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「小室圭バッシング」は皇室主導だった 美智子さまや雅子さまへのバッシングと同じ「皇室タブー」の構造

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篠田博之氏

 秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚延期騒動は収束の兆しも見えぬまま長期化している。

 眞子さまと小室圭さんの婚約内定をNHKがスクープしたのは2017年5月のこと。あれから2年半近くの時が経ったが、週刊誌ではいまでもこのトラブルをめぐる記事が毎週のように掲載される状況が続いている。

 しかし、時計の針を元に戻せば、そもそも二人は国民に祝福されていた。NHKが婚約をスクープした直後には小室圭さんが「海の王子」と呼ばれて人気を集めていたのはまだ記憶に新しい。

 その雲行きが変わり始めたのは「週刊女性」(主婦と生活社)2017年12月26日号が、「眞子さま嫁ぎ先の“義母”が抱える400万円超“借金トラブル”!」という記事を載せてからだ。

 この記事をきっかけに、小室圭さんの家柄を批判的に報じる報道が相次ぐ。その論調はだんだんとエスカレートし、小室圭さんに対する個人攻撃のような報道や、留学先のプライベートを侵害するようなメディアスクラムまで行われた。

 『皇室タブー』(創出版)を出版した雑誌「創」編集長・篠田博之氏は、この結婚延期騒動をめぐるメディア状況を見ていくと、皇室報道に関してメディアが抱える根本的な問題点が浮かび上がると指摘する。

 そして、この件に関しては1993年に起きた美智子さまバッシングや、その後に起きた雅子さまバッシングとよく似た構図が繰り返されているという。メディアが抱える問題とはいかなるものなのか。話を聞いた。

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【篠田博之】
1951年、茨城県生まれ。1981年より月刊誌「創」(創出版)の編集長を務める。メディア批評を専門とし、著書に『増補 ドキュメント死刑囚』『生涯編集者』『「有害」コミック問題を考える』『差別表現を考える』などがある(共著含む)。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師も務める。

小室圭さんはそんなに悪い人?

──眞子さま・小室圭さん結婚延期騒動に関するメディアの動きに関してどのように感じていらっしゃいますか?

篠田博之(以下、篠田) 週刊誌を中心に、どのメディアも小室圭さんバッシング一色の論調になりましたけど、これだけ意見がひとつに偏ったのは、なかなか珍しいことだなと思いますね。

──確かに、小室圭さんのことを擁護するような報道はこの間ほとんど見ることはありませんでした。

篠田 週刊誌では「小室圭さん=悪」という前提ができあがってしまっている。
でも、よく考えてみると、小室圭さんってそんなに叩かれるような人ではないんですよね。裕福とはいいがたい家で育ちながらも、苦学してエリートの道を進んで頑張っているし、書きようによっては美談になるパターンですらある。あれだけ努力して実績をつくっているんだから。ある意味ではすごい成功物語ですよ。でも、週刊誌が毎週のようにああいう報道をするもんだから、世間ではよく知らずに小室さんのことをとんでもない人だと思い込んでいる人も多くいる。

──おっしゃる通り、書き方ひとつで180度逆の印象にもなる人ですよね、小室圭さんって。しかし、なぜこんな偏った報道になっているのでしょうか?

篠田 そもそも大前提として、いまはそこまででもないんだけど、週刊誌が皇室を扱う際は保守的なスタンスをとる傾向があります。
「週刊新潮」(新潮社)なんかもそうだけど、「皇室タブー」「菊のタブー」を気にしながら書くときに「自分たちは保守派で、伝統を愛するがゆえに苦言を呈するのだ」というエクスキューズをつけてやるわけね。
記事の中に書かれているスキャンダルは、それを取り上げること事態が右翼的な政治思想の人たちから問題視されるような内容であったとしても、あくまで「私たちは皇室を憂いているから取り上げているのだ」というスタンスをとることで逃げ道を担保するわけです。

──なるほど。

篠田 そうなると、自然に記事の立ち位置は保守派に寄っていく。
ただ、それとはまた別に、小室圭さんの問題に関しては、週刊誌のニーズと皇室内部の一部がもつ思惑が一致することで、どのメディアも論調が同じになってしまうということが起きた。

皇室側の情報に頼るしかないメディアが抱える問題

──この間、逆の論調でこの騒動を取り上げるメディアはなかったのですか?

篠田 「女性セブン」(小学館)が「眞子さまの結婚 抵抗勢力の蠢き」(2018年3月8日号掲載)という記事を掲載しています。宮内庁周辺にこの結婚を快く思わない勢力がおり、そうした皇室保守派の思惑が小室さんに関する否定的な情報をメディアにリークしていると示唆した記事でした。これはすごいなと思ったんだけど、こうした論調の記事も続くことはなく、また小室圭さん叩き一辺倒になってしまった。
「女性セブン」は独自の取材をして逆張りをすることで独自性を出そうとしたんだろうけど、この論調では情報が取れなくなったんでしょうね。

──論調が一色に染まる構図がだんだん見えてきました。

篠田 結局のところ皇室報道における情報源は皇室サイドによるものだけなので、そちらに寄り添う論調でないと情報が取れなくなると思うんですね。
皇室を扱う記事では、芸能人のスキャンダルみたいに自分たちで独自取材して切り込んでいくということは、いまのところはあり得ないから。どうしても取れる情報が限られ、それによって記事のトーンが規定されるということ。そもそも新聞・テレビは基本的に宮内庁が発表したものしか報じませんから。
これもある種の「皇室タブー」なんだと思うんです。
海外メディアの報じ方を見ていると、日本の週刊誌などのバッシング報道を批判しているものもあるようだし、比較して見ると、改めて日本の週刊誌は偏り過ぎているなと感じますね。
そして、こういう状況に皆があまり疑問をもたないというのも不思議です。

過去に起きたバッシングとの類似点

──『皇室タブー』を拝読していると、眞子さま・小室圭さん騒動と似た構図をもつ問題として、1993年の美智子さまバッシング、そしてその後に噴出した雅子さまバッシングとの類似が指摘されています。

篠田 よく似た構造ですね。美智子さまバッシングの場合「社会に向けて開かれた皇室」という新しい時代の皇室のあり方に皇室内の保守派から批判が出た。雅子さまバッシングに関しては、「公務よりも家族を優先している」という生き方への批判がバッシングの原因だった。
そして今回は「結婚は個人の自由」という近代的な価値観に対して抵抗する力が働いているわけです。

──皇室の近代化に批判的な考えをもつ保守派が情報を流し、メディアが丸乗りするかたちになっているわけですか?

篠田 近代化しようとする変化に反発する皇室内部によって情報がリークされていることは、別々の雑誌が同時期にまったく同じ話を載せたりすることからもわかります。
美智子さまバッシングのときは「元侍従が勲章を辞退した」「陛下がお車での移動中の信号調整を止めたがっており、警備上の問題などから周囲が困惑している」といった、まったく同じ証言が複数の雑誌に載っていました。
あと、夜中にインスタントラーメンを食べているなんていう話も当時出ていましたが、これも内部情報でしかあり得ない証言です。
先ほど述べた通り、もともとメディアは保守派に立つ傾向がありますが、それに加え、週刊誌というものはこういう具体的な情報があると喜んで載せてしまうものだから、ますますそちらに流されてしまう。

──メディアがいっせいに美智子さまバッシングに走った結果、美智子さまは倒れられ、そこで論調が180度変わるわけですが、そこまでのメディア状況は眞子さま・小室圭さん騒動と似た構図ですね。

篠田 それは、あれから25年以上経っても、日本のメディアがこういった種類の皇室タブーから自由になれていないということだと思うんです。

眞子さま・小室圭さん騒動の今後

──最後に話は眞子さま・小室圭さん騒動に戻りますが、この問題は今後どうなっていくと思われますか?

篠田 ここ最近、週刊誌を読んでいて感じるのは、この騒動に関する情報が明らかに薄くなっているんですよね。
ということは、皇室側もこの結婚延期騒動について色々と考える部分があるんでしょうね。バッシングが盛り上がっていたときは「このまま破談までもっていこう」みたいな意識だったのかもしれないけれど、その辺もいまでは少し違ってきているかもしれない。
この間のエスカレートした報道を見て、皇室側も情報が流出していくことによるマイナス面も認識しただろうから、結果的には一時期ほど匿名の宮内庁関係者があちこちの週刊誌に話しまくることもなくなった。また小室圭さんが行っている大学からも一時ほど学友たちのコメントが出なくなった。それぞれの思惑に応じてある種の情報規制が働いていると思います。
だから、いまは関係者の間で、どこに落としどころを見出すかというのを模索しているのかもしれません。

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篠田博之『皇室タブー』(創出版)

1980年代から眞子さま・小室圭さん結婚延期騒動に至るまでの「皇室タブー」「菊のタブー」をめぐる事件を振り返り、メディアにおける皇室報道はどのように変化していったかがまとめられている。

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