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性暴力被害者に対応するスタッフは時給1000円…ワンストップ支援センターには使われない「税金」

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Getty Imagesより

 性暴力・性被害者支援のための機関「ワンストップ支援センター」の運営費が圧倒的に足りていない。10月27日付しんぶん赤旗が報じたところによると、国が財政支援するはずだった交付金が8000万円も削減されているというのだ。

 ワンストップ支援センターは各都道府県の事業だが、国がその運営費の半分を補助することになっている。

 しかし、申請された交付金2億5238万円は予算額の1億7280万円を越えていたため、予算に合わせるために交付金が削減されたのだという。

ワンストップ支援センターの役割

 ワンストップ支援センターとは、産婦人科医療、カウンセリングなどの心理的な支援、捜査のための証拠採取、法的な支援など、性暴力被害者にとって必要な相談窓口を1カ所にまとめたもの。

 これまで性被害に遭い心身ともに傷ついた状態で、警察、医療機関など関係各所を被害者自らまわる必要があった。ワンストップ支援センターは、それらが連携した支援を提供することで、被害者の負担を軽減できる重要な機関だ。

 ワンストップ支援センターの数や、警察との連携などにはまだまだ課題が残されている。

 2017年の刑法性犯罪規定の改正の際の衆議院付帯決議では<性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であるという性犯罪による被害の特性を踏まえ、被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため、第三次犯罪被害者等基本計画に従い、ワンストップ支援センターの整備を推進すること>という文言がつけられていた。

 なぜ、整備推進を求めながら、それに必要な予算が充てられないのか。

数が少なく、営業時間も短いワンストップ支援センター

 そもそも、2012年に内閣府が作成した『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター解説・運営の手引』にある「各都道府県に最低1カ所」とする成果目標はすでに達しているものの、まだまだ足りない。

 都道府県に1つしかない状況では、被害者の居場所が“最寄りの”ワンストップ支援センターから遠い場合、その足でセンターに向かうことが大きな負担になるケースも当然出てくる。それではせっかくのワンストップ支援の意味がなくなってしまう。

 2010年に出された国連の「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」では、女性20万人につき1カ所のワンストップ支援センターを設立すべきとしている。女性の人口がおよそ700万人の東京の場合、35カ所のワンストップセンターが必要ということになる。

 施設の営業時間も問題だ。東京、神奈川、大阪、福岡などの大都市圏では24時間365日対応のワンストップ支援センターがあるが、地方では17時ごろには窓口が締まり、週末や祝日は動かないものも多い。

 警視庁の発表によると、都内で発生した強制性交等は、全体の約51%のケースが午前0時から午前7時までの間に発生しているという。深夜早朝の対応が行われない状況では、ワンストップ支援センターとしての機能を十分に果たせない。

 また、ワンストップセンター自体の認知度の問題もある。

 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ理事・事務局長の伊藤和子弁護士は、著書『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』(ディスカバー・トゥエンティワン)のなかで、伊藤詩織氏が被害を受けた後にワンストップ支援センターを利用しなかったため、病院やNPOをたらい回しにされたと証言していることを受け、次のように提言している。

<ワンストップ支援センターの知名度は若い女性の間でそんなに高くないはずです。「借金の相談はこちらへ」という法律事務所のように大々的なテレビコマーシャルで宣伝されているわけでもありません。(中略)今、ワンストップ支援センターはようやく全国各都道府県にいきわたりましたが、認知度の向上についても質の向上という点でも大きな課題を抱えています。(中略)広報については、政府広報など、政府にはもっともっとできることがあるはずではないでしょうか>

 国の支援によって改善しなければならない点はたくさんある。

高度な専門性を有するスタッフの時給が「1000円」でいいのか

 しんぶん赤旗の報道によれば、運営費のほとんどは被害者の支援を担当するスタッフの人件費であるという。

 しかし、その待遇は、性被害に遭った人の一生を左右する重要な責務を追うにはあまりにも悪い。

 3月12日の参院内閣委員会では、日本共産党の田村智子議員から発せられた交付金の積算根拠に関する質問に対し、渡邉清・内閣府大臣官房審議官がこのように回答している。

<平成31年度予算案におきまして、ワンストップ支援センターの相談員の人件費。これは24時間化365日間化をしていないセンターも含めまして共通でございますが、ベースとして、平日8時間、2名分。単価は1時間あたり、申し訳ないながら1000円という積算をしております>

 ワンストップ支援センターにおける相談員は、誰でもできるアルバイトなのだろうか? 被害者と信頼関係を構築できること、性暴力被害者に対してなにが二次被害になり得るかを把握していること、医療・カウンセリング・法律などに関する知識など、求められているものは高度かつ専門的な能力であるにもかかわらず、人件費に割く予算があまりに少なすぎる。

 この点を質問された男女共同参画担当大臣(当時)の片山さつき氏の口から発せられた回答はこうだ。

<この財政事情のなかでやっていきますと、やはりある意味、いろいろ経験があった方が、まあ、半ばボランティア的にって言うんですか、前職の経験を活かしてですね、というようなことに依拠している部分があるんですけれども>

 もちろん、現状維持のままで良いとしているわけではない。片山氏は委員会で、<もちろん、それだけでは限界が来るというのはわかっておりますので、今年度の部分だけではご期待に添えない部分も含めてですね、きっちりこのワンストップ支援センターの機能および体制ということについて、絶え間ない検討を重ねて参りたいと思っております>とも答弁していた。

 しかし“限界が来る”とわかっていながら、予算内におさめるために交付金を申請された額から8000万円も削減。期待に添えないどころではない。

 相談員の増員および待遇改善、ワンストップ支援センターの増設、すべてのセンターの24時間365日化、ワンストップ支援センターの周知徹底など、国が支援して進めなければならないことはあまりにも多い。

 ワンストップ支援センターは、男女問わず国民の安全な生活を守るために必要なものである。税金を投入すべき場所は、本来こういうところなのではないだろうか。ここに十分な予算を充てない理由がさっぱりわからない。

相談機関

全国性暴力被害者支援相談機関リンク集

性暴力救援センター・東京(SARC東京)

24時間365日受付の電話相談
性暴力救援ダイヤルNaNa 03-5607-0799

性暴力救援センター大阪(SACHICO)

24時間ホットライン072-330-0799

東京・強姦救援センター

03-3207-3692

NPO法人 レイプクライシスセンターTSUBOMI(ツボミ)

03-5577-4042

NPO法人 ハーティ仙台

022-274-1885

特定非営利活動法人 しあわせなみだ

「性暴力ゼロ」を目指して活動する団体です。相談受付は準備中ですが、性暴力に合った時どのように対処すればよいかなどHPに記載があります。

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