
「Getty Images」より
多様性(ダイバーシティ)が重視される昨今、家族のあり方、夫婦のあり方、親との関係は、どのように変化しているのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所が9月13日に発表した「第6回全国家庭動向調査」では、変化を続ける家族の姿と意外な夫婦関係が浮き彫りになった。
「全国家庭動向調査」は、出産・子育ての現状、家族関係の実態を明らかにし、家庭機能の変化の動向や要因を明らかにするための調査で、1993年から5年ごとに実施している。 調査対象は配偶者のいる女性(妻)で、今回の回答は6142人だった。
今回初めて調査項目となった、身体的接触を含む「夫婦間のスキンシップ」と「夫婦間の性交渉」では、夫婦間のスキンシップが「ある」41.1%、「ない」58.9%という結果となり、夫婦間の性交渉も「ある」24.3% 、「ない」75.7%と、「ない」が「ある」を大きく上回った。
夫婦間のスキンシップや性交渉は年齢にも左右されるため、年齢階層で見てみると、「夫婦間のスキンシップ」では「40~49歳」以降、「夫婦間の性交渉」では「30~39歳」以降で「ない」の割合が「ある」を上回っている。
ところが意外にも、「夫婦間のスキンシップ」では、全体で83.3%が「満足」と回答しており、「夫婦間の性交渉」でも全体で82.6%が「満足」と回答しており、それぞれ「不満」を大きく上回っている。
働きに出るとき「子どもを親に預ける」は34%
前回調査(2013年)と比べて際立って大きな変化が見られたのは、「親との関係」だ。「夫婦の両親(4人の親)のうち誰かと同居」している割合は10 年前の26.7%、5年前の31.5%に比べて大きく低下し、 19.8%となった。
親子関係の変化は、「妻が働きに出るときの子どもの世話」を誰に頼むかという回答にも表れている。10年前では40.8%、5年前では42.2%が「親」と回答していたのが、33.9%にまで低下。「公共の機関など」が10年前の 30.3%、5年前の33.8%から 42.0%へ増加しており、初めて「親」を逆転して最も重要なサポート源となった。親との同居の減少、子育てへの親の関与の減少という結果は、親子関係の希薄化が進んでいる現れの一端かも知れない。
この傾向は、老いた親との関係でより如実に現れる。例えば、「年をとった親は子ども夫婦と一緒に暮らすべきだ」との考え方は、10年前は50.8%、5年前は44.6%だったが、ついに40%を割り込み、34.3%まで低下している。また、親の介護についても、「年老いた親の介護は家族が担うべきだ」との考え方は、10年前は63.3%、5年前は56.7%だったが、半数を割り込み45.2%まで低下している。
半面、親が大きな役割を担っているものもある。例えば、「出産や育児で困ったときの相談では、「親」が48.9%と約半数を占め、「夫」の35.4%を大きく上回っている。「夫婦間で問題があるときの相談」でも「親」が47.3%と約半数となり、当事者の「夫」はわずかに3.8%だ。「出産や育児は、経験者である親に聞くことも多い」(20歳代後半の主婦)、「夫婦間の問題では、お互いが険悪な状況になっているため、親に話を聞いてもらうことが多い」(30歳代前半の兼業主婦)といったことのようだ。
親に対する期待がもっとも顕著に表れているのは経済的な支援で、「経済的に困った時に頼る人」では「親」が64.6%ともっとも高く、次いで「夫」の23.6%であった。この割合は10年前とほとんど変化がなく、経済的な支援は、“親頼み”という姿が浮き彫りになっている。
妻の家事負担割合は10年前より15分減少
では、夫婦間の関係変化はどうか。家事については、妻の1日の平均家事時間は、平日は263分(4.38時間)、 休日は284分(4.73時間)で、過去2 回の調査に比べると平日と休日ともに約15分減少している。
その分、夫の1日の平均家事時間は、平日は10年前の31分、5年前の31分から37分へと、休日は10年前の62分、5年前の59分から66分と微増しているが、これは夫が家事する割合が大きく増えたと言えるほどの変化ではないだろう。
実際、家事の総量を100%とした時の分担割合も妻は10年前の85.5%、5年前の85.1%から83.2%に減少し、夫は10年前の14.5%、5年前の14.9%から16.8%に増加しているものの、依然として妻が8割以上の家事をこなしている状況だ。
育児は妻の負担が初めて8割を下回る
育児の面では、1日の平均育児時間は妻が平日532分(8.87時間)、休日680分(11.3時間)となっており、10年前と比べて平日で77分、休日で108分増加、5年前と比べ平日で40分、休日で11分減少している。
これに対して、夫は平日86 分、休日322分(5.36時間)で、10年前と比べて平日で11分、休日で49分増加、5年前と比べ平日で3分減少、休日で13分増加しているが、大きな変化は見られない。
ただし、育児の総量を100%とした時の分担割合については、妻が10年前の80.5%、5年前の80.1%から79.6%に減少し、夫は10年前の19.5%、5年前の19.9%から20.4%に増加、初めて妻の割合が80%を下回った。
“イクメン”が社会的な認知を得て、男性の育児休暇が本格的に取得されるようになれば、育児や家事の夫婦間の負担割合は大きく変化をする可能性を秘めていそうだ。
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