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神戸の教師4人による暴行事件を「教師いじめ」「嫌がらせ」と報じていいのか

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「Getty Images」より

 兵庫県神戸市内の市立東須磨小学校で去年から今年にかけ、20代の男性教師が同僚の先輩教師4人から暴行や暴言を受けていたことが明らかになった。加害教師は30代の男性教諭3人と40代の女性教諭1人だ。

 加害教師らは男性教師を“ポンコツ”を意味する「ポンちゃん」と呼び、羽交い締めにして激辛カレーを無理やり食べさせたり、LINEで別の女性教師に卑わいなメッセージを送ることを強要したりなどした。その他にも、激辛ラーメンの汁を目や唇に塗りつける、コピー用紙の芯で尻を叩く、「ボケ」「カス」などの暴言を浴びせるなど、暴虐の限りを尽くしていたことが明らかになっている。

 そのうえ、加害側の教師たちは激辛カレーを食べさせる様子を動画に撮影し、生徒らに対して「面白かった」などと発言していたという。とても教師とは思えない悪質な所業の全貌が徐々に明らかになってきた。

 問題が発覚したのは、これらの暴行や暴言について、9月上旬に被害者の家族から市教育委員会に連絡が入り、調査に乗り出したため。被害者の男性教師は精神的苦痛のために9月から休んでおり、学校側は加害者教師の4人に対して有給休暇を取得させているという。

 本来は子供たちの暴行や暴言を指導する立場である加害者教師たちの愚行に、「恥ずかしくないのか」と批判の声が相次いでいる。加害者教員が他の学校に移り再び教鞭を振るうことに否定的な意見も見られ、氏名を公表するよう求める声も少なくない。報道によれば、加害教師のひとりはベテランで、保護者からの信頼も厚かったようだ。

 また、市教育委員会が10月4日に開いた会見では、他にも3人の教師が加害者教師4人から暴言やセクハラなどを受けていたことが新たにわかり、今後の対応が注目される。

「いじめ」「嫌がらせ」と報じていいのか

 この加害者教師4人の蛮行を多くのメディアで発信されたが、その報じ方には違和感を覚えるものだった。以下は事件を取り上げたネットニュースの見出しだ。

「目にカレー、小学校教員が同僚から嫌がらせ」共同通信社

「教員4人が同僚にいじめ 『羽交い締めされ激辛カレー』」朝日新聞

「サイテー先生4人組、同僚いじめ尽くし 神戸・須磨の小学校で“子供以下レベル”のあの手この手」サンケイスポーツ

 テレビ報道でも、「嫌がらせ」「いじめ」という言葉を使用するものが散見された。

 しかし暴言を浴びせたり激辛カレーを無理矢理食べさせたりといった行為は、「侮辱罪」や「傷害罪」が適応される可能性も高く、犯罪行為といえるのではないか。学校内・職場内で起きた事件だからといって、明らかな犯罪行為を「嫌がらせ」「いじめ」といった軽い言葉で報じることは、問題の矮小化につながらないだろうか。

 こういったケースは枚挙に暇がない。2018年に芸能プロダクションの社長が忘年会の際に従業員の頭をしゃぶしゃぶの鍋に頭を突っ込ませた行為が話題になったが、各メディアはこの明らかな傷害行為を「パワハラ」という言葉を使って報じていた。

 2018年に放送された『スッキリ』(日本テレビ系)で、当時小学5年生だった女子生徒の身体を男性教師に触られた事件を「スクールセクハラ」という言葉を使い取り上げた際も、ネット上では「言葉が軽すぎる」と批判の声が寄せられた。

 犯罪行為が社内で起きたら「ハラスメント」、学校内で起きたら「いじめ」。こうした言葉を敢えて使ってしまうと、問題の本質を捉えられなくなる恐れがある。今回の神戸の事件も、「いじめ」というより学校内で起きた暴行事件だ。しかも何カ月にもわたり暴力が続いた、深刻な事件である。

 「ハラスメント」の概念が広く知られるようになったことで、内々に処理されてしまうことなく適切な対処がされたケースも中にはあるかもしれない。しかし、こうしたフレーズを便利に使いすぎることは考え直さなければいけない。

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