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「子どもはママを幸せにするために…」胎内記憶が徹底的に痛めつける、子の人生

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「GettyImages」より

 18日発売の「女性セブン」(小学館)が、<菅田将暉の両親、木村拓哉の母、昭恵さんが傾倒する「胎内記憶」を知れば生きる意味がわかる>という記事を掲載。日本における胎内記憶研究の第一人者である産婦人科医・池川明氏の言説を取り上げている。

 池川氏は、かねてより著書やメディア、講演会で、“母親のお腹にいた頃の記憶”や“母親のお腹に宿る以前の記憶”である胎内記憶の存在について持論を述べてきた。同誌は池川氏の講演会に大勢の聴衆が耳を傾けているとし、<今、池川さんの提唱する『胎内記憶』が注目を集めている>と紹介した。

 以下は池川氏が同誌取材に答えた発言の一部だ。

<生まれる前の記憶はそれぞれですが、子供たちが語るのは『私はお母さんを選んで生まれてきた』ということです。しかも子供は母親の役に立つために生まれてきたと言うんです>
<誰もが、生まれただけで母親の役に立っている。あなたが生きていることはすでに誰かの役に立っている>
<そう思いを凝らすと、いろいろな悩みがあったとしても、“私は生まれてよかったんだ”と自分の人生を肯定できるはず>

 耳障りの良い言葉が並ぶ。人によっては、自分という存在を肯定してくれる、心強い言葉にもなり得るのだろう。

 しかし記事中にもあるが、胎内記憶があると科学的に証明することも、逆にないと証明することも科学的に難しい。池川氏も科学的に解明するつもりはなく、「胎内記憶は子育てに役立てるためのもの」と述べている。いわゆる“思想”ということだろう。

 胎内記憶を持つとして自らトークショーなどで語る子どももいる。その代表といえるのは「すみれちゃん」だ。すみれちゃんは自身を「かみさまのことたまメッセンジャー」と称し、母親と共にトークショーを開いたり本を出版。池川氏同様、すみれちゃんも著書「かみさまは小学5年生」(サンマーク出版)の中で、赤ちゃんは母親を選んで生まれてくると説明している。

<数えきれないくらいのママの中から選ばれたママってすごいよね>
<あかちゃんがいるママたち。あなたは、世界にひとりしかいない。あなたは、その子に選ばれました!!>

 また、赤ちゃんが夜泣きをする理由は<ママたちに守ってあげたいって気持ちを経験させるため>、流産の原因は<あかちゃん自身が流産を経験したくて地球にきていることが多い。長い目で見たら、ママにとって絶対に大切な経験になる。悲しむことも生きるためには大事なことだし>だそうだ。

 池川氏、すみれちゃんの「子どもは自ら母親を選んで生まれてくる」という思想は、自らの存在意義が揺らいでいる人や、子育てに悩む母親にとっては、救いになることもあるのだろう。彼らの講演を聞いて涙する人は多いという。

 しかし彼らの思想が当の子ども本人を傷つけ、疲弊させることもあるのではないか。特に、「虐待する親を選んだのも子ども自身」という主張は、到底看過できない。

子どもは母親を癒やすための道具じゃない

 池川氏は著書『胎内記憶でわかった 子どももママも幸せになる子育て:「もって生まれた才能」の伸ばし方』(誠文堂新光社)の中で、子どもは「お母さんのたましいが成長すること」を望み、何かしらの使命を持って生まれてくると説く。そして、“虐待を体験する”というプログラムを持っている子どももいると説明しているのだ。

<虐待を体験するというプログラムをもっている子どももいる>
<虐待をするお母さんの多くが、自分自身が親に受け止めてもらえなかったという思いをもっています。そういう闇に光を灯すには、どんな状況でも受け入れてくれるような子どもが必要です。その子の姿を見て、お母さんの心は変化していくのです>

 つまり、「虐待を受けることは、母親のたましいを成長させるために子どもが望んでいる」ということになる。

 親からの暴力や暴言、育児放棄などの虐待は子どもに深刻な影響を与える。子どもの人権をまったく無視した上記の主張は、受け入れてはいけない。本来、虐待をする母親に必要なのは「子どもにサンドバックになってもらうこと」ではなく、別の“大人”が適切なケアをすることだ。池川氏の主張は、虐待が親から子へと連鎖し続けてしまう危険性を孕んでいる。

 虐待プログラムに限らず、そもそも子どもは親を癒やし、いたわるための道具ではない。親にとって都合の良い解釈がいくらでも出来てしまう「胎内記憶」思想。取り扱いには非常に慎重にならなければいけないはずだ。

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