社会

医師不足が招く救急医療体制崩壊という負のスパイラル

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医師不足や過重労働を解消する有効な施策

 政府の働き方改革の一環として、時間外労働の上限規制があるが、原則として月45時間、年360時間だ。医師はこの原則の適用猶予・除外の職種で、医師の時間外労働の上限規制は、原則年960時間としている。

 しかし、救急医療機関などでは特例として、過労死ラインのほぼ倍にあたる年1,860時間とすることで現在議論されている。ちなみに医師の時間外労働の上限規制は、2024年度に適用される。

 厚生労働省によると、2007年度以降、医学部の定員を大幅に増員しているが、地域や診療科によっては医師不足であるとしている。医師の養成には10年以上必要であり、すぐには出口が見えない状況だ。

 筆者が以前住んでいたネパールでは、地方の国立大学付属病院の医師の給料に、多額の地方勤務手当がつく。首都カトマンズ出身の友人の妹が医師で、インド国境にある酷暑の地方都市の病院に勤務しているのだが、給料が良いので赴任したと言っていた。ひとつの例ではあるが、ネパールでは地方勤務手当が、医師が辺境地に向かうきっかけとなっていた。

 勤務医の過重労働を減らすためには、医師の数が増えた後は、将来的に勤務の3交代制が望ましい。机上の空論のようだが、実際に3交代制を導入している病院もある。

 湘南鎌倉総合病院救急救命センターは、2013年から救急医の完全3交代制を導入していて、多くの女性医師も在籍している。3交代制を取り入れる病院が増えれば、育児や介護などで長時間勤務が難しい医師が働ける場所が増える。

 また、厚生労働省では、2025年までに10万人以上の特定看護師を育成する方針を示している。特定看護師とは、医師が事前に作成した指示書により、医師の指示を待たずに特定行為ができる看護師をいう。特定看護師養成の研修施設はまだ限られているが、今後増やす方針だという。

 各病院においても、外来診察に医療クラークと呼ばれる「医師事務作業補助者」(特に資格は要らない)を活用する方法がある。この業務には「医師事務作業補助体制加算」という診療報酬点数もつくので、積極的に導入し、医師の負担を軽減する効果があるとされる。

 医師事務作業補助は、1台のパソコンに2台のモニターを設置し、医師の指示を医療クラークが代わりに電子カルテに入力する業務をするケースが多い。医師が患者に向き合って診察できる利点もあり、患者の待ち時間減少にもつながる。

 ある医師がTwitterで、初めての病院にアルバイトに行った際、その病院では医療クラークがすべて入力するシステムで、効率的に診察が行えてとても良かったとツイートしていた。

 私たちが必要な時に適切な医療が受けられる社会は、医師の適切な労働環境、健康で文化的な生活を送る時間があってこそ、実現できる。

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