティン的になってしまう。副業をやっているとこういったセミナーに呼んでもらえて、ディスカッションできるので楽しい」
それだけではない。副業の大きなメリットは“コミュニティが増える”ことだと、三者は口を揃える。
田中氏は、「1つの会社に長く勤めて偉くなった気になりたくはない。違うことを知りたいし、会ったことのない人と話したい」と、多様なコミュニティとつながることの良さを語る。
境野氏も「コミュニティを増やすことはメンタル的に良い」と、自身の経験を話した。いわく、社会人1年目の時、「飲み会は強制参加」「カラオケに行っても新人は席には座らず“盛り上げ役”をしなければいけない」などの理不尽な謎ルールを課されていたという。当時はその会社しか“会社”を知らなかったため、それが当たり前だと思っていたが、副業をはじめたことで、「社会って結構広いな」と視野が広がり、心が楽になったそうだ。
上司に副業を促す“副ボス”導入の提案
副業を認めている企業は少ないが、認めている企業であっても“上司ブロック(副業が容認されているのに上司がそれを認めないこと)”が起きてしまうケースはある。境野氏は、副業を認める企業側が、上司教育もセットで行うことを推奨する。
そこで田中氏は、育児に積極的な上司“育ボス”のように、「副業をしている上司=イケている」という価値観を育むために副業をする上司を“副ボス”と位置づける制度を導入してはどうかと提案。
経営層に副業をしている時間はないが、課長級・部長級の社員の副業を促せば、上司ブロックも起きなくなり容易に副業を始められるようになるのではないか、という案だ。
境野氏も「制度ってなんでもそうですけど、上司が使っていないと部下は使いにくいですよね」と同意した。
働き方改革が浸透したことで残業禁止を掲げたにもかかわらず、副業を禁止する企業に対し、田中氏は「なんで自分の自由な時間のことを口出しされなきゃいけないの? 私たちは自分たちの人生を生きているのだから、そこまでコントロールするのはおかしい」と憤る。社員の公私両方を会社がコントロールする時代はもう終わった。
・イベント情報
みなトークDeep Vol.1
テーマ:「大企業辞めました。もったいないですか?」
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