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アジア系差別「チンク」~人種差別コメディアンと大統領候補アンドリュー・ヤン

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https://twitter.com/bowenyang/status/1175964101912039424

 「Nワード」を使えばクビだが、「チンク」は大丈夫という暗黙のルールが、ついに打ち破られた。チンクとはアジア系を指す、特にひどい蔑称だ。本来は中国人を意味するが、東アジア系全般に向かって使われている。

 NBCの長寿コメディ・スケッチ番組『サタデーナイトライブ』(以下、SNL)は、毎年秋の新シーズン開始時に数人の出演コメディアンを入れ替える。番組で大きく人気が出た者は映画やドラマの主役を掴み、華々しく番組を去る。「大して面白くないよね」と評された者はひっそりと解雇される。代わりにフレッシュな新顔が投入されるのだ。

 今年も新シーズン開始の半月ほど前に3人のルーキーが発表された。ところがその中のひとり、シェーン・ギリスは発表からわずか4日後に解雇の騒ぎとなった。つまり番組に一度も出演することなく、去っていったのだ。理由は「チンク」発言だ。

蔑称「チンク」を使い、解雇されたコメディアンのシェーン・ギリス

 SNLがギリスを含む3人の名を発表すると、その日のうちにギリスの昨年のポッドキャスト番組の、ある回のトークがメディアで取り上げられた。ギリスの相方のコメディアンはニューヨークのチャイナタウンで出される中華料理について罵詈雑言を重ねていた。その際、ギリスはアジア系の英語の訛りを真似、さらに中国系を「ファッキン・チンク」と呼んでいた。

 ギリスは毒舌を売りとするコメディアンであり、かつ一部のポッドキャストは一般のラジオやテレビでタブーとされる言葉や話題を盛り込むことによってファンをつかんでいる。だが、ネットワーク局の全米オンエア番組『SNL』ではそうはいかない。ギリスはアンチ・ゲイ発言も掘り起こされ、NBCはギリスの解雇を決めたのだった。

チンクと呼ばれた大統領候補アンドリュー・ヤン

 チンク発言が浮上し、SNSが炎上した当日の夜、ギリスはツイッターにて謝罪を行った。しかし、「気に障った人には謝る」が、「コメディアンは(タブーの)境界線に挑む」者であることを強調する内容だった。

 この謝罪に対し、シットコム『キムさんのコンビニ』で人気を博し、マーヴェルの映画化作品史上初のアジア系ヒーロー『Shang-Chi』役に決まっているシム・リューが、厳しく意見した。いわく「コメディの殉教者ぶるな」「まともな謝罪をしろ」。

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 続いて、ギリスが昨年5月のポッドキャスト番組でアンドリュー・ヤンを「チンク」と呼んでいたことも報じられた。番組でギリスはまず大統領候補のバーニー・サンダースを「ジュー・チンク」(ユダヤ系チンク)と呼び、「実際のジュー・チンクも立候補してるよな、チャンとかいう奴。ヤンだっけ? チャン?」と続けた。

 サンダースはユダヤ系、ヤンは中国系(台湾系二世)だが、「ジュー・チンク」はギリスがユダヤ系、中国系、どちらも共に見下している以外に特に意味はなく、単に話の流れで出た質の悪いジョークだ。

 この日、ヤンは「ギリスのジョークに感心はしない」としながらも、ギリスに「話し合おうよ」とフレンドリーにツイートしている。その際、「SNLを解雇されるべきではない」「罰よりも許しを。我々は皆、人間だから」と書き添えている。

 ギリスがヤンに応答しないまま、NBCは2日後にギリスの『SNL』解雇を発表。ちなみにギリスと共に『SNL』新メンバーとして発表されたのはユダヤ系で女性のクロエ・ファインマンと、中国系でゲイのボウェン・ヤン。アジア系のキャストは1975年の番組開始以来、なんと 45年目にして初のことである。

『SNL』45年の歴史上、初のアジア系レギュラー出演者となったボウェン・ヤン

 『SNL』は多くの人気コメディアンを輩出しており、例えば2016年版『ゴーストバスターズ』に主演した4人のうち、ケイト・マッキノン、クリスティン・ウィグ、レスリー・ジョーンズの3人は『SNL』出身または現在も出演中だ。つまり、若手コメディアンにとって『SNL』登用は非常に大きな意味を持つ。ギリスもこの大きなチャンスをフイにしたくなく、うわべだけの謝罪ツイートをしたものと思われる。

 その甲斐もなく、結局クビを切られたギリスは2日後、すでに予定されていたニューヨーク市内のコメディ・クラブのステージに立ち、スタンダップ・コメディを行っている。当然『SNL』の件をネタにし、以下のジョークを飛ばしている。

「(チンク発言への)脅迫状を全部、アジア訛りの英語で読んでいるんだ」

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