医師不足が招く救急医療体制崩壊という負のスパイラル

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「Getty Images」より

 救急車が到着しても、病院側が受け入れ不能で、救急搬送のたらい回しに関する報道は後を絶たない。この国が抱える医療の問題は、救急医療が顕著だが、医師不足をはじめ、その他にも複雑に絡み合っていて、深刻だ。

 大阪府三島救命救急センターが6月に、医療者の人材確保に関わる運営資金確保のため、クラウドファンディングを実施し、9月3日に終了した。運営資金の目標金額は2,000万円だったが、寄付金総額は4,180万円以上にもなった。

地域の救急医療存続のために

 大阪府三島救命救急センターが今回、クラウドファンディングによる寄付を募ったのは、このままだと財政難で医師や看護師など医療者の人材確保ができず、救命センターとしての機能を失う可能性があるからだった。

 財政難に陥った理由はいくつかあるが、医師不足による「救急搬送患者の受け入れ制限」で、診療収入が大幅に減少したことが大きいという。診療収入が減少すると、ますます医師を増やすのが難しくなるという負のスパイラルが生じている。

 3年後をメドに、大阪府三島救命救急センターは大阪医科大学附属病院内へ移転する予定だ。それまで、救急医療の高度な技術と知識を持つ医療者たちが働き続けられる環境を整え、新たな人材と運営資金を確保し、地域の救急医療をつなげていきたいとの思いがあった。それが、今回のクラウドファンディングに挑戦した理由だったという。

 たまたま運の良かった人だけが、どこかの医療施設で治療が受けられるようではいけない、命を救うことに向き合い続けていくとの大阪府三島救命救急センターの熱い思いが、今回のクラウドファンディングで多くの人に届いたのであろう。

救急車を呼ぶか迷ったら#7119に相談を

 東京消防庁では、東京消防庁救急相談センターを開設している。救急車を呼んだほうがいいのか、今すぐ病院へ行ったほうがいいのかなど迷った際に相談できる。#7119にダイヤルすると、救急相談センターにつながり、医師・看護師・救急隊経験者などの職員が24時間年中無休で対応してくれる。

 #7119で相談して、緊急性の高い症状の場合は救急車を手配してくれ、緊急性を要しない場合は、状況に応じて病院へいつ頃行ったらいいのかなどのアドバイスから診察できる病院の案内までしてくれる。

 緊急性が高いと判断した場合は、従来通り119に電話して救急車を要請し、緊急性の有無がわからない時や迷った時は、まず#7119を利用するよう救急センターは呼びかけている。また、東京消防庁の#7119救急相談センターのページにアクセスすると、インターネットでの問い合わせも可能だ。#7119は、平成30年10月1日の時点で、全国13地域で実施されている。

 また、自治体によっては#7119以外の番号で実施しているので、自分の住んでいる地域ではどのようになっているか、前もって調べておくのも良いだろう。#7119を利用するような体調の時には、この番号やこの存在自体が思い出せなかったり、調べる余裕がなかったりする事態もあり得るからだ。

 救急車を呼ぶような体調の時に、躊躇してしまったり、そこまで緊急ではないだろうなどと自己判断してしまったりする時もある。筆者は、以前体調を崩し、かかりつけ病院の救急外来を受診した。タクシーで病院へ行ったのだが、救急の担当医に「これは、救急車で来る案件ですよ」と言われた経験がある。

 漫画家の七坂ななさんが#7119を利用した時の様子を漫画で描き、以前、Twitterで話題になっていた。#7119で相談し、救急車を呼んだほうが良いと判断されて、手配もしてもらったので、悩むこともなかったという。この漫画が、急病の時、誰かの参考になれば幸いだと七坂さんは言う。

子どもの救急相談は#8000へ

 #7119は大人の救急相談で、子どもの医療電話相談は#8000だ。こちらは、保護者が休日・夜間の子どもの症状に、どのように対処したらよいのか、病院を受診したほうがよいのかなどを小児科医師・看護師に電話で相談できる。

  #8000は、全国の都道府県で導入しているが、そのほとんどの実施時間は、夜間から早朝までだ。また、平日と休日で実施時間が違う自治体もあるので注意が必要だ。

(厚生労働省 子供医療電話相談事業#8000

全国に最低でも2,191人存在する「無給医」

 日夜、患者を救うために奮闘している医師だが、無給医という言葉を聞いたことはあるだろうか。無給医とは、主に大学病院などで診療行為をしているのにもかかわらず、給与をもらっていない医師のことをいう。

 今までは、無給医はいないとされていたが、今年の6月に文部科学省が2,191人の無給医の存在を公表した。これは、文部科学省が、全国の大学病院に無給医がいるかどうかの調査を実施し、その結果を公表したものである。しかし、精査が必要な回答もあり、実際にはもっと多くの無給医がいる可能性があるという。

 多くの著作もある医師の中山祐次郎氏によると、無給医がいるのは、医局の権力構造と給料がつくようなポストがその人数分はないという背景があるという。

 文部科学省は、調査結果を踏まえ、各大学病院に適切な雇用、労務管理を行うよう通知を発出した。

無給医になっている医師へのアンケート

 全国医師ユニオンでは、9月1日から9月30日まで無給医労働実態調査として、現在無給医になっている医師にアンケート調査を行っている。これは、無給医の労働実態を把握し、メディア等社会に訴えたり、文部科学省、厚生労働省に要請する際に役立てるという。

(全国医師ユニオン 無給医労働実態調査2019

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