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マツキヨの逆襲、ココカラと経営統合で消費者のお財布にメリットはあるか?

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(左)マツモトキヨシ(画像はWikipediaより)/(右)ココカラファイン(編集部撮影)

 今年8月、ドラッグストアチェーン大手の「マツモトキヨシ」(以下、マツキヨ)を運営するマツモトキヨシホールディングスと、同じくドラッグストアチェーン「ココカラファイン」(以下、ココカラ)が、経営統合に向けて協議を進めていることを発表した。来年の1月末までには結論を出す見通しという。

 「マツキヨ」と「ココカラ」の経営統合が実現した場合、売上高は約1兆円、店舗数は約3000店となる。2016年度に業界トップの座をウエルシアホールディングスに明け渡したマツキヨが首位を奪還することになりそうだ。また、ココカラもマツキヨの商品開発力を活かしたPB(プライベートブランド)商品の共同開発に期待を寄せているとのことで、ドラッグストア業界の地図が様変わりすることが予想される。

 一方で、私たち消費者にとっての最大の関心事は、ドラッグストア業界の変化によって普段の買い物にどのような影響があるのか――つまるところ、お財布にとってメリットがあるのかないのか、ということだろう。

 そこで、マツキヨとココカラの経営統合による業界内外の変化、消費者のメリット・デメリットについて、薬局専門のM&A(合併・買収)仲介会社であるMACアドバイザリーの代表取締役・花木聡氏に話を聞いた。

花木 聡(はなき・さとし)
中小企業診断士かつ、薬局専門のM&A仲介会社「MACアドバイザリー株式会社」の代表取締役。薬局M&Aの黎明期から縁談に携わってきた10年来の業界経験と、直営の調剤薬局「れんげ薬局」の運営経験によって、毎年数十社、過去数百店舗の成約実績を誇る。近年では、薬剤師の独立開業支援サイト「独立薬剤師.com」の運営にも携わっている。
MACアドバイザリー

生き残るには経営統合以外なかった切実な事情

 まず、マツキヨとココカラの経営統合の“狙い”はどこにあるのか。

 両社の経営統合の目的は、大きく分けて“収益性の向上”、業界1位に返り咲くことによる“アナウンスメント効果”、そして業界で生き残るための“規模拡大”の3点が挙げられるという。

「まず、“収益性の向上”とは何を意味するかというと、商品を仕入れるバイイング・パワー(購買力)の増強による収益力の強化はもちろん、物流及び人的機能や広告宣伝の効率化による費用削減といった、さまざまな相乗効果です。これが両社にとって、最も大きなメリットになるといえるでしょう」(花木氏、以下同)

 続いて、“アナウンスメント効果”。

「マツキヨは今でこそ業界5位に甘んじていますが、長らく業界トップを走り続けてきた企業です。そんなマツキヨがココカラとの経営統合によって息を吹き返すことができれば、それは消費者に対するアピールとなり、マツキヨブランドの訴求効果や集客効果、さらには採用効果にまで及ぶ絶大な影響があると考えられます」(花木氏)

 そして最後の“規模拡大”については、シンプルな話だという。

「マツキヨにしてもココカラにしても、今後生き残っていくにはこの選択肢しかなかったということなんです。現在のドラッグストア業界は中堅・大手の売上上位10~20社で市場の約9割を占める状態ですが、これからはコンビニ業界のように、ドラッグストア業界も大手3、4社に絞られていくでしょう。マツキヨとココカラの組み合わせのような大型M&Aは、同業界内でそう何回も行えるものではないですから、どこがどの競合他社と組んで取り込むか、取り込まれるかといった“取るか・取られるか”が生命線になってくるというわけです」(花木氏)

 マツキヨとココカラの経営統合は、ドラッグストア業界がコンビニ業界のように大手数社に絞られる時代へ向かう過渡期の流れのひとつであり、今後も同規模の経営統合が起こりうるということか。

 では、今回のマツキヨとココカラの経営統合によって、消費者の生活にはどのような変化がもたらされるのだろうか。

 早々に変化が起こるとは考えにくいのが「正直なところ」だというが、長い目で見れば、消費者にとってもメリットが生まれてくる可能性は十分にある。

「想定される一番大きな変化は、PBにおける新商品開発の活性化や、レパートリーの拡充ではないでしょうか。経営統合が上手くいき、商品の販売力が倍になるということは、マツキヨがココカラの顧客データを入手可能になるということでもあります。
 例えば、ココカラは業界のなかでも化粧品に強い会社ですが、マツキヨはココカラの顧客データを分析することにより、化粧品以外を目当てにココカラに来店する層に向けても、新たなPB商品を開発できるようになるのです。
 また、商品を仕入れるうえでの交渉力が上がるというのも経営統合の効果ですから、商品のさらなる低価格化や、両社の店舗間における商品価格の共通化が進むとも予想されます。

 ただし、両社が競合している地域では、効率化のために店舗の統廃合が進むでしょう。つまり、立地によっては自宅の最寄りのドラッグストアが閉店してしまい、利便性が悪化するというデメリットも想定できるわけです」(花木氏)

ドラッグストアとコンビニの戦いが始まった

 先述したように、今回の経営統合はマツキヨ・ココカラだけの問題ではなく、ドラッグストア業界全体の大再編の始まりに過ぎないという。

「経営トップのオーナーが引退しかけており、後継者がいないというドラッグストアは大手のなかでも何社かあります。そういったところの大型合併による寡占化が進むでしょう。今回の大型M&Aによって、各社が規模の拡大を図る“陣取り合戦”の火ぶたが切って落とされた、という印象が強いです。

 また、今回の経営統合でマツキヨやココカラなどの強み・弱みがさまざまなところで取り沙汰されることで、各社ともに何をグループの特色とし、どの分野に軸足を置くのかという差別化が大きなポイントになってくるとも考えられます。

 そういう意味で、マツキヨはコンビニ業界でいう『セブン-イレブン』のように、イチ早く商品力を高めることで売上利益を伸ばし、その利益で商品開発に投資するという好循環が生まれてくれば、より強い会社に成長すると思われます。そういった動きの中で、『ウエルシア』や『ツルハドラッグ』、『スギ薬局』あたりも、さらなる特色を打ち出すべく方向性を変えていく可能性は大いにあるでしょう」(花木氏)

 このドラッグストア業界の再編は、他の業界との関わり方にも影響を及ぼしていくと予想される。

「スーパー・コンビニ業界への影響と、調剤薬局業界への影響が考えられます。ただ、既にドラッグストアは食品を15%程度の粗利率で販売することで集客に成功しているうえ、今回の経営統合では粗利率を更に下げるわけでも、店舗数を急増させるわけでもないため、スーパー・コンビニ業界に大きな影響があるとは考えられません。それでも、ウエルシアのようなイオン系列のドラッグストアの動向は気になるところですね。

 その一方で、調剤分野に関しては、医療費削減の国策という追い風が吹いています。調剤を早くから始めていたココカラがマツキヨと組むことで、統合後は調剤分野だけでも1000億円程度の売り上げが見込めるでしょう。これは、調剤薬局業界でも10位内に入る規模です。ですからドラッグストア業界で生き残っていくためには、調剤分野をさらに強化していくのは間違いないでしょう」(花木氏)

 また、競争の激化によって、ドラッグストアの在り方自体に変化が起きる可能性も高いとのことだ。

「最終的にドラッグストアが生き残る道には、調剤分野や介護分野といった医療サービスの拡充が必要になってきます。

 医薬品業界においても、インターネットで品質のよい商品を安価に購入することが可能になりつつあるので、実店舗はいつでもどこでも買える“モノ”だけに依存せず、医療や介護などの高齢化社会を支える“コト”(商品販売以外のサービス)も発信できるような、“地域の拠点”を目指す動きが起きます。
 しかし、その“地域の拠点”化は、さまざまなサービスを取り入れているコンビニ業界も目指しているポジション。ですからこの先10年ほどで、その拠点がドラッグストアになるのか、コンビニになるのか、あるいは調剤薬局になるのかといった業界の構図が、ほぼ見えてくるでしょう」(花木氏)

 これからの10年間で、ドラッグストアとコンビニの“地域の拠点”争いも進んでいくということか。今回の経営統合も、長い目で見れば我々消費者の生活にとっても無関係なことではない。マツキヨとココカラ、両者の協議の行方が注目されるところだ。

(文=佐久間翔大/A4studio)

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