人工雪に気温下げる効果ナシ「清涼感」だけ
東京都や大会組織委員会(組織委)も暑さ対策には積極的に着手している。しかし、その内容は首を傾げたくなるものばかりだ。
9月に都内で開催されたマラソン大会「マラソングランドチャンピオンシップ」では、選手が走りながら体を冷やせるよう、ポリ袋に砕いた氷を詰めた「かち割り氷」をコースの給水所に用意した。
一部選手がかち割り氷を手にする姿を見て、組織委の担当者は「かなり有効という感触はある」と手応えを口にしていたそうだが、体内の熱を瞬間的には逃がせるとしても、氷をずっと持ちながら選手が走ることは難しく、暑さ対策と言って良いのか疑問だ。
また、9月13日にはカヌー・ボート競技の開催地となる東京臨海部の「海の森水上競技場」で、約300キロの氷を使用して約5分間、降雪機で人工雪を降らせる実験を行った。人工雪が気温低下につながるかを確認するために行われた同実験だが、気温の変化は一切なかった。
しかし効果ゼロにもかかわらず、組織委の岡村貴志メイン・オペレーション・センター統括部長は「観客に清涼感を与え、一つのイベントとしても楽しめる」とこれまた手応えを掴んだという趣旨のポジティブな見解を示している。
人工雪が暑さ対策にはならないと判明した以上、別の対策が急務のはずだが……。まさか清涼感さえあれば気持ちの問題で暑さを感じにくくなる、などとは言うまい。しかし組織委には本当に「気持ちの問題」で押し通しかねない不気味さがある。
極めつきは、手荷物検査場に柵の代わりにアサガオの鉢を並べるというものだ。
もちろんアサガオには気温や体温を下げる効果はないが、組織委の中村英正ゲームズ・デリバリー・オフィサーは「鉄柵などで仕切りをすることも考えたが、視覚的にも涼しくということから、今回暑さ対策の一環として導入した」と狙いを説明。視覚的な暑さ対策に何の意味があるのかはとても理解が及ばない。
やはり暑さは「気持ち」「根性」で乗り切ろう、などと押し切るのだろうか。これでは他国のトップアスリートにボイコットされても文句を言えないかもしれない。
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