ホームレスを排除する差別心は500年前から変わらない

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しかしイギリスのホームレスも安全ではない

 このように日本より弱者に対して慈悲深いように見えるイギリスでも、ホームレスに対する嫌悪感をあらわにする人はやはりいる。少し前にイギリスで起こったホームレス拒否のニュースは記憶に新しい。

 昨年5月、イギリス南西部のウィルトシャー州のこと。当時41歳の救急隊員ニコラス・ストックは、瀕死状態の女性がいるという緊急通報を受け、救急車で現場に直行。心不全を起こしている様子の女性が、教会の駐車場に停めた車の後部座席にいるのを認めた。

 車内には汚れたビニール袋などが溢れていたことや女性の姿などから、ホームレスらしいことが分かった。ニコラスは救命措置を講じることなく現場を離れ、連絡を入れていた警察が到着した時には、女性は息を引き取っていた。その後、検視によって死因は急性アルコール中毒による心不全と判明した。

 ニコラスは報告書に、「車の中はホームレスが持っているような袋が散乱し、本当に不潔で気持ちが悪かった。車はアルコール臭がして女性は失禁状態だった」と記入。(引用:Techinsight)。目の前の瀕死の人間を置き去りにして仕事を放棄したことで、上級救急救命士の資格が翌日消された。また今年の9月の保健医療専門職審判所サービスの審理において、警察が来る前に現場を離れたことも併せて「明らかに重大な不正行為(引用:同)」として、15年間務めた救急救命士のリストから除名となった。

 イギリスの日刊タブロイド紙「ザ・サン」のオンライン記事には、「(勝手な)判断なしに対処して医療補助をするのが仕事。それができないならその仕事をしてはいけない」「彼はある種の罪に問われるべきだった」「彼がもう辞めていてよかった!」といった、プロフェッショナルにあるまじき態度を責めるコメントが並んだ。

 またイギリスでは、ホームレスに対しての暴力が少なくない。ホームレスは3人に1人の割合で、殴る、蹴る、尿をかける、物を投げるなどされている。20人に1人が性犯罪に遭っているという統計もある。

 さらには通行人から受け取ったチップにヒ素が盛られていて、意識を失ってしまった人や、点火した手持ち花火をズボンに入れられて、重度のやけどを負わされた人もいる。年々、悪質で非人道的ないたずらが増えてきているという。

 ちなみにホームレスの物乞いの中には、地下鉄の出口などで積極的に声をかけてくる人も多い。中には肩を叩いてねだってくる人もいる。地下鉄の車内で声をかけてきたり、カフェのテーブルを順番にまわってお金を無心してくることもある。もらえないことが続くと、舌打ちしたりする。

 しかし近頃はキャッシュレス化が進んでいるので、物乞いをしても小銭をもっていないと断られることが増えてきているという。また、ホームレスのなりすましが急増しており(実際は住む家があるのにもかかわらず物乞いをした人物は逮捕)、物乞いにお金や物を渡さないほうがよいという考え方の人も出てきている。さらにホームレスの数が2010年以降増えていて、ホームレス支援の慈善団体クライシスによればイングランドでは169%増なので、物乞いの競争率はぐっと高まっていて、生活が厳しくなっていると考えられる。

 2018年には、イギリス国内において路上で死亡したホームレスが1年に少なくとも449人いたことが判明した。英住宅・コミュニティ・地方自治省は2027年までには路上生活をゼロにする意向ということだが、ブレグジット(EUからの離脱)により国が貧しくなることも考えられ、イギリスにおいてもホームレス問題は難しい状況にある。

 『王子と乞食』は、16世紀のイングランドを舞台にした物語である。王子が物乞いの少年の暮らしを体験したいと思い、服を取り換えて入れ替わる。すると、王宮の人たちは身なりの汚い王子に気づかず追い払ってしまう。作中で、人を見た目で判断する世の中を批判したマーク・トウェインだったが、日本とイギリスにおけるホームレス拒否問題は、500年経った現代になっても、何も変わっていないことを示唆しているのだろうか。

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