健康

血液クレンジングは人体実験である。その罪とリスクとは?

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「Getty Images」より

 「血液クレンジング」という美容医療が話題になった。「血液クレンジング」とは、血液を採取し、医療用オゾンを混ぜた後、体内に戻すという自由診療だ。疲労回復、冷え性改善、アンチエイジングなどの効果を謳っている。

 この「血液クレンジング」は数年前から、はあちゅう、元AKB48の高橋みなみ、市川海老蔵、GENKING、田中律子などなど、芸能人がこぞって受けたことを報告していた。秋元康と見城徹が連れ立って「血液クレンジング」で心身を癒やしているなどという雑誌記事もあった。

 しかし10月、Twitterで「血液クレンジング」の効果に疑問を呈する声が上がると、あっというまにその“胡散臭さ”が広まり、医療関係者が次々と「効果はない」と証言。それを受け、SNSやブログで「血液クレンジング」を紹介していた芸能人は、記事を削除する、「受けたが勧めてはいない」と弁解するなどの対応に追われることとなった。

 なぜ効果のないものを芸能人たちは「効果がある」と宣伝していたのか。効果がないにもかかわらず多くの美容クリニックが「血液クレンジング」をメニューにしているのか。「血液クレンジング」に限らず、似たようなインチキ美容医療はいくつも存在し、蔓延しているのではないか。

 東京都目黒区にある五本木クリニックの院長・桑満おさむ医師は、血液クレンジングについて「効果が証明されていないものに、これほどのリスク、時間、お金をかける必要はない」と断言する。

桑満 おさむ・五本木クリニック院長
1986年に横浜市立大学医学部を卒業し、1988年に横浜市立大学医学部病院 泌尿器科で勤務する。その後、1997年2月に五本木クリニックを開院。資格・所属学会:目黒区医師会がん検診委員、目黒区医師会地域医療公衆衛生委員

「血液クレンジング」は人体実験である

 「血液クレンジング」を実施しているクリニックは疲労回復、冷え性改善、アンチエイジングなどの効果を謳っているが、本当にそういった効果はあるのだろうか。

桑満:血液に医療用のオゾンを注入することで、何かしらの効果があるという研究結果もあります。しかし、それはすべて動物実験の結果であり、動物でうまくいったからといって、人間でもうまくいくとは限りません。

標準治療(医学的根拠に基づいた観点で最良の治療)の場合、何度も臨床試験を行い、効果と副作用などのリスクを追求していますが、自由診療である血液クレンジングは、歴史は長いものの、そういった検証がされておらず、効果も証明されていません。いわば、人体実験のようなものです。

 「血液クレンジングによって副作用が出た患者はいない」と宣言するクリニックもあるが、本当に副作用などのリスクはないと言えるのか。そもそも医療行為について「副作用はない」と宣言すること自体がおかしいと桑満氏は言う。

桑満:医療には必ず副作用があります。たとえば、熱を下げる薬には、熱を下げすぎてしまうかもしれないという副作用があります。また、“水”にさえ副作用はあります。水を飲みすぎてしまうと、血中のナトリウムが薄くなり「水中毒」といって、めまいや頭痛を引き起こすことがあるのです。

それにも関わらず「血液クレンジングによる副作用ゼロ」とはおかしなことです。標準治療によって副作用が発生した場合、クリニックは必ず申し出るような仕組みになっていますが、自由診療はそういった決まりがありません。血液クレンジングの場合、「効果がなかった」「気分が悪くなった」といったものを副作用ではなく“クレーム”として、クリニック内で完結させてしまっている可能性があります。

 血液クレンジングのリスクとして具体的に考えられるものとしては、感染症などがある。

桑満:まずは感染症です。血液クレンジングをやったというネットユーザーがUPしている治療中の画像をみる限り、医学的に清潔な操作がされているようには見えません。また、血液クレンジングでは「ヘパリン」という血液が固まらないようにする薬を投与しますが、ヘパリンに対するアナフィラキシーショックが出たと「日本酸化治療医学会」が注意喚起しています。海外では高カリウム血症 ・ 心筋梗塞 などが報告されています。

インスタ映えを利用した「血液クレンジング」

 桑満氏は、「血液クレンジング」は“インスタ映え”をうまく利用しているとも指摘する。

桑満:人体には、動脈の血と動脈の血が流れています。酸素が豊富な動脈の血は鮮明な赤色ですが、酸素が使われた後の静脈の血は、誰でも黒っぽい色をしています。そして、自分の血を見るときは、ほとんどが静脈の血です。血液クレンジングでは、静脈の血にオゾンを入れることで動脈の血のような赤色に変えています。これは、黒かった血が血液クレンジングによって「キレイになった」と錯覚する要因であり、ビフォーアフターを写真で分かりやすく比較することもできます。その点で、血液クレンジングは、“インスタ映え”をうまく利用しているなと感じます。

 今回の血液クレンジングをはじめ、芸能人が特定の医療をSNSで紹介することは少なくないが、ネットユーザーはその情報を鵜呑みにするのではなく、立ち止まって自分の頭で考える必要がある。

桑満:すべての芸能人の方が医学リテラシーが高いわけではありませんよね。当然、SNSで紹介されている医療が、必ずしも効果のあるものとは限りません。事実、血液クレンジングの場合は、疲労回復、冷え性改善、アンチエイジングなどの効果は期待できず、さらに副作用などのリスクがついてきます。効果が証明されていないものに、これほどのリスク、時間、お金をかける必要はまったくありません。芸能人の方には、ご自身の影響力を自覚したうえで、情報を発信してほしいと思います。

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