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ふるさと納税の返礼品が「ほとんど脂身」 寄付制度で自治体を疲弊させてはいけない

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。かつてほどの盛り上がりは見られないものの、現在の全国の自治体でふるさと納税に対する返礼品の送付が続けられています。そんな中、10月6日に、宮崎県美郷町にふるさと納税をしたという方のツイートをきっかけに自治体に対する批判が殺到しました。

 それによれば、宮崎県美郷町のふるさと納税の返礼品として届いた宮崎県産の黒毛和牛薄切りが、「ほとんど脂身の物」だったそうです。今回の炎上を受け、ふるさと納税における新しい問題について考えてみたいと思います。

美郷町の炎上から謝罪まで

 ツイート主は宮崎県美郷町に1万円のふるさと納税を行い、返礼品として、宮崎県産黒毛和牛薄切り800gを指定したそうです。

 400gずつ2パックになって届いた返礼品は、牛肉というよりも牛脂と呼べるほどの脂身でした。ツイート主はすき焼きを食べようと思っていたそうですが、写真を見る限りすき焼きはおろか、代わりに何を作ったら良いのか難しい代物だと感じました。

 美郷町の対応は非常に素早く、翌日6日(日)には公式HPに次の謝罪文を発表しています。

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【お詫び】ふるさと納税の返礼品について

 この度は、ふるさと納税返礼品の「宮崎県産黒毛和牛薄切り800g」につきまして、脂身が著しく多い等、到底ふるさと納税返礼品として相応しくない品質のものをお届けし、誠に申し訳ありませんでした。関係者の皆様に心よりお詫び申し上げます。

 また、宮崎県民の皆様及び宮崎県内で畜産業を営まれている皆様におかれましても、大変なご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありません。

 品質の確保ができるまで、対象事業者が取り扱うふるさと納税返礼品を停止いたします。

 今後は、このようなことが発生しないよう、原因の究明を行い、対策を講じる所存です。大変申し訳ありませんでした。

美郷町政策推進室

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 ツイート主も、美郷町と牛肉を生産している新垣ミートからお詫びの連絡があったことなどの報告をしていました。

発覚したふるさと納税の問題点

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「Getty Images」より

 当事者間では問題は終息の様相ですが、この炎上を受け、ふるさと納税における新しい問題や潜在的な問題を感じます。

 まず、自治体間での返礼品バトルが行き過ぎていたのではないか、ということです。

 政府はこれまで行き過ぎの返礼品に対し警鐘を鳴らしてきたものの、各自治体もふるさと納税による寄付金欲しさに、そして、他の自治体に見劣りしないようにとプレッシャーを感じていたのだと思います。そのプレッシャーは、返礼品を準備する業者等にも降りかかってきます。

 返礼品として商品やサービスを提供する体力がある業者等や、採用されたことで名前が世に出てメリットがあったという業者等もあると思いますが、それに見合うメリットがないという業者等もいたかと思います。いくら寄付金をもらう立場とはいえ、自治体や業者が苦しみもがくのでは本末転倒です。

 もちろん仮に苦しい状況だったとしても、返礼品を掲げてしまった以上は一定の責任はあります。「返礼品ありき」で寄付をしている人がいるわけですから。そこで問題となってくるのは、責任の所在はどこにあるのかということです。

 返礼品の送り主は間違いなく自治体ですが、自治体は業者等に商品を依頼しています。自治体が1つ1つ検品するとは思えませんので、業者等を信頼するしかありません。そうなると、業者等やそこで働く人達の責任感や倫理観にかかってきます。もしかしたら、場合によっては劣悪品が返礼品に回ってしまう可能性もゼロとは言えません。ただ繰り返しになりますが、あくまで送り主は自治体であり、指示を出しているのも自治体です。

 さらに食中毒が起こったとか、食べ物以外の返礼品で負傷してしまったなどの問題が起こった場合は、責任の所在が大きな問題となるに違いありません。現在のように責任の所在が曖昧な状況では、このような問題が発生したときに速やかな対応が難しくなってしまいます。

 そして最後の問題は、ふるさと納税をした人が返礼品についてどう捉えるか、ということです。そもそもふるさと納税は寄付の制度であって、返礼品は後から付いてくるものです。仕組み上2,000円を自身で負担しているとはいえ、それ以上の価値のものをもらい問題が発生したときに、何か文句を言っていいものだろうか、という戸惑いを覚える人もいるでしょう。ツイート主も書いているように、声を挙げられない人が既に多数いるかもしれません。その場合、自治体が気付くことはないわけです。

本来ふるさと納税は「寄付」

 ふるさと納税は、寄付した人はお得であり、自治体は潤い、業者等に仕事も回る、うまく稼働すれば三方良しの制度となりうるものです。

 しかし、寄付した人はお得と返礼品が欲しいだけで、自治体への想いは薄くなりがち。自治体も、寄付はありがたいけれど、どこかの知らない誰か宛ての返礼品に振り回されててんやわんや。業者は、いつかお客さんになってくれるのかも読めない間接的なお客さんのために準備をしなければなりません。

 こうしたことから、現在のふるさと納税は、それぞれが「想い」と「責任」を持ちにくい制度であるとも言えるでしょう。

 ふるさと納税に限らず、必要以上に「安さ」や「お得」を追求し過ぎると、どこかにひずみがくるもので、事件や事故が起こりやすくなります。ふるさと納税の返戻率だけを追求するのはやはり問題なのかもしれません。

 ふるさと納税をする側の私達としては、今一度、「本来は寄付である」という基本を踏まえて行動することが重要になってくるのではないでしょうか。

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