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電車や飛行機で泣く赤ちゃんに怒る大人たちの存在

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「Getty Images」より

 日本航空(JAL)が、ウェブサイトでの座席予約の際、3歳未満(生後8日以上)の子どもを連れた乗客の席に「幼児マーク」を表示するサービスを導入した。

 JALの公式サイト内「赤ちゃん連れのお客さま」ページでは、「JAL Webサイトの座席指定画面上では幼児マークを表示し、幼児連れであることをほかのお客さまへもご案内しています」と説明(ツアーや特典航空券を利用した場合や、JAL Webサイト外で座席を指定した場合は表示なし)している。

 狭くて乗り降りのできない機内での長時間のフライト中に、赤ちゃんや子どもの泣き声にストレスを感じる客もいる。赤ちゃん、子どもの泣き声や騒音が不要なトラブルを招くことを防ぐ目的があると見られる。

 SNS上では「これは良いサービス」「お互いに気持ち良くフライトするためには良いアイデアだと思う」「すべての航空会社に義務化してほしい」と賞賛の声が上がっている。

 しかし一方では、赤ちゃんの泣き声がトラブルに発展すること自体がおかしいとして、「これ、どうかなぁ。逆に忍耐力のない大人がどこに座ってるか教えて欲しいわ」「誰もがかつては赤ちゃんだったから寛容さは大切」と社会の不寛容さを嘆く意見もある。

 たしかに裏返せば、JALの「幼児マーク」導入は、それだけ乳幼児や子どもをめぐった機内トラブルが多発していると解釈することもできる。

 実際、幼い子どもがグズったことへのクレームを書き連ねた著名人もいる。漫画家のさかもと未明は2012年に『Voice』12月号(PHP出版)に寄稿した記事で飛行機内でのトラブルについて書いたが、これがwebニュースとして配信されると物議を醸した。

 さかもと未明は愛媛県から帰る機内で、<赤ちゃんが泣き叫び通しだったのにブチ切れてしまった><だって、客室乗務員さんが母親と一緒にあやしても泣きやむ気配はないし、逃げ込む場所もないんだもん>と綴った。

 泣き続ける声に耐えきれなくなり、<『もうやだ、降りる、飛び降りる!』と、着陸準備中にシートベルトを外して出口に向かって走った>という。最終的には、<お母さん、初めての飛行機なら仕方がないけれど、あなたのお子さんは、もう少し大きくなるまで、飛行機に乗せてはいけません。赤ちゃんだから何でも許されるというわけではないと思います!>と母親に告げたそうだ。

 この記事は炎上したが、一方で「気持ちはわかる」「騒音に過敏に反応してものすごく辛くなってしまう人もいる」と共感を寄せるネットユーザーもいた。実際にさかもとは聴覚過敏を抱えていたという。

 他方で、タレントの小倉優子は飛行機内で親切を受けたことをブログで明かしている。2013年、生後6カ月の長男を連れてハワイで休暇を過ごし、その帰国便で起こったエピソードだ。

 日本に帰国するおよそ9時間のフライト中、長男がなかなか寝つかずにぐずっていたため、小倉はトイレ近くのわずかなスペースに立ちっぱなしであやしていたという。すると、その姿を見かねた女性客が「しばらく抱っこしているから、ゆっくり機内食を食べて来て」と申し出てくれた。

 はじめは遠慮していた小倉だが、女性の「良かったら抱っこさせて」という言葉に甘えて、女性やその家族に長男の面倒を見てもらったそうだ。

赤ちゃんを連れた親に「迷惑」

 飛行機だけに限らず、身近な電車やバスなどを含む公共交通機関や商業施設における赤ちゃんや子ども連れのトラブルについては、しばしば感情的な議論になり決着がつかない。

 お笑いコンビNON STYLEの石田明は2018年7月にブログで、前年に双子を出産した妻が買い物中に遭遇したトラブルを綴ったことがある。石田の妻が双子用のベビーカーを押してレジに並んでいたところ、後ろの年配女性から「もうちょっと前行けないの?」と注意を受けたという。石田の妻が「すみません、ベビーカーなんで」と答えたところ、舌打ちをされたそうだ。

 さらに石田の妻が会計を済ませた後、道が狭くてベビーカーでは出られず通路を戻ろうとして「すみません、通してもらっていいですか」とその年配女性に頼んだところ、酷い暴言を吐かれたという。

「いつもこんな事をしているの? 人の迷惑って考えた事ある? そうやって双子で迷惑かける事分かってるんだからもう少し頭使いなさいよ! 買い物する時すら預ける人いないの? 頼るところもないのに産むからこうなるのよ」

 この件について石田は、「迷惑かけているのはわかってますよ」としたうえで、「でも、そんなに言われなきゃいけないことですか? 預けれなければ買い物もしたらダメ? 産んでもダメってこと? いくらなんでもひどくないですか?」と訴え、「優しい人でありたい」「すみません。あまりにも悲しい気持ちになったもので…」と綴った。

 この投稿には狭量な世の中を嘆く声が寄せられたほか、「奥様の心の傷が癒えますように」「負けないでください」などと励ましのコメントが多くついていた。

 社会問題化している子どもの泣き声やベビーカートラブルだが、電車の中や商業施設で泣く子どもの声を“迷惑”、ベビーカーの存在を“邪魔”であるとして、あからさまな敵意をむき出しにする人は少なからずいる。

 とりわけネットでは、「赤ちゃん連れは外に出てくるな」と言わんばかりの冷ややかな意見がのさばっているが、それらの意見は子どもの他愛ない“迷惑”よりも、よほど恐ろしいことではないのだろうか。

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