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JR新宿駅人身事故で「スマホでの撮影はご遠慮ください」事件現場を撮影するモラル

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【完成】JR新宿駅人身事故で「スマホでの撮影はご遠慮ください」 グロテスクを求め事件をエンタメ消費する人々の画像1

「Getty Images」より

 10月2日午後7時過ぎ、JR新宿駅で発生した人身事故。帰宅ラッシュで混雑する駅構内で起きた悲惨な事故だが、事故現場をスマートフォンで撮影する野次馬が複数おり、「お客さまのモラルに問います」という“異例”のアナウンスが現場に響いたという。

 事故現場は救出作業のためブルーシートで覆われたが、その中にスマホを差し込んで撮影に及ぼうとした利用者が複数いたそうだ。見かねた駅員が「お客さまのモラルに問います。スマホでの撮影はご遠慮ください」とアナウンス放送。ブルーシートの内側を撮った人々は、その写真をどうするつもりなのだろうか。

 人身事故現場における人々の撮影行為を制止するホーム上のアナウンスは、昨年にも報告されていた。

 昨年9月10日の朝7時、JR八王子駅の中央線快速のホームで人身事故が起こり、上下線ともに1時間近く運転を見合わせた。2018年9月11日付「J-CASTニュース」の記事が伝えたところによると、この事件発生時にも駅構内で「事故現場の撮影はやめてください」と注意喚起のアナウンスが複数回流れたという。同記事には現場に居合わせた男性の証言が寄せられ、SNS上ではアナウンス内容に驚く声が続出した。

10年前の「秋葉原通り魔事件」でも問題に

 事故現場を撮影する“異常行為”が相次いでいることについて、一部ネットでは「スマホが普及したからだ」「昔に比べて日本人のモラルが低下している」などと批判する声もあるが、こうした現象は少なくとも10年前から報告されており、人々のモラルが問題視されてきた。

 2008年6月8日、東京・秋葉原で発生した「秋葉原通り魔事件」。凶行に及んだ加藤智大(当時25歳)はトラックで歩行者天国に突入し、ダガーナイフで通行人を次々と襲った。7人が死亡、10人が負傷(重軽傷)している。

 この時も、事件発生直後の様子、救急隊が被害者に駆け寄り応急処置をする様子を携帯電話やデジカメで撮影する野次馬が続出していた。

 当時の「週刊新潮」(新潮社)で、犠牲者の友人学生が直後の様子を証言している。目の前でトラックに轢かれて倒れ、ひと目に重傷と分かる状態の友人には、複数の携帯電話のカメラやデジカメのレンズがたちまち向けられたという。学生は野次馬に対して「不謹慎だから止めて下さい!」と訴えたが、周囲は撮影を止めてはくれなかったそうだ。

 同じく当時の「女性セブン」(小学館)によれば、現場には「写真なんか撮るな!」と怒鳴る警察官もいたそうだが、群衆は無視。野次馬のなかにはマスコミの姿もあった。目撃者によって撮影された写真や動画は友人間で共有されたほか、ネット掲示板などに投稿されていたという。

事件現場写真を「エモい」と拡散するオーディエンス

 一部の人々の暴走による事件現場の異様な光景と、その後のネット投稿・拡散までの流れは、今なお縮小するどころか拡大しているといえるかもしれない。今年5月、神奈川県の登戸駅付近で発生し、学園法人カリタス学園のカリタス小学校に通う児童やその保護者16人が襲われて2名がなくなった事件。その凄惨な殺傷事件の際も、現場の混乱をカメラに収めようとする一般の人々が複数存在していた。

 ほかにも、5月23日、東京都新宿区のマンションでホストクラブにつとめる知人男性を刃物で刺し重傷を負わせた殺人未遂の現行犯で女が逮捕された事件。女は知人男性に好意を抱いており、「相手を殺して自分も死のうと思った」などと供述していた。この時は、事件発生直後とみられる女が血まみれで横たわる男性の傍でタバコをふかす姿が収められた写真がネットに流出。現場に居合わせた何者かが撮った写真と見られるが、ネットでは「なんかドラマティック」「エモい」などとコメントがついて拡散された。

 さらに5月25日、愛知県名古屋市・栄で元暴力団組員の男が刃物とバールで男性を襲撃、殺害する事件が起こったが、この時も恐ろしい犯行の一部始終が収められた動画がネットに流出、拡散。SNSなどで話題になった。

 事件や事故現場の写真や動画を撮影してネットに投下する行為それ自体も問題だが、それに食いついて騒ぎ立てるオーディエンスがいるからこそ後を絶たないともいえる。事件や事故は非日常のエンターテインメントではなく、現実に起こり人命に関わるものということを忘れてはならない。

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