
「Getty Images」より
政府は、期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を見送る方針を固めた。時限措置のまま存続させる方法を模索するとしているが、先行きは不透明だ。一方、長期の積み立て投資を想定した「つみたてNISA」に関しては、期限の延長を行う方向で調整を行っている。長期投資を目指す個人投資家にとっては、積み立てNISAを中心に検討した方がよいだろう。
進まない資産形成の株式シフト
NISAは、投資元本が年間120万円までならば、株や株式投信の値上がり益、配当・分配金にかかる税金が5年間非課税になる制度である。2014年に上限100万円でスタートしたが、16年に120万円に拡大された。
政府は「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、銀行預金に過度に偏っている日本人の資産形成を株式にシフトさせる政策を進めており、NISAもその手段の一つとして位置付けられている。だが、政府の掛け声とは裏腹に、国民の株式シフトはあまり進んでいない。
2019年6月時点における個人金融資産は約1860兆円だったが、このうち現預金は過半数の53%を占めている。7年前の2012年時点における現預金の比率は約56%だったので、比率は多少下がっているが、十分な水準とはいえない。
かつての日本では、株式投資は危険でいかがわしいものというイメージがあり、一般的なサラリーマン層が積極的に株式投資をするケースは少なかった。リスクを取って一攫千金を狙うタイプの人か、高いリテラシーと十分な資金力を持つ富裕層が証券会社の顧客という時代が長く続いた。
日本の株式市場は、米国など先進諸外国と比較するとボラティリティ(価格変動)が高く、企業の情報開示も不十分など、多少、不健全な面があるのは確かだが、株式投資が資産形成の中核であるというのもまた事実である。株式投資が富裕層に偏っていたことから、株式投資の有無は中間層と富裕層の格差拡大の原因にもなってきた。
近年は、政府や市場関係者の啓蒙活動の成果もあり、株式投資に対する意識は徐々に変わりつつある。特に若い世代にとっては、年金がアテにならないということもあり、株式投資で長期の資産形成を行うことへの関心は高まっている。