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旭日旗の東京オリンピック持ち込み容認は何を意味するか?

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Getty Imagesより

 旭日旗をめぐる問題が紛糾している。

 現在行われているラグビーワールドカップにおいては、会場内で旭日旗の模様をした鉢巻きをしている観客がいることや、旭日旗のデザインを用いた映像や案内板が製作されているとして、韓国の誠信女子大学教養学部であるソ・ギョンドク教授がワールドカップ主催側に抗議する構えを見せているという。

 開催を来年に控える東京オリンピック・パラリンピックにおいても問題が噴出している。2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が旭日旗の持ち込みを認める方針を示し、政府もそれにお墨付きを与えたのだ。

 9月3日、組織委員会は<旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならないと考えており、持ち込み禁止品とすることは想定していない>との方針を打ち出した。

 その決定に安倍政権の閣僚たちも続々と続く。5日の会見では菅義偉官房長官が組織委員会と同様の回答を行っている。

 12日には、橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当大臣も会見のなかで<旭日旗が政治的な宣伝になるかという部分に関しては、私自身は決してそういうものではないと認識している>と語り、旭日旗の会場持ち込みを容認する方針を示した。

サッカーの国際試合で旭日旗の持ち込みは禁止

 旭日旗は帝国陸軍の軍旗、帝国海軍の軍艦旗として使用されたものであり、中国や韓国などからは大日本帝国や軍国主義の象徴であるとして認識されていることは紛れもない事実だ。

 それに対して、安倍政権や、政権を支持する保守層は旭日旗の持ち込みに対して「政治的な宣伝にはならない」と強弁している。

 しかしそもそも、「日本が旭日旗をどのように捉えているか」ということは問題ではない。この問題は、「中国や韓国がどう捉えるか」がすべてだからだ。

 旭日旗をめぐっては、2017年4月、アジアチャンピオンズリーグにおける水原三星と川崎フロンターレの試合において騒動があった。この試合で川崎サポーターが旭日旗を出したのだ。警備によってすぐに没収されたようだが、水原サポーターの怒りはおさまらず、スタジアムは緊迫した状況になった。

 結果、アジア・サッカー連盟は、川崎フロンターレに対して1年間の執行猶予付きで、アジア・サッカー連盟が主催する大会のホーム1試合を無観客で開催する処分と、罰金1万5000ドルを課した。

 『サッカーと愛国』(イースト・プレス)などの著書をもつライターの清義明氏はウェブサイト「フットボールチャンネル」のなかで、FIFAの規約のひとつ「スタジアム安全警備規定」第60条二項では「挑発・攻撃的行為の禁止」として<試合主催者は、地元の警察当局と連携しながら、スタジアムやその近辺で、サポーターが挑発や攻撃的行為を行わないようにしなければならない。例えば、選手や審判、相手チームのサポーターが許容できないレベルの挑発や攻撃的なヤジや差別行為、さらには攻撃的、挑発的な内容を含んだ横断幕や旗などもこれに含まれる>といった文言があると指摘。

 ゆえに、<旭日旗は「国際的に認められた旗」で「軍事的なシンボルではない」ので問題はないはずだという主張もみられるが、この意見が妥当かどうかは関係なく、それ以前に相手に対する挑発的行為ということになる>と、この問題を解説している。

 繰り返しになるが、日本が旭日旗をどう捉えているか、旭日旗を掲げる人間がどのような思想かにかかわらず、中韓に対して旭日旗は“攻撃的、挑発的な内容を含んだ横断幕や旗”になるのだ。

 これはサッカーだけの話ではない。日本側の主張はどうあれ、国際社会が旭日旗を軍国主義のシンボルとして認識しているのであれば、それを競技場で掲げる行為は政治的な意味を持たざるを得ない。

オリンピックは「ナショナリズム」ではなく「平和」の祭典であったはず

 いま改めて考えたいのは、「オリンピック」というものは「平和の祭典」ではなかったか?ということだ。

 「オリンピック憲章」のなかにある「オリンピズムの根本原則」では、このように書かれている。

<オリンピズムの目標は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある>

 オリンピックはスポーツを通じて「平和」を築くために行われてきた。

 オリンピックの舞台で、過去の侵略戦争を象徴するものであるとして嫌悪感を示す国のある「旗」を掲揚することが、その目的に反するものであることは言うまでもない。

 ただし、その嫌悪感はもちろん日本政府も認識している。事実、2008年の北京オリンピックでは日本大使館が会場に旭日旗を持ち込まないよう呼びかけていた。

 一転して2020年東京オリンピックでは、菅官房長官や橋本オリンピック担当大臣が旭日旗の持ち込みを認めた。これは国際平和に寄与する振る舞いではなく、「ナショナリズム高揚」にスポーツを利用することに他ならない。<スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てること>という、オリンピックを開催する目的とはほど遠いのではないか。

 「オリンピズムの根本原則」を理解できない国にオリンピックを開く資格はないだろう。これ以上オリンピックを「愛国」のために利用するのであれば、即刻、返上してほしい。

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