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チュートリアル徳井の謝罪会見が「最悪」になってしまった理由

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写真:アフロ

 さてさて、なんとも言い難いニュースが飛び込んできた。チュートリアル徳井君の税金の申告漏れ・所得隠しなどの納税に関する大事件。

 ただただ、悪いのは国民の義務を怠った徳井君であり、発覚後に納付を済ませたからといって過去がチャラになるわけもない。業界関係者だけではなく、多くのお客様に迷惑をかけることになったことは事実だ。そして、今は活動停止の謹慎の身だ。

 取り返しのつかない事態を招いたのは彼の責任である。だからボクは彼を擁護することは一切しない。ただ、ここで一緒にするのは申し訳ないが、この6年間にわたって毎月、山形刑務所で改善教育の担当者をしてきた立場として言わせてもらえば、人生はやり直しがきくということだ。

 事件事故、不祥事を起こしてしまったのなら自分の失敗に気づき、それを反省し、再発防止を宣することだ。そして、周囲はそれを受け入れ、応援する側に回ってあげればいいと本気で思っている。

「誰が、誰に、何について」詫びているのか

 この事件、まずは10月23日に第一報が流れた。東京国税局に3年分、1億円を超える法人所得が無申告であることなどを指摘されていたことをFNNが独自ニュースとして報じた。

 そして、翌日10月24日深夜に記者会見が開かれた。その日、チュートリアルは大阪でテレビ番組の収録があったため、番組収録終了後、会見場は吉本興業大阪本社会議室となった。

 これは業界の都合といえばそれまでだが、メディアが東京一極集中する中、会見が深夜で大阪となると、テレビは系列局があり、新聞社は大阪にも本社があるので対応できるものの、週刊誌などは段取りがつかないケースが出てくる。

 ホットなネタなのに自分たちだけが取材がしにくい状況になってしまうと、悔し紛れにペンに(キーボードに)余計な力が入ってしまうものだ。それは、その後発売される誌面にも必ず表れるのが私の経験である。

 そこで24日に開かれた会見であるが、謝罪に関して「スピーディーに本人が対応する」という意味では正解だ。しかし、「現状の完全把握」という最低条件が守られないままでの開催となったことで最悪の会見となってしまった。

 謝罪というものは、「誰が、誰に、何について」詫びているのかが明確でないと成立しない。ところがあの会見、本人の怠慢さ、とんでもないルーズさを語っただけで、「自分が自分のダメさに驚いております」のようにしか見えず、しでかした事態の大きさを理解できていない様子だった。

 それはそうだろう。会見で記者からの「(7年間より前の)そこまではずっと1年ごとに決算していたのか?」の質問に「そうですね」と答え、「以前はしっかりと申告していたのか?」という質問にも「そうですね」と答えていたが、それが「ウソ」であったからだ。6月に起きた雨上がり決死隊の宮迫君の「闇営業」問題の際も、「ギャラはもらっていない」というウソから一気に問題が炎上したことと同様である。

  会見後、ウソの発覚だけではなく、銀行口座の差し押さえや社会保険未加入という新たな事実も出てきた。「事実の完全把握」があって初めて、謝罪も再発防止策も語れるものなのだ。それが不十分なままの記者会見開催は、大事故が起こる予兆でもあった。

  会見の2日後には吉本興業からの謹慎が発表され、CM差し替えやテレビ番組の再編集やオンエアの中止、イベント参加中止などなどの処理が毎日のように起こり、多くの人にいらぬ作業を与えることになってしまった。

漫才師・役者としても残念な言葉遣い

 24日深夜の会見が急ぎすぎたということは明白である。本人の記憶の曖昧さに加えて、関係者が事実を聞き取る時間もないままの会見突入では結果は見えていた。会見終了後にスタッフが取材陣に対して「数字のことなど本人の話したことが少し違っておりますので改めます」というコメントもいただけない。

 メディア業界では「名数」と呼ぶが、正確な名前や数字を伝えることは極めて重要なことだ。ここが間違っていたり曖昧だったりすると、謝罪や説明の信頼度が下がる。のんびりしている暇はなかっただろうが、もう少し時間をかけて、現状を完全に把握し会見に臨むべきだし、可能なら会社の担当者も同席して、芸人をフォローし、同時に謝罪をすることも必要だったといえる。

 「納税している国民の皆さんに多大な迷惑をおかけし、多大な不快感を与えてしまった」とか「納税のことですので悪意もくそもない」という言葉は、もう少し考えて使ってほしかった。揚げ足取りで申し訳ないが、漫才師としての話術やセンスもいいし、役者としての顔もある人物だけに残念な言葉使いだ。

 本人は会見の中で今後のテレビ出演などについて、次のように話した。

「僕としては、僕はこの仕事しかしてませんので、できればお仕事を続けさせてもらえたらいいなあと思いますが、僕の仕事は劇場へ見に来てくれるお客さん、テレビやラジオで見聞きしてくれるお客さんがいないとできない仕事なので、その方々が『徳井が出ていると気分が悪い、お前はもう仕事をしなくていい』という判断をされたなら、仕事ができなくなっても致し方ないと思っています。お客様もそうですし、テレビ局やスポンサーの方とか、その人たちにも必要ないと言われれば致し方ないと思います」

 ただボクは誰しも人生はやり直しがきくと信じているので、辞めるなどと言わず、必ず帰ってきてほしいと思っている。

多く働き、多く稼ぎ、多く納税することこそが人々のためになる

 ところで、吉本興業の管理責任を問う記事もあったが、ここは指導責任のあるなしを問題にしても意味はない。今後、芸人が個人事務所を法人化するときの注意や指導を、積極的にやってあげればいいだけである。

 以前、ダウンタウンの松本君が「いつから会社がそんなに偉くなったのか? 芸人ファーストで行こう!」と諭したように、会社と芸人やタレントとのコミュニケーションが良好にさえなればいいのだ。今が悪いとは思えない。ただ足りないところがあるのかもしれない。

 徳井君の一件、昨年末に修正申告の手続きを終えていたにもかかわらず、会社には一切報告していなかったと聞く。ちなみに私が吉本の社員だった頃、個人事務所を法人化している芸人には「家族を役員にしても構わないけど、労働の実態がないときなど、無効になることもあるので注意するように」などと喚起して回っていたものだ。

 徳井君には国民としての義務を果たすことをしっかり肝に銘じて、舞台でコンビの漫才からでいいので一日でも早い復帰を願いたい。もちろん、お客様あっての仕事なので批判もあるだろうし、見たくもない人もおられるだろう。ここは本人がしっかり反省をして、今後は納税の義務も正しく果たしてもらえればいいことだ。多く働き、多く稼ぎ、多く納税することこそが人々のためになるわけだから。ぜひみなさんからの大いなる叱責と大いなる声援を送ってやってほしい。

 最後になるが、ボクと徳井君の思い出といえば、彼は忘れたいかもしれないが、2003年に製作した映画『ガキンチョ★ROCK』(前田哲監督作品)にアイドル歌手役として出演してもらったことだ。この作品では、キングコングとロザンの4人が売れないロックバンドを組んでおり、そこに売れない歌手・玉出ゴローがそのバンドの曲をパクって歌い、ヒットチャートに躍り出るというものだった。映画の中では曲をパクるという大胆さの反面、臆病で小心なところがあり、ボーカル・ギター担当のコウメイ(西野亮廣)との出会いで人生を一新するという役どころだった。

 もう16年ほど前の作品になるが、徳井君にはいい仲間がいる、吉本興業のスタッフもいる。ぜひまた笑わせてほしい。笑わせること、楽しませること、それがゴールだ。そして、ゴールに辿り着くために必要なことが、反省と再発防止と「謝罪」という道具なのだ。 

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