連載

中田敦彦のYouTube大学 お金の授業【資産運用の鉄則】への同意と指摘

【この記事のキーワード】
中田敦彦のYouTube大学 お金の授業【資産運用の鉄則】への同意と指摘の画像1

生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナー(FP)で社会保険労務士の川部紀子です。オリエンタルラジオの中田敦彦のYouTubeチャンネル、「中田敦彦のYouTube大学」で、お金の授業学校では教えてくれない【資産運用の鉄則】~素人が必ずハマる罠編~前編という動画が10月18日に公開されました。

 動画は、中田さんが『マンガでわかる シンプルで正しいお金の増やし方』(著:山崎元、作画:飛永宏之)という著書の内容を解説しているというものです。その中にはFPについても言及している部分がありました。

 この記事では、生命保険会社8年、独立系FP15年の立場として、同意する部分と指摘したい部分について書いていきたいと思います。なお動画は中田さんが書籍の内容を解説するというものですから、中田さんが誤った理解をしていない限り、著者である山崎元さんの思考や意見である可能性もあることを念のため先にお伝えしておきます。

金融商品も不動産も一切販売しない独立系FPもいる

 動画の中で中田さんは「素人が必ずハマる罠」として「お金のプロを信じてしまう」と言っています。お金のプロとして挙げられているのは、証券マン、銀行員、生命保険販売員、FP、不動産業者です。

 こうしたお金のプロに相談するのは良くないと主張されているのですが、その理由は上記の人達の収入が、顧客が儲った場合の成功報酬ではなく、「手数料」であることとしています。手数料というのは、売るだけで手に入る報酬であり、リスクを取るのはお客様になります。それはひどいのではないかということです。

 手数料を問題視するのは、多寡や透明性、そもそも払う必要性があるのだろうかという点に至るまで、金融機関や金融商品の代理店、そして販売している人に対し私自身も何度も感じたことがありますので同意見です。

 しかし、指摘したい部分もあります。私自身FPを職業にしていますが、金融商品を一切販売していない独立系FPなので、販売や仲介における手数料を全くもらっていません。この動画を見ただけの人に言わせると、FPはみな手数料をもらっている。つまり私も手数料をもらっている人ということになるでしょう。

 確かに金融商品を販売することが収入源になっているFPが多いのも事実ではあります。ですから手数料に注意を促したいのであれば、「販売している人なのか、販売していない人なのかを見極めろ!」と言っていただきたかったです。

ファイナンシャルプランナー資格の曖昧さが露呈

 先ほど挙げられていたお金のプロの中でも、特にFPのことが大きく取り上げられていました。

 動画では「FPは民間資格だから……」と何度も言及されています。確かにFPの民間資格のNPO法人日本FP協会の普通資格である「AFP」、上級資格である「CFP®」は非常にポピュラーなものです。しかしFPには「ファイナンシャル・プランニング技能士1,2,3級」という国家検定もあります。こちらは民間資格ではないのでミスリードです。

 FPの信憑性を疑う発言をしたいのなら、「税理士などと違って、FPの法律はないんだから、今日から誰だってFPと名乗っていいんだよ!」くらいのことを言ってほしかったです。これは間違いなく事実です。税理士でない人が税理士を名乗ると法に触れますが、FP試験を受けたこともない誰かがFPを名乗っても一切法に触れないのです。こうした間違いは残念ではあるものの、非常に曖昧な資格であることが露呈したという言い方もできます。

 さらに「FPは知識が足りない人が多い」という発言もありました。「足りない」「多い」は基準がない言葉なので、ここは間違いとも正解とも言い切れません。先ほどの民間資格にもレベルの違う2つの資格がありますし、国家検定にも3つの級が設定されています。資格のレベルだけでなく、実務経験や日頃の勉強や情報収集などの違いもあり、FPによって知識の量はさまざまなのです。中田さんを唸らせる知識を持つFPも驚くほどに多いことは間違いありません。

 FPに対する中田さんの疑念はまだまだありました。「FPは金融商品のPRに使われることが多く、スポンサーの都合のいいことを言ってくれる、タレントに近いところがある」というものです。つまり、FPは商品のステマをやっている可能性があるということです。商品を販売しているFPはそういう現実もあり得るのですが、今は金融機関のコンプライアンスが非常に厳しくなっており、私のような独立系FPが商品をおすすめしてマージンが発生するといった仕事ができるほど甘くはありません。

 FPが金融機関のイベントなどで講演をする、商品のパンフレットや雑誌等の記事広告に出るといった仕事をすることはありますが、商品が売れることによるマージンではなく、決まった講演料や原稿料・取材料を受け取るケースが大半でしょう。

 私自身は講演などの仕事を依頼されたときに「御社の商品をおすすめするようなトークは一切できません。逆に購入のブレーキになる場合もあると思います」と必ず伝えていますが、怪訝な顔をされたこともありません。また、セールストークを依頼されたこともありません。かつてより販売倫理も向上していると感じることすらありますので、動画ではちょっと古いダークサイドな部分が強調されたトークになっている気がします。

誰を信じるか、結局は自分次第

 冒頭でもお伝えしましたが、この動画の内容は著書の解説ですから、著者である山崎元さんの意見ということが重要です。

 そういう意味では、著者に成り代わっての解説動画だと割り切って考えれば良いのかもしれませんが、動画を見ていると、中田さん自身が書籍から学び、今では著者とすっかり同意見を持っているように感じてきます。

 中田さんはタレントでありYouTuberとして演じているのか、それとも心からそう思って喋っているのか本当のところはわかりません。しかし、金融商品に関しては、お金のプロと呼ばれる人を「疑え」という論調が見受けられるのに、書籍の内容に関しては、疑うことなくそのまま盲信しているように見えてきました。

 動画に限ることではありませんが、視聴者も情報をそのままストレートに受け取るだけでなく、面倒がらずに自分の頭でも考えることや他の情報も得ることが、正しい知識を持つために重要だと思います。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。