予防接種を打てばワクチンの効果は死ぬまで続くの?

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「Getty Images」より

 子どもが産まれると、予防したい病気のワクチンをいくつか打つことになります。しかし、そのスケジュール管理が複雑だったり、「予防接種は毒を打つようなもの」「ワクチンを打つと自閉症になる」という話がまるで真実かのように語り継がれていたりで、混乱してしまう親御さんは多いのではないでしょうか。

 自分で詳しく調べようとしても医療の専門書は難しく、だからといって、わかりやすく書かれた「ワクチン有害説の本」を手に取ると、まるで多くの医者や製薬会社が極悪人のように思えてくるかもしれません。

 そこで、小児科医である森戸やすみ先生(さくらが丘小児科クリニック)と宮原篤先生(かるがもクリニック)が、とにかくわかりやすく予防接種のことを伝える『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社)をリリースしました。

 WEZZYではその中から、特に多くの親御さんが疑問に思うであろうトピックを抜粋し、掲載します。まずは「予防接種の効果って、いつまで続くの?」という疑問。大人だって、子どもの頃に打ったワクチンの効果が今もあるのかどうか、気になりませんか?

Q.予防接種の効果っていつまで続くの?

A.生ワクチンは10年以上、 不活化ワクチンは3~10年くらいだといわれています

 たまに、 「ワクチンを接種しても、いつかは効果がなくなってしまうのだから、意味がないのでは?」という意見を聞くことがあります。

 多くの生ワクチンは、1回の接種で、ある程度の免疫獲得が期待できます。ただ、2回接種することで長期免疫が維持できます。

 また不活化ワクチンは 「ブースター」といって効果を増幅させるための定期的な接種が必要です。

 では、予防接種の効果は、いつまで続くのでしょうか。

 一般的に生ワクチンだと10年以上、不活化ワクチンなら3~10年といわれていますが、 例外もあります。いつまで持続するのかは、主に①ワクチンの性能、②流行状況、③接種された人の免疫状態、④接種年齢によるのです。

①ワクチンの性能

一般的にワクチンに含まれる抗原が強いほど効果(免疫原性)は長続きし、逆に免疫原性が弱いほどワクチンの効果は短くなります。
また、一般的に不活化ワクチンは免疫原性が弱く、免疫原性を高めるためのアジュバントが入っていても、1回の接種では効果が弱いのです。
2~3回続けて接種することで、予防効果を得ることができます。これを基礎免疫と呼びます。
その他、ワクチンの期限切れや悪い保存方法(輸送・保管温度)でも、効果は低下します。

②流行状況

ときどき感染症が流行していれば、 自然感染を繰り返すことになり、 抗体が長持ちします(ブースター効果)。
しかし、新たな自然感染がなければ、抗体は少しずつ下がっていきます。
すると、 「自然感染のほうがいい」と思う人もいるかもしれません。しかし、自然感染しても、ブースター効果を得られなければ再感染することがあります。
また、繰り返しになりますが、感染症が流行し、予防接種をする前の赤ちゃん、免疫が付きにくい人、予防接種をできない人などが犠牲になるのは好ましいことではありません。

③接種された人の免疫状態

一般的に免疫状態が悪い状態で予防接種をすると、抗体は付きにくくなります。生ワクチンであれば、本当に感染してしまうこともあるので注意が必要です。
免疫が低下する病気にかかっている、 または免疫抑制剤などを飲んでいる場合は、 予防接種前に医師に相談してください。
感染などで免疫が抑制された状態のときも、免疫が付きにくくなります。
風邪程度であれば問題になりませんが、麻疹にかかると一時的に免疫抑制状態になり、少なくとも1か月は生ワクチンを接種しないほうがいいといわれています。ただ、最近は麻疹にかかると3年ほど免疫抑制状態になり、他の感染症で命を落とすことがあるとわかってきました(※1)。

④接種年齢

日本の定期接種スケジュールは、抗体が上昇しやすい年齢に設定されています。
例えば、1歳未満で麻疹ワクチンを接種しても効果が十分でないことが知られています。
1歳になったら(前回の麻疹ワクチンなどの生ワクチンから少なくとも27日開けて)、再接種が必要になるのです。

 生ワクチン(麻疹・風疹・おたふく風邪・水痘)は、十分な抗体が付くように、また一次性ワクチン不全に対応するために3~6か月後、二次性ワクチン不全に対応するために3~5年後に再接種が必要です。

 日本の定期接種では、例えば水痘ワクチンは一次性ワクチン不全への対策として初回接種から3か月以上(一般的には6か月)経過してから2回目の接種を行います。

 MRワクチンは、1回目が1歳、2回目が二次性ワクチン不全への対策として小学校入学の前年(年長)時の接種です。

 いずれにせよ、これらの生ワクチンは周囲の接種率が高く、しかも1歳を超えて2回接種していれば、原則として抗体の検査や追加接種は不要です。

 もちろん、例外はあります。2005年からアメリカのアイオワ州を中心に、青年層でおたふく風邪が流行したときには、3回目のMMRワクチンを接種することで終息しました(※2)。

 一般的に不活化ワクチンは基礎免疫が付いていても、3~10年おきに再接種(ブースター)が必要です。ただ、B型肝炎のように一度抗体ができれば低下しても効果が続くために再接種不要とされているものもあれば、 インフルエンザのように毎年接種すべきものもあります(※3)。

 ワクチンの効果は短いから、ワクチンは不要というわけではありません。ワクチンは病気になっては困る人たちを守るためにも、適切な時期に接種することが大切なのです。例え効果が短くても、多くの人が接種していれば感染症は蔓延しませんし、さらに必要に応じて追加接種を行うなどの対策を立てれば問題はありません。

 そもそも、自然感染でも条件が整えば再感染することがある以上、自然感染のほうがいい、という根拠にはなりません。特に問題がなければ、通常のスケジュールでワクチンの接種を進めていきましょう。

※1Mina MJ et al. Science. 2015 May 8;348(6235 :694-9 )
※2CDC. MMWR May 18, 2006 / 55(Dispatch ;1-5 )
※3日本環境感染学会 「医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版」

<※この記事は『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社) から引用、掲載しています>

宮原篤(みやはら・あつし)/小児科専門医・国際渡航医学専門医・臨床遺伝専門医
大学卒業後、成育医療研究センター成育遺伝部での研究や大学病院などの研修を経て、総合病院小児科に勤務後、東京都千歳船橋に「かるがもクリニック」を開設。地域の小児医療に貢献したいと考えている。@atsushimiyaharaかるがもクリニック

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