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電気が止まる、先延ばしグセ…「想像を絶するルーズさ」で困る“普通の人”たちが、助けを求める方法

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「Getty Images」より

 計1億1800万円の申告漏れと2000万円の所得隠し、さらに社会保険未加入だったことが発覚して、芸能活動を停止中のチュートリアルの徳井義実。謝罪会見では「想像を絶するルーズさ」が原因だったと説明していたが、納税以外の面でも「ルーズさ」が次々と明らかになっていった。

 たとえば公共料金の支払い忘れ。2012年8月、徳井はTwitterで<気付けばまた料金払い忘れてて、ガスが止まっている。今日は水風呂だ>と報告していた。この過去数年間のツイートが発掘され、複数回にわたって電気やガス、水道などが止められていたことが分かっている。銀行口座から自動引き落としになるよう手続きすればいいのだが、その手続きができないのも「ルーズさ」ゆえだ。

 さらに2018年の『ビーバップ!ハイヒール』(ABCテレビ)に出演した際にも徳井は若い頃にレンタルDVDを延滞することが多く、最高で10数万円もの延滞金を払ったことがあると告白していた。また、今年4月のAbemaTV『DTテレビ』では、自宅に帰ると財布の小銭を出して引き出しに入れるため、「引き出しふたつがパンパン」になっていることも語っていた。

 こうした徳井の「想像を絶するルーズさ」エピソードに、ネット上では「徳井はADHD(発達障害)なのでは?」という無責任な憶測も広まった。同時に、徳井の「ルーズさ」に対して「他人事ではない」「共感する」という声も多く見られる。

「なんでも先延ばしにする気持ちはよく分かる」
「私も電気とガス止められたことがあるからバカにできない」
「自分もいつかこうなりそう」
「先延ばしグセって生きづらいよね」

 このように、自らの「想像を超えるルーズさ」のために生きづらさを感じている人たちはどうしたらいいのか。NPO法人ほっとプラスや反貧困ネットワーク埼玉の代表で、ソーシャルワーカー(社会福祉士)の藤田孝典さんに聞いた。

藤田 孝典(ふじた・たかのり)
首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(2012年)。著書に『中高年ひきこもり』(扶桑社2019)『貧困クライシス』(毎日新聞出版 2017)『続・下流老人』『下流老人』(朝日新聞出版 2015・2016)『貧困世代』(講談社 2016)など多数。

自分の「だらしなさ」のせいでも、困っているなら相談していい

――ネットでは、徳井さんの「想像を超えるルーズさ」に共感する人が多くいました。藤田さんはこうした「ルーズさ」から生活が困難になってしまった人たちの相談を受けることはありますか?

藤田さん:公共料金が支払えずにインフラが止まってしまったり、家賃滞納をしてしまったりという相談は、基本的に貧困に由来することが多いです。ただし、「ルーズさ」によって私生活に影響をきたす例としては他にも、部屋を片付けられない、体調に不調があっても病院を受診できない、友人や知人との約束を守ることができずに他人に迷惑をかけてしまうなど、私生活上の問題を抱えている人は多いでしょう。

 貧困状態にあったり、病気の診断を受けているわけではなく、いわゆる“普通”の社会生活を送っている人も多いので、問題が表面化しづらいのです。

――私にも同じような「ルーズさ」があります。できれば、大事になる前に何とかしたいのですが……。

藤田:いわゆる“普通”の人への支援制度は日本にはありませんので、自力でカウンセリングに行ったり、ソーシャルワーカーに相談したりするしかないのが現状です。ただし、生活上で困っていることがある、たとえば振り込みができずにしょっちゅう電気やガスを止めてしまうなど、やろうと思っているのに繰り返し失敗しまう場合には、各自治体が行っているこころの健康相談ダイヤルなどの行政サービスに早めに相談してみてください。

――自分の「だらしなさ」のせいで困っているだけなのに、相談しても大丈夫なんですか?

藤田:なんでも気軽に相談できるというのが大切なので、門前払いを受けることはありませんよ。個人的には「ルーズ」なせいで出来ないことは、出来なくていいと思っています。誰にでも出来ないことはあるものですし、そのために福祉がありますから。

 もし何らかの問題を抱えている可能性があれば、相談室内で専門家の判断を仰いで支援につなげていくこともできます。そのうえで、NPOやボランティアなど地域にはいろんな団体がいるので、助けてくれる人は周りにたくさんいることを知ってほしいです。

 ただし、まずは家族や友人などの身近な人のサポートを受けられる状況にあることが理想的ではあります。福祉が行う支援も、対象者に「家賃の支払い大丈夫?」と声をかけたり、一緒に自宅の掃除をしたりすることなので、やることはご家族の方とあまり変わらないんですね。

――周りの方からは、具体的にどんなサポートをしてもらえばいいですか? あと、「こいつだらしないヤツだな」と思われないかちょっと不安です。

藤田:たとえばインフラが止まりがちなのであれば、家族や友人から「月末の振込日が近くなったらLINEしてもらう」「公共料金の口座引き落とし手続きを手伝ってもらう」といったサポートをしてもらうとか。こういったところから改善できれば理想的ですね。

 困っていることを助けてもらうことは恥ずかしいことではありません。福祉業界では、災害時にボランティアなどの援助を受けるために自分から声を出して助けを求める能力のことを「受援力」(じゅえんりょく)と呼んでいます。困っているときに「助けて」と声に出して周囲を頼ることのできる「受援力」は、私生活においても重要になってくると思います。

 もちろん、自分のことはできるだけ自分で出来た方がよいです。なので、自分は誰かに助けてもらわないと“普通”の暮らしが出来ないことを自覚し、そして出来ないことは何なのかを意識することまでは、自力で行ってほしい。これは、福祉業界では「自己覚知」(自分を知る)と呼ばれる作業ですが、自分の困っていることを言語化できなければ、周囲に助けを求めることも難しいので、とても大切なことなんです。徳井さんについていえば、今回の失敗によって、自分の「想像を絶するルーズさ」を言語化したことが「受援力」につながっていけばいいですね。

――もし「ルーズさ」のせいで困っている人が周りにいる場合はどうすればいいですか?

藤田:「あいつはだらしないヤツだ」で終わらせるのではなく、自分のできる範囲でいいですから、細やかな声かけをしてほしいです。生活状況を聞いてもらうことも、本人にとっては「自己覚知」につながります。

 失敗した人を徹底的に叩いて「自己責任だ」という側面もありますが、一度失敗した人がそれを繰り返さないようにサポートしていく責任は、周囲や社会の側にもあるんです。

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