レペゼン地球・DJ社長の「言い訳」を信じさせるハフポストへの違和感

社会 2019.10.29 21:45

「炎上→イメージ向上」が常套手段

 事件後のレペゼン地球の動きを振り返ってみよう。

 7月20日にセクハラ・パワハラ告発が、所属事務所の新人・ジャスミンゆま氏の“新曲プロモーション”であったことをネタバラシしたのち、炎上。21日には先述の『O2MEN』、23日には『こうせい ざ たぴおか』を発表(ここまではおそらく、炎上前に仕込んでいたものだと推測される)。

 22日、「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系列)のDJ社長が出演している放送回が差し替えになり、7月26日には、メットライフドームの中止が発表される。大舞台への道が閉ざされた形となる。

 しかしレペゼン地球は、さらに煽るかのように、8月1日には道路交通法やパワハラなどで“炎上”したYouTuberを集めて「炎上万博~もちろん俺らは更生するで?コブシで~」を開催することを発表。炎上した彼らが、拳で殴りあうことで更生するという趣旨の格闘技イベントだ。……といっても、ほとんどがまったく格闘技の訓練をつんでいない素人同士ばかりの試合となってしまい、出場者のひとり、MEGWINは鼻を骨折してしまう事態となった。

 ご覧の通り、この夏のレペゼン地球を振り返ってみると、“炎上”に関して、あまり反省したそぶりはなく、それをさらにコンテンツにしている状態である。なお、つい先日まで行われていた彼らのライブツアーのタイトルは「更生バンザイタピオカツアー」である(なお、レペゼン地球は“更生”というワードをやたらおもちゃにする集団であることは、ファンの間でも周知の事実だ)。このことをハフポストや白河氏が知らない“無知”な状態で、果たして“対話”が可能なのだろうか(なお知っていてあのような記事に仕立てたのであれば、それは悪質だと思う)。

 また、9月1日にアップロードされたライブ動画で、DJ社長はこう語っている。

「(ドームが中止になったことに対して、ファンに対して)本当に申し訳ない、マジで悔しい。俺は『YSP』歌ったときに、YSPされた女の気持ちは考えたことはなかった。今回も、パワハラされた女の気持ちは考えたことがないけど。あの曲聞いた? “パワハラはダメ”って言ってるだろ!」

 “知らない”ことを強調するのは、ハフポストの記事と同じだが、むしろこちらでは“そんなの関係ねえ”と言わんばかりの居直りテンションだ。

「俺らのことは馬鹿にしてもいいけど、ファンのことまでバカにしやがった! 世間は! 絶対に見返してやるから! 好きなものは好き! お前らは胸はれよ! (中略)何回炎上してもついてきて! 絶対にどこかでドームやるから!」

 このように、微妙に論点をずらして、あの騒動の後に残ったファンの選民意識をくすぐり、心を熱くさせるMCは一級品だ(白河氏も指摘していたように、この件の問題点は、プロモーションのために告発を茶化したことと、セカンドレイプの助長にある)。そう、彼は人の心をいい感じにつかむのが、とてもとても上手なのだ。だからこそ怖い。

 「ハフポスト」の取材は9月17日に行われたという。そこで彼は本当に考えが変わったのかもしれない。そうだといいのだけど(これは心からそう思う)。けれど、あの記事でも紹介されている、「【好きなことで、生きていく】『レペゼン地球-DJ社長-』」動画の話をしたい。

 この動画は、悪名高い炎上集団だったレペゼン地球が、「社長って本当は熱い人」だと、ファンを増やした動画でもある。数々の炎上→知名度アップ→別の動画でイメージ向上。この流れ、今回の記事の反応とよく似ていないだろうか。楽曲においてもオラオラしたチャラ男的なイメージと、エモーショナルなイメージを使い分けているではないか。

DJ社長をみくびってはいけない

 現在、「レペゼン地球」で検索すると、この「ハフポスト」の記事が上位に表示される(最新ニュース記事ということもあるが)。批判記事や炎上報道ではない、「ハフポスト」の記事が上位となっただけでも、今後のレペゼン地球にとって大きなメリットになるだろう。

 これは推測だが、この記事である種の“禊”を終えたとして、再び地上波テレビ番組などへの出演を考えているのではないだろうか? 水泡に帰した悲願のドームを達成するために。 この“更生”は、そんな次の展開への布石のように見えてしまう。「ハフポスト」は朝日新聞社との合弁事業であり、出演する予定だった『しくじり先生』はテレビ朝日系列の番組である。どちらも大きな組織であり、ここを一直線につなぐことは難しいかもしれないが……。

 この1年足らずで、レペゼン地球とDJ社長は、DMM.comグループ創業者の亀山敬司氏と「一億円キャンペーン」をブチ上げ、メディアアーティストの落合陽一氏とSXSW(アメリカで開催される最先端テクノロジーの祭典)にてトークセッションに参加、ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏ともYouTube動画にて対談している。この面々が、単なる“無知なバカ”を相手にするだろうか。

 そしてつい先日、“元青汁王子”として知られる三崎優太氏のTwitterでは、N国党の立花孝志氏との3ショットが公開されていたことも記憶にとどめておきたい。

 また、10月28日に記事の構成にクレジットされている坂之上洋子氏が、本件に関してのブログを公開した。

 呆れるほどに “ネット上ではイメージがワルイけど、会えばいい人”というブランディングである。なお、「誰にも言っていない」というのはかなり信憑性にかける発言である。なぜなら、人気美容系YouTuberのよききが、事前にレペゼン地球メンバーから聞いていて、この結末を知っていたとツイートし、総叩きにあって削除しているのだ。メンバーがこの程度の口の軽さであるなら、リーダーであるDJ社長が他にも口外していることは想像にかたくない。彼が嘘をついているかもしれないと糾弾したいのではない。この程度の人心掌握術はお手の物、と考えたほうがいいと言いたいのだ。

 断絶されてしまった島宇宙同士をつなぐ“対話”は大事だ。しかしながら、あの記事を絶賛していた人たちは、ひとつでも、たったひとつでもレペゼン地球の動画や楽曲の表現を見たのだろうか? DJ社長のセクハラ問題への“無知”が取り沙汰されたが(個人的にはあれは保身と、“ソッチのほうが受ける”という判断で、知らないふりをしていると思うのだが)、無知に甘んじているのは、本当に“彼ら”だけなのだろうか。 そして、ここまで読んでくれたあなたは、あの記事をよりよい社会へむかうための“対話”と思うのだろうか。

 私だって、そうあって欲しい。だけど、レペゼン地球を、DJ社長を見くびってはいけない。そうすることが、本当の“対話”への第一歩だと思うのだ。

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藤谷千明

2019.10.29 21:45

1981年生まれ。自衛官、書店員、DTPデザイナーなどの職を節操なく転々として、フリーランスのライターに。趣味と実益を兼ねたサブカルチャーの領域での仕事が多い。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)、「想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本」(サイゾー)など。

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