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自分に向いている仕事は何なのか?転職・復帰での適職AI診断

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「Getty Images」より

 現在就いている職業が自身にとって適職であるのか、あるいは転職・再就職で自身の適職がわからないと悩んだことはあるだろうか。子どもの頃からさまざまな職業について学ぶ機会は限られており、実際に就職するまでに「自分の能力を生かせる職業」や「自分の性格に合った職業」を探すことは大半の人にとって難しい。働き始めてから、「もっと自分に合った職業があるのではないか」と感じたことがある人も多いのではないだろうか。

 そんな自分の適職に悩む人に向け、日本IBMはAIによる適職診断ツール「MEET YOUR SECOND LIFE」を公開した。スマートフォンからアクセスが可能な、無料簡易体験版を利用し、Twitterやブログで自身の適職診断結果を掲載する人が多くいる。早速注目を集めている適職診断ツールだが、どういう仕組みなのか。

定年後も働く高齢者に向けた適職診断ツール

 「MEET YOUR SECOND LIFE」は、人生100年時代といわれる昨今、定年後も新たに職を探して働く人の数が多くなることを想定し、開発された。高齢者が定年後も自身のスキルや性格、趣味などを生かし、生き生きと働けるような仕組み作りの第一歩としている。

 スマートフォンなどのデジタルツールの操作に、苦手意識をもつ高齢者はまだまだ多い。そこで、高齢者の使いやすさを重視して、入力方法を音声入力にする工夫をしている。 

 それにしても、自分に適した職業をどうやって診断するというのか。本ツールは、さまざまな職種の45~69歳の男女2,887人のスキル・性格調査結果と、IBMの開発したAI「IBM Watson(ワトソン)」による性格分析結果を用いているという。

 東京大学との共同研究である「シニアの活力を社会に生かす研究」や、企業と共同開発したシステムも取り入れ、さまざまなパターンのスキルや性格のデータから、その人に合った適職を診断する。職業は、10職種とそれに紐づく約150の職業から選び出され、中にはあまり広く知られていない職業もある。

「MEET YOUR SECOND LIFE」の使い方

 スマートフォンの簡易体験版では、音声入力機能で回答する方式となっている。ここでは、筆者が実際に利用してみた簡易体験版の使い方について、簡単に解説したい。

 質問内容は、Step1~3で構成されている。

 Step1では「スキルに関する質問」に答える。自身がもっているスキルについて、1~5段階のどれに近いかを選択する方式だ。

 Step2は「性格分析のための質問」で、性格に関する10個の質問に対し、回答を手入力か音声入力のいずれかで入力する。ただし各質問、15文字以上の入力が必要となる。

 Step3では、「趣味に関する質問」に手入力か音声入力で回答する。選択式の回答よりも、手入力や音声入力をする回答が多いので、じっくり考えて入力する場合は10分弱の時間が必要だ。

「Meet Your Second Life」の簡易体験版

適職診断の分析要素は回答内容だけではない

 このツールは、どのように性格やスキルを分析して適職を診断しているのだろうか。もちろん、回答内容からもその人の特徴を分析しているのだが、それ以上に「表情」や「話し方」を分析の重要な要素としている。

 話し方については、「言葉遣いの正確性」や「使っている言葉が肯定的か否定的か」などをみる。日本語の話し方の特徴と性格は、密接に関係しているという研究結果に基づき、分析の重要な要素としているのだ。

意外な診断結果から自身の可能性が広がる

 適職診断結果には、想像もしなかった意外な職業が出る人が多いようだ。日本IBMでは、4人の著名人を招いた「選考体験会」を実施している。4人が本ツールを体験した結果、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさん(56)は「マジシャン」、フリージャーナリストの佐々木俊尚さん(57)は「手話通訳士」、庭師の村雨辰剛(31)さんは「通訳案内士」、定年後にITを駆使した活動を始めた若宮正子さん(84)は「農家」だった。どの方も想像もしていなかった意外な適職診断結果で、逆にそこが面白いところだと感じているようだ。

先行体験会のYouTube動画

 Twitterやブログ上でも、本ツールの診断結果を掲載する人が多く見られる。現職とはまったく異なる職業が適職と診断され、驚きながらも「あながち間違っていないかもしれない」と、自分の性格に合っている可能性があると判断する人もいる。

 本ツールは高齢者に向けたものではあるが、転職に悩む働き盛りの世代や、出産と育児で離職したが再就職を求める女性など幅広い層に対して有効かもしれない。

新しい仕事にチャレンジしたい転職者は自身の能力の再発見に

 転職サイト「doda(デューダ)」が、2017年4月~2018年3月の期間、同サイトのサービスに登録している約8万人を対象に調査を行った。その結果、転職理由の1位は「ほかにやりたい仕事があるから」であった。dodaでは、ほかにやりたい仕事があるということは、「今の仕事に興味をもてない」と思っている人が多いのではないかとしている。やりたい仕事があって入社したが希望する部署に配属されない場合や、働いているうちに「もっと自分に向いている仕事があるはず」と思うようになる場合があるのではないだろうか。

 転職サイト「エン転職」は、2017年に「未経験職種へのチャレンジ」についてのアンケート調査を行っている。エン転職を利用する8,801人を対象にして、「転職を機に、未経験の職種にチャレンジしてみたいとおもいますか?」という質問をした。すると、80%の人が「チャレンジしてみたい」と答えたのだ。その理由として、「興味のある仕事や新しい仕事へ挑戦したい」という答えが72%と、最も多かった。このようにポジティブな理由で未経験の職種を希望する人がいる一方で、19%の人が「今の職種にやりがいを感じない」とネガティブな理由を挙げていた。

 「新しい仕事にチャレンジしたい」「もっと自分に向いている仕事があるはず」と仕事にやりがいを求めている人は、本ツールを使うことで新たな自身の能力を再発見し、自身の可能性を広げられるかもしれない。

ブランクが長く前職の経験を生かすことが難しい女性の再就職先探しに

 総合人事・人材サービスのアデコは、20~49歳の働いている女性2,782人に再就職・復職にあたっての不安などについて調査している。その結果によれば、再就職・復職の不安として最も多かった回答は、62.6%の「育児の両立」であった。次いで、「仕事をこなせるか」「職場の人間関係」「ブランクが仕事に影響しないか」が20%前後を占める。

 ブランクの長さを不安に思う女性は、少なからずいることがわかる。もしブランクが長すぎて、前職と同じ職業に就くことが不安な場合、ほかの職業に目を向けてみることも、ひとつの手かもしれない。出産を機にIT関連企業を退職した筆者が本ツールを使用した結果、「フラワーコーディネーター」「家事代行」「農業」が適職となった。前職の経験を生かすことが難しくなったとしても、自身では想像もしなかった職業に出会えるところが、本ツールの魅力だろう。

 適職を自身で判断することは、なかなか難しい。自身が思っている性格や特徴が、他者評価と一致するとは限らないからだ。「MEET YOUR SECOND LIFE」は現時点で商品化の予定はないとのことだが、診断した職業に実際に就いたユーザーのフィードバックをAIに学習させ、診断の精度がより向上すれば、転職・再就職に役立つツールとして利用されていくかもしれない。

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