劇団内外への報道や言動には、タカラジェンヌのイメージを守るための「すみれコード」と呼ばれる規定が存在する。実年齢は非公開で、男性との交際がオープンになることも厳禁だ。
宝塚の運営の主体が興行である以上、観客であるファンの支持は絶対だ。ジェンヌにはそれぞれ、私設ファンクラブが存在する。日々の劇場入りでの声援や、チケット、グッズを大量に購入してくれるだけでなく、公演のたびには「お茶会」と称するファンミーティングが開催され、集められた会費は、薄給のジェンヌの文字通りの給料にもなっている。
ファンクラブの幹部は自宅への送り迎えするなど、マネジャーのように公私、そして物心両面でジェンヌを支える。劇団は表向き、私設ファンクラブが存在することを世間に認めてはいないが、海外滞在中の生徒への連絡をファンクラブ幹部に依頼するなど、“仲良く”やっているのが実態である。
男役と娘役の歴然とした差
AKBグループなどのアイドルと違い、宝塚では恋愛自体は禁止されていない。かつて関西では、劇団の養成学校である宝塚音楽学校できびしく教育されているタカラジェンヌたちは理想の花嫁候補ともいわれていた。寿退団は、劇団からもファンからも祝福される最高の卒業だ。
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しかし前述のとおり、男性との交際がばれることは、男役か娘役の“性別”を問わず「すみれコード」に違反する。ジェンヌの女性としての幸せを否定するわけではなくとも、現役タカラジェンヌである間は、男性との交際は「清く正しく美しく」ない。
会いに行けるアイドルたちが疑似恋愛をふりまくのに対し、ファンの大半が同性である宝塚は、ファンの愛する世界観をいかに体現するかが推しの理由だが、“処女性”を強硬に求められる点では同じ、といえるかもしれない。
礼は男役で、宝塚の顔であるトップスター就任間近という立場もあり、批判も大きなものとなったが、もしこれが、娘役だったならばどうだろうか。