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子宮頸がんワクチンを娘に接種させるか否か、判断に悩む親たちは「正しい説明」を求めている

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「Getty Images」より

 子宮頸がんワクチンを娘に接種させるべきか、否か。対象年齢の娘を持つ筆者のまわりの親御さんはみな、頭を悩ませている。

 厚生労働省が昨年実施した全国アンケートでも、原則無料となる定期接種対象に当たる12~16歳の女子とその家族の4割が、「わからないことが多いため、決めかねている」と答えている。

 無理もない。国による子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨が2013年に“一時差し控え”されてから、もう6年だ。ワクチンを受けさせるつもりでいた親でも、国のお墨付きがなくなっては不安で、なかなか接種に踏み切れない。

 また、市町村などがリーフレット、ハガキなどを使ったワクチン接種の呼びかけ、周知活動をしなくなったため、ワクチンの存在自体を知らない人も多い。

 結果、日本で70%あった子宮頸がんワクチンの接種率は、2018年には0.6%にまで落ち込んだ。事実上の接種停止状態だ。

 一方、海外先進国では軒並み70〜90%(北アイルランド90%、スコットランド89%、ベルギー84%、スウェーデン80%、オーストラリア(女)79%、カナダ73%)で、後ほど詳しく述べるが、男性への接種が進んでいる国も多い。(日本産婦人科医会 2019年7月10日記者懇談会資料より引用)

 日本の状況は世界的に見ても極めて特異で、WHO(世界保健機関)は「そのせいで頸がんの死亡率が上昇している」と、日本を名指しで批判しているほどだ。

■子宮頸がんワクチンで救える命は年間2,500人、がんを免れる人は7,000人、円錐切除術を免れる人は6,300人

 子宮頸がんワクチンは、性交渉によって感染、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンだ。

 日本では年間約3,000人が子宮頸がんで命を落とし、約10,000人が罹患している。また、近年、若い世代の子宮頸がんの罹患率は増加傾向にある。

 子宮頸がんにかかると、初期で見つけて子宮の入り口を切除する手術をしても、妊娠や出産、性生活に支障を来たす可能性がある。

 女性だけでなく、家族のクオリティ・オブ・ライフにも影響する。欧米でHPVウイルスが “マザーキラー・ウイルス”と呼ばれるのは、子宮頸がんの発症年齢が、女性が小さな子どもを持つ子育て世代の年齢に重なるからだ。

 日本産婦人科医会が今年7月に行った記者懇談会で発表されたデータによると、現在日本で認証されている子宮頸がんワクチン2価、4価で、年間救える命は2,500、がんを免れる人は7,000人、円錐切除術を免れる人は6,300人。それだけの命や健康が、本来、予防できるはずのがんの危険にさらされたままになっている。

 子育て世代の女性が子宮頸がんで「子宮を失う」、「命を失う」ことは深刻な社会問題だ。なぜ、国はワクチンの接種勧奨を再開しないのか。そもそも、なぜ、ワクチンの接種勧奨は中止されたのか。

積極的接種勧奨を再開しない厚労省

  子宮頸がんワクチンは2010年から国の補助事業が開始され、多くの自治体で無料接種が行われるようになった。6年前の2013年4月には、小学6年生から高校1年生相当までの年齢の女性を対象に、公費で受けられる定期予防接種に加わった。

 しかし、接種後にけいれんする、歩けない、慢性の痛みがあるといった、非常に重い症状が生じたという報告が相次いだ。少女が激しくけいれんする、ショッキングで痛ましい姿がテレビでも盛んに報じられたので、覚えていらっしゃる方も多いだろう。

 厚生労働省はわずか2カ月で「積極的な接種勧奨の一時差し控え」を決定した。同省はすぐに専門家を集めて調査を行い、同年12月には、これらの重い副反応は思春期によく見られる「身体表現性障害」、つまり心因性のものである可能性が高く、ワクチンとの因果関係は証明されていないとの見解を示した。

 その後も同じ見解を崩しておらず、現在も法律上は定期予防接種であり続けている。にもかかわらず、積極的接種勧奨の“一時差し控え”は、6年経った今も継続されたままだ。

 この奇妙な事態を、専門家でもない親はいったいどう判断すればよいのか? 判断などできない。国のお墨付きがなくなったことで、ほとんどの親は不安でワクチン接種に踏み切れなくなった。結果、日本の子宮頸がんワクチン接種は、事実上、停止状態になってしまった。

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