「面白い恋人」で争った吉本興業とも手を組む石屋製菓の「白い恋人」販売戦略

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「Laugh & Sweets(ラフ&スイーツ) ゆきどけ」(石屋製菓公式ホームページより)

 9月20日、北海道の定番土産「白い恋人」の石屋製菓が、吉本興業とのコラボ商品を発売した。

 関西エリア初の直営店「ISHIYA SHINSAIBASHI(イシヤ 心斎橋)」のオープンに伴い、店舗限定で「Laugh & Sweets(ラフ&スイーツ) ゆきどけ」という目玉商品を用意した形だ。

 商品自体は、ビターな風味のキャラメルソースをフィナンシェの中に入れ、表面を雪のようにホワイトソースでコーティングをしたもの。今後も新商品の共同開発などを行っていく予定で、これがプロジェクトの第一弾となる。

 石屋製菓と吉本興業といえば、吉本興業が発売した「面白い恋人」に対し、2011年に石屋製菓が訴訟を起こしたことが思い出される。2013年に和解後、吉本興業からのコラボの提案を断った石屋製菓が、「ISHIYA」ブランドの知名度が低い関西に出店するにあたり、今度は石屋製菓側からアプローチしたという。

 「白い恋人」自体の知名度は高く、全国で98%という驚異的なデータがある一方、社名の「石屋製菓」の認知度は、全国で30%に満たないと、社長の石水創氏がビジネスコンサルタントの村上アシシ氏のインタビューで語っている

 コラボ第一弾の名称を「ゆきどけ」にすることで、北海道らしさと関西に必要な「Laugh(笑い)」の要素を詰め込み、注目度と認知度アップを狙う。

 北海道の有名なお菓子メーカーという安定したポジションに甘んじることなく、首都圏、関西圏に勝負に出た石屋製菓の経営戦略は、全国の土産物を扱うメーカーの参考になるのではないか。石屋製菓の戦略について、もう少し詳しく見ていこう。

「白い恋人」の高級ラインを販売する「ISHIYA」

 石屋製菓は2017年4月、東京・銀座の複合施設「GINZA SIX」内に、北海道外としては初出展となる直営店「ISHIYA GINZA(イシヤ 銀座)」をオープンした。2017年は、1947年の創業から70周年を数える、石屋製菓にとって記念すべき年であった。道外ブランドの「ISHIYA」では「白い恋人」は扱わず、その生産技術を生かした高級ラインを販売。つまりお土産の定番ポジションを狙う。

 たとえば、「Saqu LANGUE DE CHAT (サク ラング・ド・シャ)」という一番人気の商品は、まさに「白い恋人」の高級バージョンだ。北海道産の小麦粉、乳製品、てん菜糖を使用。6種類あるフレーバーは、キャラメル(以前はビター)、北海道チーズ、北海道ワイン、ジャンドゥーヤ、ハイミルク、抹茶ミルクといった具合で、ラング・ド・シャの色合いもそれぞれ異なり、並ぶと華やかだ。「ISHIYA GINZA(イシヤ 銀座)」では、初年度に約390万枚を売り上げた。

 道外2店舗目の直営店として、2019年4月には、「ISHIYA SHINJUKU(イシヤ 新宿)」がオープン。今回の「ISHIYA SHINSAIBASHI(イシヤ 心斎橋)」が、道外3店舗目の直営店となる。

 「白い恋人」をベースにした商品展開は他にもある。 「ISHIYA GINZA(イシヤ 銀座)」と北海道内の2店舗、そしてオンラインショップで、「恋するチョコレート」の販売を2018年にスタート。「白い恋人」の濃厚なチョコレートをベースに和テイストを取り入れ、可能な限り北海道産の素材を使った、板チョコレートとミルフィーユのブランドだ。フレーバーは、黒糖きなこ、北海道贅沢ミルクチョコレートと塩、ホワイトチョコレートと塩、とうきび、小豆と碾茶、さくらといった具合だ。

 2018年、石屋製菓は「インターナショナルチョコレートアワード」にエントリーし、世界大会で4品が銀賞、1品が銅賞を獲得した。こういった箔付けも行いながら、ブランド力の向上を目指している。

 一方、「白い恋人」を若者に訴求することも忘れていない。「白い恋人」のホワイトチョコレートを使ったソフトクリームの常設店を、2019年の春に渋谷センター街と竹下通りに立て続けに出店している。

 さらに9月には、「COREDO 室町テラス」に北海道外初の直営カフェ「ISHIYA NIHONBASHI(イシヤ 日本橋)」をオープン。「東京にいながらも、北海道を感じられるカフェ」として、北海道産の純米大吟醸酒をかける「パフェ 日本酒」などを扱うという。

 このように、石屋製菓はさまざまな形で首都圏に攻勢をかけている。

「白い恋人」はご当地みやげのまま

 石屋製菓の本州進出戦略のキモとなっているのは、主力商品の「白い恋人」自体を扱わないことだ。オンラインショップと催事を除けば、「白い恋人」は北海道に行かないと手に入れることができない。それによって、ご当地みやげの希少価値、手に入ったときのうれしさ、ありがたさをしっかり守っている。

 一方、「白い恋人」の高級ラインやアレンジ商品を東京や大阪で販売することは、会社の核となる最大の武器を利用した攻めである。「白い恋人」のブランド力を使って、売り上げを拡大させるのだ。

 お土産の定番である「白い恋人」の美味しさは消費者に広く知れ渡っており、その安心感に新商品は物珍しさを加えることができる。筆者は、「Saqu LANGUE DE CHAT (サク ラング・ド・シャ)」の期間限定商品、第4のチョコレートといわれる「ルビー」を食べたのだが、ワクワクしつつ、味がある程度予測できるので、不安なく食べることができた。

 消費者は、これらを手にすることで「白い恋人」を思い出す。それも大きなPR効果になり、スタンダードな味の「白い恋人」を改めて食べたくなる仕組みだ。

石屋製菓の今後の課題

 出店が続き順調に見える石屋製菓だが、少し気になるのは、「ISHIYA」ブランド主力商品「Saqu LANGUE DE CHAT (サク ラング・ド・シャ)」の売り上げについてだ。2019年9月のプレスリリースでいまだに「東京銀座での発売から1年間で約390万枚を売り上げ」という表現が使われている点である。

 東京銀座は2017年4月にオープンしているので、2年5カ月が経過している。集計に時間がかかっている可能性はあるものの、2年目以降は売り上げが落ちているのではないか。そうでなかったら発売以来の累計売り上げをアピールするのではないかと訝ってしまう。

 「Saqu LANGUE DE CHAT (サク ラング・ド・シャ)」については、テレビCMを打つことになっていて、9月から関西エリアで、10月からは関東エリアで放映される。「恋人以上と言われたい。」というコピーで、「白い恋人」より上質であることを訴求していくという。関東圏にいる筆者は、石屋製菓のCMを今まで目にしたことはないが、2013年に関東圏をはじめとしたエリアで流したことがあったようだ。

  もうひとつ、石屋製菓の露出といえば、サッカーがある。北海道コンサドーレ札幌のユニフォームに「白い恋人」の文字を見た人もいるだろう。この部分は、今年初めに「ISHIYA」に変更されている。2018年に北海道命名150周年を記念する限定ユニフォームを作ったときに、胸のロゴを「ISHIYA」にしたところ、非常に好評だったのだそうだ。サポーターの、ユニフォームに「白い恋人」とあると普段着に恥ずかしいという意見もあった。

 そんな経緯と、アルファベット表記であれば世界中の人が読むことができるというグローバルな認知度アップ、そして社名の認知度アップのため「ISHIYA」に変更したと社長が話している

 石屋製菓の「ISHIYA」ブランド力アップについては、まだ始まったばかり。今は投資の時期なのだろう。現社長は創業者の孫にあたる人物で、1982年生まれの37歳だ。従業員も、10代・20代が39%、30代が29%とかなり若い。そんな若さも、変化を恐れない姿勢につながっていそうだ。

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