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東京オリンピックボランティアの多くが中高年 危惧される熱中症リスク

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Getty Imagesより

 敬老の日であった9月16日に『NHKニュース7』で放送されたスポーツボランティアをテーマにした特集は、やや強い違和感を覚えるものだった。

 この日の番組は「敬老の日 高齢者パワーに期待」と題し、スポーツ大会のボランティアに参加するシニア世代が増えていると伝えた。その背景に、来年に控えた東京オリンピック・パラリンピックを見越した動きがある。

 NPO法人日本スポーツボランティアネットワークによれば、昨年、ボランティアの講習会に訪れた人数は、東京オリンピックの開催が決まる前年の2012年に比べて3倍にまで跳ね上がったという。

 そして番組は、9月15日に東京で行われたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を裏で支えたシニア世代ボランティアスタッフの奮闘を伝えた。

 カメラが密着したのは、ボランティアチームのリーダーを務めた67歳の女性である。

 彼女は商社で働いていた現役時代の経験を活かし英語での対応も完璧。MGCの本番前に2回も現場の下見をしていた成果もあって、見回りの警察官ですらうまくこなせなかった通行人の道案内をスムーズにこなしていた。それだけではなく、ボランティアチームのメンバーひとりひとりに休憩や水分補給の確認をしてまわる気遣いまで見せていた。

 完璧な仕事ぶりを見せたリーダーの女性は、取材カメラに向かいこのように語る。

<自分がいざ60代後半になってもけっこう動けるなっていう感じで。経験値ですよね。気配りとか、そういうのは、若い人にないというわけではないんですけど、それプラスアルファで、その経験値は絶対に活かされると思います>

 この様子を見ると、年を重ねたからこその経験やスキル、その結果として生まれる「痒いところに手が届く」仕事ぶりには魅力があるように感じる。

 ただ、それで大丈夫なのだろうか。ボランティア頼みのオリンピック運営に、不安が募る。

東京五輪ボランティアの約半数が中高年

 番組を見た視聴者からは、<出先でNHKのニュースを見てしまったが、とても公共放送とは思えない。敬老の日の特集で、オリンピックで年寄りにボランティアさせる算段をあの手この手で長い時間かけてやってる>といった指摘がSNSに投稿されているが、<オリンピックで年寄りにボランティアさせる算段>どころの話ではなく、実際にオリンピックでボランティアに参加する約半数が中高年であることが、もうすでに決まっているのである。

 今月12日、競技運営などに携わるボランティアスタッフが固まったと報じられた。

 報道によれば、ここで採用されたスタッフ総勢8万人のうち、60代以上が1万1000人。そして、40~50歳代が約4割にのぼるという。

 つまり、ボランティアスタッフとして現場に立つ人の多くが、中高年なのである。

 ちなみに、応募段階では20歳代の若者も全体の36%いたが、面談への出席率が低く、結果的に採用は16%にとどまった。

 この結果を「これだから若い者は……」といった繰り言で片付けるわけにはいかない。ボランティアの応募要項が厳しすぎるからだ。

 公式ホームページには募集要項の記載があるが、明示されているのはこんな条件だ。

<休憩・待機時間を含み、1日8時間程度>
<大会期間中及び大会期間前後において、10日以上の活動を基本とします>

 つまり、就労者がボランティアに参加したかったら、最低でも10日間の休暇を取得しなければならないことを意味する。しかも、上記の10日に加えて、研修を受ける期間も必要だ。

 低賃金やブラック労働にあえぐ若者世代にそんな余裕のある人が多いとは思えず、また、会社側が長期の有給休暇取得を認めないケースもあり得る。

 やる気になって応募はしたものの色々と検討してみた結果、諦めざるを得なくなった人もいるのかもしれないし、そもそも面談のための時間をつくることが難しかった人もいるのかもしれない。

 結果、中高年がボランティアの中心になるのは、必然であるといえるだろう。

 しかしこの年齢層のスタッフでは熱中症などによる事故の危険性はさらに増すと考えられる。

 季節はだんだんと秋に近づき、メディアでもインターネット上でも、オリンピックにともなう「暑さ対策」に対する言及が減ってきた。

 次に暑さが襲ってくるときには、もうオリンピック本番である。準備に残された時間は少ない。

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