貯金が得意な人に共通点はある? もっとも効率的な貯金のやり方とは

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「Getty Images」より

 貯金するのが苦手という人はみなさんの周りにもいると思います。実際のところ、どのぐらいの貯金があるのかはわかりませんが、「お金が貯まらない」という人は確かによくいます。

 一方で逆の人、すなわち貯金が得意な人もいるはずです。でも人は自分がたくさんお金を貯めていても、それを他人には言わないのが普通でしょうから、滅多にお目にかかることはありません。

 ところが、日常の行動を見ていると、これらの人たちに共通点があることがわかってくるようになります。それは行動経済学の視点で考えてみるとわかります。

「時間割引率が高い人」は貯金ができない

 みなさんは小学校の時に夏休みの宿題はいつ終わらせていましたか?

 夏休みが始まると同時にすぐ始めて早めに済ませてしまうか、あるいは計画的に少しずつやるか、それとも最後の一週間で一気にやるタイプだったか。容易に想像できるのは、最後の1週間で慌ててやる人が多いのではないだろうか、ということです。

 以前、私が所属している行動経済学会で日本医科大学の江本直也教授のお話を聞いたことがありました。その中に糖尿病患者のうち、先天的な理由ではなく、日常の生活習慣から発症したと思われる人にアンケートを取ったデータがあったのです。

 それは、その人たちが子どもの頃、夏休みの宿題をいつやっていたかという設問です。ここでは65%と、約3分の2にあたる人が夏休みが終わる直前にやっていたという結果でした。

 生活習慣による発症というのは、いわば「食べ過ぎと運動不足」が主な原因です。そういうことは体に悪いとわかっていてもつい目の前の美味しいものを我慢できず食べてしまったり、運動することが面倒だったりするということから糖尿病になってしまうという傾向が強いということです。

 行動経済学ではこういうタイプの人を「時間割引率が高い人」という表現をします。これは将来の価値よりも現在の価値を重視する、すなわち将来の楽しみのために今の楽しみを我慢することが難しいという意味です。

 食べ過ぎや運動不足が体に良くない、将来的には健康に悪い影響を与えることは誰でもわかることです。にもかかわらずそういう行動をとってしまうということは明らかに将来の価値よりも現在の価値を重視しているからです。

 小学校の宿題も同じような構図です。夏休みは時間がたっぷりあって遊べますが、同時に宿題もやらなければなりません。宿題という嫌なことは先にやっておいたほうが良いにもかかわらず、どうしても楽しいことを先にやり、嫌なことは後回しにしてしまう心理になるのです。

 では、お金を貯める場合はどうなるのでしょう?

 貯金という行為は「将来の楽しみのために今の楽しみを我慢する」ことです。したがって将来の価値を低く見積もりがちな「時間割引率の高い人」は、貯金するのも苦手ということになります。

 これは仕事をする上でも同様で、嫌なことや面倒なことを先延ばしにするタイプの人は、なかなか貯金ができない傾向があると言って良いでしょう。ところが世の中、かなり多くの人がこのタイプなのです。

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貯金が得意な人に共通点はある? もっとも効率的な貯金のやり方とはの画像3 ウェジー 2019.01.18

貯金が得意な人は存在しない

 では、貯金が得意というタイプの人は一体どんな人なのでしょうか? 実はそんな人は世の中にはほとんどいません。

 “貯金が好き”という人はたくさんいますが、それが得意だという人はほとんど存在しないのです。

 前述のように世の中の多くの人は、「時間割引率の高い」タイプの人です。中にはそうでない人もいますが、生活や仕事全般にわたって何でもかんでも嫌なことから先にやれるという人はごく少数でしょう。したがって、何もせずに放っておくと人間というのは貯金ができない体質になってしまうのです。

 だからこそ世の中には「退職金」や「企業年金」という制度が存在しているのです。退職金等は長年働いたご褒美なのではなく、単に「給料の後払い」です。本来なら給料に上乗せして支払っても構いませんし、現実にそういう会社もあります。

 ところが、もしほとんどの会社でそうやって退職金を前払いにしてしまうとどうなるでしょう。多くの人が老後の蓄えを自分で計画的にすることは苦手なのですから、結果として今よりももっと多くの人が悲惨な老後を送ることになりかねません。つまり貯金とか資産形成というのは人間の本来の欲望や行動とは相反することをやらないとできないから難しいのです。

 だとすれば、一体どうすればいいのでしょう。答えはごく簡単です。仕組み化すればいいのです。

 お金をもらってしまって、そこから貯金するのが難しいということであれば、お金を手にする前にあらかじめ一定の金額を別にしておくように仕組み化するのです。

 つまり会社が本来払うべき給料を「退職金」や「企業年金」として積み立てているのと同じことを個人でもやればいいのです。それが「給与天引き」です。自営業の人であれば、毎月定期的に自動引き落としで貯蓄をする仕組みを作ってしまうことです。

 私自身も時間割引率が高い人、すなわち貯金するのが苦手な体質でしたから給与天引き以外で貯蓄できたためしはありません。よほど意志の強い、時間割引率の低い人以外は金融機関の天引きを活用するのが何と言ってもベストな方法といえるのではないでしょうか。

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貯金が得意な人に共通点はある? もっとも効率的な貯金のやり方とはの画像3 ウェジー 2018.09.10

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