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台東区避難所ホームレス受け入れ拒否と自己責任論は、海外でどう報じられたか

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Getty Imagesより

 10月12日の台風19号上陸から1週間近くが経った。しかし、被害の爪痕は大きく、いまだ普段の生活に戻れていない地域は多い。そんななか、今週末には関東や東北でまとまった雨が降るとの予報が出ており、再び洪水や土砂災害への警戒が呼びかけられている。
 
 今回の台風19号被害は日本各地の災害対策に多くの課題を残したが、そのひとつとして議論となっているのが、台東区が避難所でホームレスの受け入れを拒否した問題だ。
 
 各報道によれば、台東区は避難所にやってきた人に名前や住所の記入を求め、台東区内に住所がないホームレスに対しては「避難所は区民が対象」として受け入れを拒否したという。
 
 その上、避難所の利用を拒絶された人が施設の入口付近で風をしのいでいたところ、そこからも強制的に排除されたそうだ。台東区では外国人旅行者や帰宅困難者のために一時滞在施設が用意されていたが、そちらへの誘導もなかったと報じられている。
 
 台風19号はすさまじい雨と風をもたらし、屋外にとどまることは生命の危機につながる可能性が高かった。テレビでは散々、不要不急の外出を控えるよう呼びかけ、自宅で不安な時を過ごした人が大半だったろう。しかしホームレスは締め出され、避難場所への適切な案内を受けることもできなかった。

イギリスやドイツのメディアによる報道

 生存権や基本的な人権意識に関する考えが欠落した対応となったことに、多くの批判が集まった。

 15日になって台東区はようやく謝罪のコメントを出し、検討組織の立ち上げを明言したが、遅きに失した感は否めない。

 こうした行政による「命の選別」は、海外で驚きをもって報じられた。そのいくつかを紹介したい。

 イギリス・ガーディアン紙やドイツ・シュテルンのニュースサイトは、台風19号の被害を伝えるニュースの冒頭で台東区の避難所受け入れ拒否騒動の概要を記している。

BBCは日本社会における自己責任論の跋扈を指摘

 もっとも踏み込んだ報道をしているのは、イギリス・BBCのニュースサイトだろう。

 10月15日付BBC NEWSは、前述したような受け入れ拒否の概要のみならず、少なくない数の日本人が台東区の姿勢を支持した一連の動きまで伝えているのだ。

 命を選別した台東区の決定に怒りを表明する声が上がる一方で、ネット上では「ホームレスが来ると安全面、衛生面で不安」「彼らは納税していないのだから、税金を払っている人が優先なのは当然」といった自己責任論が飛び交った。

 BBC NEWSはこういった流れを紹介したうえで、<ソーシャルメディアでは日本の世論で目を引くようになった自由主義的な傾向がまたあらわれた。そういった人々は、ホームレスは税金を払っていないのだから、行政のサービスを受けるべきではないと主張している>と日本国内の世論を解説した。

 行政が助けを求めた人を見放し、命の危険がある暴風雨のなかに放置したということ。また、それを支持する人がいるということは、欧州のメディアを驚愕させた。だからこそ、このように報じられたのだろう。

 基本的人権はすべての人に保障されているもので、税金を支払った対価として得られるサービスではない。近代民主主義国家として基本的な前提が、なぜここまで共有なされなくなっているのだろうか。

 これは、今回の台東区の事例だけに限ったことではない。

 新自由主義的なあり方が定着し、自己責任論が叫ばれるようになった日本社会では、弱者がサポートを求めることに対して非難が集中するようになった。

 生活保護バッシングがその典型だが、自然災害の被災者もそのなかに含まれる。今回の事例はそういった一連の流れのなかにあるものだ。

 こういった考えが定着することは、この社会を生きづらく、不幸な人を増やす方向にしか進まない。自己責任論を叫び、今は自分自身の力で困難を乗り越えることが可能な人々も、この先、立ちいかなくなった時に「自業自得だ」と割り切るのだろうか。それでいいはずがないだろう。

 今回の問題から、私たちはそのことを改めて考える必要がある。

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