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体罰禁止の理解はなぜ進まない?「自分の過去を否定したくない」の声

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『梅沢富美男のズバッと聞きます!』公式サイトより

 9月18日に最終回を迎えた『梅沢富美男のズバッと聞きます!』(フジテレビ系、以下『梅ズバ』)。この日は2時間に渡る生放送で、梅沢をはじめとする“昭和世代”とみちょぱこと池田美優ら“平成世代”による、社会問題についての徹底討論が行われた。

 ハラスメント、あおり運転などのテーマがあったが、中でも「子育てに親の体罰は必要?」の議論は興味深いものだった。

 番組放送の前日である9月17日、東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5歳)が両親の虐待によって死亡したとされる事件で、結愛ちゃんの母親で保護責任者遺棄致死の罪に問われていた船戸優里被告に、懲役8年(求刑懲役11年)の実刑判決が東京地裁で言い渡された。事件当時は優里被告も結愛ちゃんの継父で夫の船戸雄大被告からDVを受けていた。

 この目黒虐待死事件の母親の判決について、吉田明世アナウンサーから感想を聞かれた梅沢は、「あのお母ちゃんに対する憤りってのはもっともっと強いんだけど」と憤りをあらわにし、継父の暴力から結愛ちゃんを守れなかった母親を強く批判した。

<(公判で優里被告は)自分が被害者みたいな気持ちになって色んなこと言っていたよね>
<子どもを守んなきゃ! それもできないやつが何が被害者なんだよ! お前立派な加害者だろ!>
<何で守ってあげられなかったんだよ!>
<人間じゃないね。それで8年。軽いような気がする。あの子の命は帰ってこないんだからね>

 一方、宮根誠司は<まず、本当に旦那さんが怖かったら逃げるシェルターみたいなところを教えてあげるとか、もっといっぱいつくるとかしてあげなきゃいけない>とDV被害者支援の必要性を挙げていた。

 目黒の虐待事件の影響もあり、今年6月には、親から子どもへの体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が参院本会議で可決、成立した。2020年4月から施行予定だ。暴力や暴言による教育が子どもの健全な成長の妨げになるということも、科学的に証明さているが、それでも「躾としての体罰は必要だ」という意見は少なくない。

 『梅ズバ』が行った街頭インタビューでも、40代男性2人は「(体罰を)ゼロにするのはよくない」「ちゃんと怒る理由があって自分たちの子どもの将来を思ってやるのであればあってもいい」と意見。子育て中の30代女性2人も、「(体罰禁止は)きつい」「それ(体罰をしない)が一番いいのはわかってるけどできない、自分との戦い」と語っていた。

 なぜ体罰禁止に頷くことが出来ないのだろうか。

長嶋一茂「自分の過去を全部否定するみたいで嫌なわけ」

 スタジオでも、長嶋一茂と東国原英夫は親から子どもへの体罰を必要と主張した。長嶋は、親の体罰と学校の教師・指導者からの体罰は、分けて考えるべきだと説明。自身は体罰を受けて育ったが、「心に傷なんか負っていない」という。

<僕はたくさん殴られましたけれど、心に傷なんか全く負っていないし>
<俺なんてグラウンド立っていて『お前体がでかいから』って言ってボコって殴られたような時代>
<そういう時代のこと、俺は否定はしたくないんだよ。自分の過去を全部否定するみたいで嫌なわけ>

 しかし一方で、親の体罰は必要としつつも教育現場での体罰禁止には理解を示した。

<でも、時代は変わってて、今はそういうものじゃないと思っている。やっぱりコーチ・監督と選手…いわゆる強者と弱者、教えるほうと教えられるほうのスタンスってフィフティフィフティだと思うの。やっぱり同格に考えてお互いにリスペクトしながら、教えるほうも教えられるほうもお互い何かを吸収し合える関係性が一番だと思っている>

体罰禁止が成功している国もある

 “平成世代”の出演者でカリスマ美容師だという米田星慧は、親でも学校の教育でも「断固として暴力には絶対的に反対」「それはもう何をしても、少しお尻を叩くだけでも絶対にダメ」だと訴え、「『将来を考えて殴る』は教育としてありえない! 言葉で理解させる説得力を持て」と主張した。

 米田は暴力に反対する理由を2つ挙げた。ひとつは、『ぶたれたらダメなんだな、ぶたれるまではいいんだな』という考えがついてしまうこと。もうひとつは、ここで暴力による体罰を止めない限り、次の世代へも暴力が連鎖していくからだという。

 米田の証言を裏付けるように、東大工学部のナゾトキタレント・松丸亮吾は、親の暴力が子どもに連鎖することが調査で分かっているというエビデンスを紹介。また、スウェーデンなど他国で体罰禁止をした結果、親の暴力は1%まで下がり、暴力なしで子どもを教育する研究がどんどん盛んになったと説明し、体罰肯定派の出演者を唸らせた。

 また、昭和世代ではあるものの、国際弁護士の八代英輝も暴力不要を唱える。八代弁護士は暴力による教育を受けたことで自分の中に“傷”が残っているといい、自分の子どもは暴力を振るわずに育てたそうだ。その結果、まっとうな大人に成長し、「18年かけて暴力は不要だということを実証できた」と振り返った。

 改正児童虐待防止法を受け入れがたい人は、単純に「躾として暴力は必要」という考えだけでなく、「漠然とした不安」や「自身の育った環境を否定したくない」という複雑な思いがあると考えられる。

 しかし番組で紹介されたように、暴力や暴言は子どもの脳に深刻なダメージを与えるということが科学的に証明されている。福井大学教授の友田明美氏が、アメリカのハーバード大学で18~25歳の男女約1500人を対象に行った研究によると、子供時代に体罰を経験した人はそうでない人と比べて、感情や思考をコントロールする脳の「前頭前野」の容積が萎縮していたという。

 子どもの心身を傷つける「躾」「教育」など、本当に必要だろうか。私たちは、暴力なしで子どもを教育する術を学ばなければいけない。

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