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モテライナーとモテマスカラ〜「モテ」が「Mote」になりますように

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「Getty Images」より

 “女は男に選ばれるために化粧をする”。あまりにも手垢がつき、カビが生えまくったようなこのフレーズですが、未だ大真面目にそう主張する人も多い、なかなか困った言葉です。

 私はといえば、メイクは「したい人が」「したいように」「したい目的のために」すればいいと思っています。日常的にメイクをする一個人としては、主に自分の気分を上げるためにメイクをしています。既に結婚しているんだから化粧なんてする必要はないだろうとか、常に化粧をして美しくしていないと夫に飽きて捨てられるぞとか、そういった雑音は全くのお門違いです。

 ちなみに夫は、私がものすごく作りこんだメイクをしていようが、あるいは寝起きそのままの顔でいようが、「今日は化粧をしているなぁ」「今日は素顔だなぁ」以外の感想はないそうです(この原稿を書くために、夫に「私が化粧してる日としてない日、それぞれなんか思うことある?」と聞いたら、「僕だってあなたが化粧をしてるかしてないかくらいは判断できるよ」と胸を張っていました)。

 原稿を書くために家に引きこもっている日でも、ふとした瞬間に鏡に映る自分の顔があんまり澱んでいると気分も萎えてしまうので、肌からしっかり作りこむようなメイクはせずともアイライナーでさっとアイラインだけ引いてみたりします。まつげの生え際に線が足されただけなのに、目元がはっきりとして、気分まで溌剌としてくるのでメイクの力は侮れません。

 さて、ここに私の目元を際立たせてくれた一本のアイライナーがあります。メーカーは「UZU(ウズ)」、商品名は「EYE OPENING LINER」。ドラッグストアやバラエティショップで入手できて、低価格なのに非常に使いやすく、今まで何本もリピートして使っています。名前が変わってからはこれで二本目。そう、このアイライナー、以前は「フローフシ」というメーカーから、「モテライナー」という名前で販売されていました。

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モテライナーリキッドBk(ブラック)(画像は公式サイトより)

モテライナーの変貌に震えた

 フローフシは2011年に設立されたコスメブランドで、「モテライナー」などのヒット商品を抱えながらも2018年にブランドを終了。ブランド設立時からの展望であった海外進出のため、ブランド名をより記号的で覚えやすい「UZU」へ変更し、再スタートを切りました。

 ブランド名を「UZU」に変更してから最初に発売されたお披露目としての商品が、名前を「EYE OPENING LINER」に変更したかつての「モテライナー」であり、そしてそのコンセプトが「人種、性別、年齢、すべてを超えて。アイライナーをアイライナー以上のものに」であると知ったとき、私は震えました。

 筆ペンタイプで線を描きやすく、使い勝手の良さから何度もリピート購入していた「モテライナー」ですが、私はどうしても好きになれない点がありました。それは「モテライナー」という名前です。

 “モテ”という言葉は、多くの場合“恋愛的に欲望される”という意味で使われます。最初に書いたように、メイクには“女性が男性から恋愛的に欲望され、選ばれるためにするもの”という強固な(しかし現実には全く即していない)イメージがあります。

 最近ようやく女性が「それは違う」と声をあげたり、タレントのりゅうちぇるが「男の子でもメイクを楽しんでいい」と発信したりして、少しずつその強固なイメージを払拭し始めたところなのに、商品そのものに「モテ」という言葉が含まれていることによって、その商品を買うたびにまるで「私、モテたくてこのアイライナー使ってるんですよ」と無理やり宣言させられているような、敗北感すら覚えるような、なんとも嫌な気分になるのでした。

 その「モテライナー」が名前を変える、しかもいままで当たり前のこととされていた「メイクをするのは(主に若い)女性」という固定観念さえ打ち壊してくれるようなコンセプトとともに。

 新しく付けられた「EYE OPENING LINER」という名前に、「いままでモテるためにメイクするって思い込まされてきたよね。でも目を開けて、新しい世界を見よう」というメッセージすら感じるのは、私の考えすぎでしょうか。それほど私にとって、広い世代の人がアクセスしやすいドラッグストアやバラエティショップで手に入る低価格帯のコスメブランドがこういった姿勢を示してくれるのは、本当に喜ばしいことでした。

 この一件以来、私はフローフシ改めUZUのファンになり、何か新しい情報が更新されていないかとUZUのサイトに頻繁にアクセスするようになりました。

女性に「モテよう」と押し付けるものが多すぎる

 今年の7月のことです。

 UZUに新しい動きがないかと期待してサイトにアクセスした私の目に飛び込んできたのは「KEEP OR DROP」という文字でした。新たに打ち出されたそのキャンペーンは、UZU(かつてのフローフシ)を有名にした「モテマスカラ」という商品の名前について、ユーザーに投票してもらうというものでした。

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モテマスカラ IMPACT 1 DRAMATIC(画像は公式サイトより)

 「モテマスカラ」という名前を使い続ける(KEEP)のか、それとも「モテライナー」のように新たに名前を変更する(DROP)のか。

 「モテマスカラ」はブランドの看板商品でしたから、ブランド側としても特に思い入れや商品名変更への不安などがあったのでしょう。私は「KEEP OR DROP」のページに書かれたメッセージを読み、その上で「モテマスカラ」の名前を「DROP」することを選び、投票しました。「EYE OPENING LINER」の登場で、「モテ」の名前を冠するコスメを買うことがさらに苦痛になっていたし、「モテライナー」を「EYE OPENING LINER」へと生まれ変わらせたUZUに大きな期待をしていたからです。

 42日間のキャンペーン期間を経て、投票に参加した10万人による結果が出たのは9月に入ってすぐのことでした。結果は「KEEP」73%、「DROP」27%で、「モテマスカラ」は「モテマスカラ」の名前のまま、今年の11月にUZUからリリースされることになりました。

 この結果を受けて、私は心底がっかりしながらもどこかで「やっぱり」とも思っていました。

 もちろん、「自分はモテるためにメイクをするので、コスメの名前に“モテ”が入っていてほしい」「“モテ”という言葉にポジティブなイメージしかない」という人もいるでしょう。

 ただ、現代日本の女性の傍には「モテ」を強制するものが多すぎて、それが当たり前すぎて、コスメの名前に「モテ」が冠されていることに違和感を覚えたり、「モテ」を押し付けられることそのものがおかしいと気づかない人も、多くいたのではないかと思いました。

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