覚せい剤逮捕の元経産省キャリア官僚公判で明らかになった異常な残業時間「仕事に行くために覚せい剤を打った」

【この記事のキーワード】

月に300時間の残業

 資源エネルギー庁から経済産業省の製造産業局自動車課に配置換えとなった2015年、西田被告はうつ病を発症した。それには資源エネルギー庁時代の激務が影響していたようだ。

 「当時は残業がかなり多く、月に150……多いときは月に300時間。帰れない日もありました。1週間泊まり込みも……。緊張感と責任でなんとか耐えていましたが、通勤時に車が走っているのを見て、轢かれたらどれだけ楽かと考えたこともあります。自動車課に移ってからの残業は月100時間程度でした」

 自動車課でも残業時間は多いが、資源エネルギー庁での尋常ではない残業時間の多さが、西田被告の精神を追い詰めたのか。

 「当時の医師から、過労の状況は、当時、緊張感があって耐えられたが、移動で時間的余裕ができて、それまでのストレスがかかったのではないかと言われました」

 うつ病が悪化する中、西田被告は数カ月単位の休みを3回取得したが、病状は改善しなかった。薬の量は増えてゆく。 

 「正直、悪くなる一方で、今に至るまで通院しています。抗うつ剤や眠剤など……中には強い薬もありました。より効果が強いものを求めるようになり、ベタナミンが処方されるようになりました」

 それでも完全には回復しない。その次に西田被告が目をつけたものがリタリンだった。うつ病ではリタリンは処方されないため、これをネットで購入するようになる。

 そんな生活を送る中、上司から「今度休みを取るときは休職扱いにして、その後は配置換えにしよう」という提案をされた。この提案が、強い薬に手を出し回復を焦っていた西田被告を、さらに焦らせたようだ。

 「私としては当時の自動車課で働きたいと思っていましたが追い詰められて、なんとか仕事に行かないといけない、と……。自動車課で働くか、休んで異動するか、その二択を迫られていた、藁にもすがる思いで手を出した」

 こうして今年2月、覚せい剤に手を出してしまった。使用頻度も高く、1日2回の頻度で毎日使用。経済産業省のトイレや会議室でも注射器を用い、自己の体内に摂取していた。

 「朝起きて、出勤前に注射で打っていました。起きたらまず打つ……。覚せい剤を使った時の抗うつ状況改善……言っちゃ悪いけど、これをやれば一番よくなると思い、打っていました」

 うつ病の悪化を食い止め、休職を避けたいとの思いから手を出した覚せい剤だった。それは何よりも、仕事にやりがいを感じ、仕事を続けていきたいと強く思っていたからだろう。

 だが、働き方改革などを推し進める中、国家公務員がこれほどの激務にさらされている状況に矛盾を感じざるを得ない。少なくとも西田被告にとっては、違法薬物に手を出さなければ仕事を続けられない、と追い詰められるほど、過酷な就労状況だった。彼以外にも、こうした環境で働き続けている者がいるのではないかという疑いも湧く。

 西田被告の公判が報じられることで、彼が置かれていた過酷な状況が広く知られることとなった。今回の件で経済産業省は5月31日付で、西田被告を懲戒免職処分としたが、これで一件落着ではなく、改めてその職場環境を見直す機会ではないだろうか。

厚労省のハラスメント告発に経産省OBが「成果を出してから言え」と時代錯誤な批判

 今年4月にスタートした「働き方改革」の旗振り役を担う厚生労働省こそ、現状の過重労働を改善しなければならない――こうした思いから、今年4月に発足した「厚…

覚せい剤逮捕の元経産省キャリア官僚公判で明らかになった異常な残業時間「仕事に行くために覚せい剤を打った」の画像1
覚せい剤逮捕の元経産省キャリア官僚公判で明らかになった異常な残業時間「仕事に行くために覚せい剤を打った」の画像2 ウェジー 2019.08.27

1 2

「覚せい剤逮捕の元経産省キャリア官僚公判で明らかになった異常な残業時間「仕事に行くために覚せい剤を打った」」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。