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不登校でも勉強できる、受験もできる。「クラスジャパン小中学園」のネット授業と学校連携の仕組み

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「GettyImages」より

 文部科学省の調査によれば、平成29年度の不登校児童生徒数は14万4031人で、過去最多を記録した。不登校生徒数は増えているが、不登校の子どもたち向けのフリースクールやサポート校は、まだまだ不足している。

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 そこで一般財団法人クラスジャパン教育機構(以下、クラスジャパン)は昨年3月、長期欠席中の小中学生を支援するプロジェクト「クラスジャパンプロジェクト」の発足を発表した。

 しかし、プロジェクトのHPに「日本全国の不登校者全員の教育に取り組み、通学していた学校に戻す」という記載があったことがネットユーザーの間で話題になり、批判を浴びた。「児童・生徒を学校に戻すこと」をゴールに据えた不登校支援は間違っている、との声が精神科医などからも多数上がり炎上につながったのだ。

 この騒動を受け、クラスジャパンは「誤解を招いた」としてHP上で謝罪し、「学校に戻す」というミッションも削除。そして今年7月、在籍校と連携しながら学校での「出席扱い」や「成績評価」を目指すことができるネットスクール「クラスジャパン小中学園」を開校した。

 「クラスジャパン小中学園」が開校して3カ月あまり。「クラスジャパン小中学園」の詳細、制度や使用料については疑問点も多く、まだその活動が周知されているとは言い難い。クラスジャパン教育機構の代表理事・中島武氏に、「クラスジャパン小中学園」がどういったものなのか、話を伺った。

「クラスジャパン小中学園」のレポートによって、学校は出席や成績を判断する

――まず「誤解」について教えてください。クラスジャパンはなぜ当初のミッションで「日本全国の不登校者全員の教育に取り組み、通学していた学校に戻す」と掲げていたのですか。

中島:クラスジャパンは設立当初より、不登校の子供たちの進路を確保するため、学校と連携することで、出席扱い・成績評価を得、内申書に反映することで受験という一つの選択肢を保つことも目指しています。

学校と連携することを前提としているので、自宅に居ながら学んだ場合でも学校に登校したことになる仕組みを構築しているのですが、これを「学校復帰」という言葉で表してしまったことが、学校に登校することを絶対視しているような誤解を生みました。

――学校に登校することではなく、不登校生徒が適切な教育を受けられるようにすることがミッションだということですね。7月の開校から3カ月ほど経過しましたが、現時点でクラスジャパン小中学園を利用するお子さんは何名ほどいらっしゃいますか?

中島:すでに学校に復帰し退会した児童生徒、体験中の児童生徒を合わせると約100名です。

――現状、不登校の児童・生徒の受け皿としては、民間のフリースクールや自治体が運営するサポート校、適応指導教室などありますが、絶対数が足りていません。新設の「クラスジャパン小中学園」はどういう仕組みになっているのですか。

中島:クラスジャパン小中学園は在宅ネット学習のスクールでネットを活用した映像授業をしています。

児童生徒は、学校の教室で本来受講する授業を自宅にいる期間も映像授業を受けることができます。また、教科書に準拠した個別最適化された映像授業を学校のシラバスに沿って受講することで、もし、生徒が再び教室で授業を受けるようになった際でも、在籍している学校の授業進度と本人の教科書の理解度の進度に差異が生じないようにもしています。クラスジャパン小中学園は、居場所や教材、授業を提供するだけではなく、学校のネット上の別室運営という位置づけです。

現在、クラスジャパン小中学園で使用している映像授業は、提携企業である「スタディサプリ」「すらら」「e-board」の3つです。

3種類の映像授業はアーカイブになっており、児童生徒が日常生活のリズム・理解度のペースに応じて、クラスジャパン小中学園のネット担当の先生と相談し、進めて行きます。なおネット担任は、児童生徒ひとりに対してひとりのネット担任をつけています。時間割は決まっておらず、児童生徒の生活習慣・在籍学校の授業進度・本人の進路に応じて、個別に決めていきます。

――ネット担任の先生と話し合いながら勉強のペースを決めていくんですね。ネット担任の先生は、どのような経歴の方が務めているのでしょうか?

中島:ネット担任には多種の経歴の者がいます。教員免許を保有している元小中学校の教員もいれば、教員免許を持っていない塾講師・一般企業経験者もいます。また、経歴だけでなく、生徒とコミュニケーションを取ることに長けているかもネット担任として重要な素養です。それらの条件をクリアし、クラスジャパン小中学園と契約を交わした方のみがネット担任を務めています。

――不登校生徒が「クラスジャパン小中学園」を利用するには、在籍学校との連携が必要とのことですが、現状、連携はうまくとれているのでしょうか?

中島:現在クラスジャパン小中学園に入会している児童生徒たちのほとんどが、学校との連携がとれています。ただ、前例がないことにより、連携までの学校側の検討時間がかかる場合もあります。しかし、在籍生徒の自宅での学習進捗レポートを学校に見せることで、その生徒の頑張り度を出席・成績に反映しようと積極的になってくれることも少なくありません。

――具体的にどのような形で学校との連携を行っているのでしょうか?

中島:クラスジャパン小中学園では、連携学校に対して毎月「マンスリーレポート」を作成しています。

マンスリーレポートには、以下の内容を記載しています。

  • 《定量報告》:クラスジャパン小中学園の提供する映像授業で学習した日数(時間)
  • 《定性報告》:在籍学校の教科書単元に対応した映像授業で学んだ学習領域
  • 《定量報告》:クラスジャパン小中学園で学ぶ映像授業上の小テストの理解度
  • 《教科以外》:クラスジャパン小中学園が提供するプログラミングコンテンツ等での学習状況を定量または作品報告
  • 《コミュニケーション》:本人とクラスジャパン小中学園のネット担任がネットコミュニケーションをやり取りした日数・回数
  • 《所感》:ネット担任の担当児童生徒の1ケ月間の様子。特に学校との連携に学校復帰するに必要な情報

学校に対してのマンスリーレポートは、保護者の方から在籍学校に渡していただいています。保護者から学校に渡すことで、保護者と学校の関わりを絶やさないことが目的です。

また、クラスジャパン小中学園では、保護者向けのマンスリーレポートも作成しています。保護者向けのものは、保護者の方にお子さんの状況を把握するために目を通してもらっています。

――在籍学校は、クラスジャパン小中学園のマンスリーレポートから、出席扱いや、成績、内申書へ反映するか否かを判断するのでしょうか?

中島:そうです。文部科学省からの正式通知にありますように、出席扱いや成績は在籍学校の判断で決まります。クラスジャパン小中学園はその判断材料を作成する役割を担っています。

――「クラスジャパン小中学園」で学ぶ場合、入会金1万円と月額使用料2万円が発生しますね。この費用負担について自治体支援などはあるのでしょうか。

中島:2019年10月現在、クラスジャパンと包括契約中の大阪府富田林市では、受益者負担なしで子どもをサポートしています。ただし、包括契約が未契約の自治体では教育予算が発生するので、保護者に利用料金の負担をお願いしています。

また初年度は、自治体との包括契約市町村のみの学習サービス提供となっており、地域が限定されていますが、多くの他地域の保護者より、「保護者負担でも良いので、学校と連携した自宅学習を子供に受講させたい」との声があり、利用者負担のサービスを開始しました。自治体によっては、一部利用料を負担する自治体もありますので、引き続き、保護者の利用料金が負担とならないように、自治体とは相談していきます。

自分の住む地域が、クラスジャパンの一部利用料を負担しているかを知りたい場合は、クラスジャパン小中学園にお問い合わせくだされば、状況含めてお話させていただきます。

 ――クラスジャパン小中学園は、不登校で勉強の機会を失い、卒業しても高等教育に進みづらく将来の選択肢が狭まってしまうという負の連鎖を、なんとかして断ち切っていきたいという思いからですよね。

中島:クラスジャパンプロジェクトは、現状の義務教育制度の中で、学校に登校していない小中学生が将来、社会で活躍するための不利益を被らないように、学校関係者だけでなく、全ての大人が現時点でできるサポートをしようというプロジェクトです。

学校に登校することは、生徒本人が判断することです。我々がすべきことは、大人が学校に行かせることでも、行かせないことでもなく、文部科学省の制度にある教育の機会を確保し、どのような状況においても、進路の選択肢を狭めることのないようにすることが責務だと考えます。

不登校になり、本人や保護者が将来に絶望しているケースも少なくありません。しかし学校と連携することで、自宅学習内容を学校の出席扱いとすること・学校での正式な評価の参考とすることはできるのです。この仕組みをより多くの人に伝えることで、希望を抱くことにつながり、明日への意欲を高めることになると考えています。

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