社会

『スッキリ』が献血ポスターを「不快だから環境型セクハラ」と歪曲

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『スッキリ』(日本テレビ系)番組ホームページより

 今月24日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)が、賛否両論を呼んでいる日本赤十字社のポスターについて取り上げた。しかしその内容が「Twitter上の意見を捏造している」として、批判の声が集まっている。

 問題となっているポスターは、漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』(KADOKAWA)の女性キャラクター“宇崎ちゃん”が描かれたものだ。“宇崎ちゃん”は小柄で「バストサイズは96センチのJカップ」という設定のため胸は大きく誇張されて描かれている。

 日本のアニメ描写ではよくみられる誇張だが、献血を呼びかけるこのポスターが注目されたきっかけは、あるアメリカ人男性のツイートだった。男性は新宿駅で見かけたというこのポスターに対して「過度に性的な宇崎ちゃんを使ったキャンペーンは残念」「こういうものは時と場所がある」と、苦言を呈した。

 太田啓子弁護士がこのツイートを拡散、もとの指摘に同意し「このポスターは女性をものとして扱う価値観を補強してしまう」「TPOをわきまえてほしい」という批判の声が大きくなった。同時に、「別に気にならない」「漫画とのコラボは献血を若い人へのアピールで合理的」など、ポスターを肯定する声もあり、賛否両論を呼んでいる。

 罵詈雑言飛び交う極端な対立も発生しており、冷静な議論が必要なこの問題だが、『スッキリ』の取り上げ方はむしろ冷静な議論を阻み、対立を激化させかねないものだった。

『スッキリ』スタジオは献血ポスター批判に「行き過ぎ」の空気

 24日の『スッキリ』ではまず、“宇崎ちゃん”のポスターに対する街の人の声やネット上の声を紹介。「不適切」「適切」それぞれの意見が並び、MCの加藤浩次を始めとしたスタジオの出演者は「このポスターに文句をつけるのは行き過ぎている」との方向性を示した。

 唯一、ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏だけは、「日本は昔から性に寛容的な文化があるが、西洋の感覚は違う」「簡単に議論できるものではない」との意見を述べていた。

 そして番組では、Twitter上で「環境型セクハラ」という指摘も出ているとし、ポスターとともに複数のツイートをモニターに映し出した。

<公共の空間で環境型セクハラしているようなもの!>
<献血でこんなイラスト使うなんて環境型セクハラだ>
<これは間違いなく環境型セクハラですね。理由は私が不快と感じたから>

 「環境型セクハラ」というフレーズはTwitter上でたちまち話題となり、番組視聴者から「自分が不快に感じたからといって排除するなんて」といった驚きや批判が続出。一部では、「環境型セクハラ」を主張し快・不快で善悪を決めようとしているのはフェミニストだとし、「やっぱりフェミニストは過激で傲慢」とフェミニストを嘲笑する意見もみられる。

 たしかに<公共空間で環境型セクハラしてるようなもの>というコメントは、前述のアメリカ人男性のツイートを引用して拡散した太田啓子弁護士が、<なんであえてこういうイラストなのか、もう麻痺してるんでしょうけど公共空間で環境型セクハラしてるようなものですよ>と指摘していた。

 しかし3番めのコメントは文脈を無視した“捏造”だという。

 番組放送後、<これは間違いなく環境型セクハラですね。理由は私が不快と感じたから>とツイートしたのは自分だというTwitterユーザーが、「違う意図で使われた」と、Twitter上で反論。この投稿は、弁護士の太田啓子氏がポスターを環境型セクハラだと指摘したことを皮肉ったものだったと説明した。

 さらに、番組が“宇崎ちゃん”のポスターを無許可で使用したことも、『宇崎ちゃんは遊びたい』の作者である丈(たけ)氏のツイートで判明。

<日テレさんからの打診はあったと聞いてて僕も担当編集もキッパリ断ったはずなんですが誰がいつテレビで使うことを許可したのかそれとも勝手に使われたのか説明は欲しいところですね>

“宇崎ちゃん”献血ポスターが孕む無数の問題

 献血を呼びかける“宇崎ちゃん”のポスターをめぐる問題はとても複雑で多層だ。女性を性的な存在としてのみ扱うような表現が公共空間で(疑問や意図を持たず)展示されることの是非。女性を性的な記号として扱う表現を、許容し続けていいのかどうか。虚構であるはずのコンテンツが実在の男女に不利益を与えている可能性はないか。

 性的な記号を誇張した表現は、もっと適切にゾーニングすべきではないか。そもそも件のポスターは過度に性的ではない、という意見もあり、では何をもって過度に性的かそうでないか判断するのかもまた問題だ。

 あるいはポスターを禁止してほしいという動きが表現の自由を規制する方向に発展する懸念はないか。まだまだ足りないだろう。こうした検討は、コンテンツや表現そのものの価値を否定するものではない。

 ポスター批判への反論として、若者に献血を促すために人気漫画のキャタクターを利用するのは必然で合理的だという意見、献血が重要かつ尊い行為であることは間違いなくこんなことで献血事業の邪魔をすべきでないという意見、献血をするのは男性の方が多いのだから男性向けでもおかしくないとする意見なども出た。

 だから、冷静な態度で話し合うべきなのだ。「これはこうだ」と決めつけたり、「いいや違う」とはねのけたり、現状はその繰り返しになっている。これでは議論が成熟するどころかスタートすらしない。

 『スッキリ』のスタッフがツイートの意図を勘違いして採用したのか、番組にとって編集しやすく都合のいい形で使用する意図があったのかはわからないが、「ニュース番組」を謳う以上、「こんな炎上が起きています」と紹介するのなら正確に事象を把握してほしい。そのうえで、いかに複雑で切実な問題であるかを番組内で伝えるべきではないだろうか。

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