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11歳少女に母性? 『チコちゃんに叱られる!』こそボーっとしてるんじゃないか

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NHK『チコちゃんに叱られる!』公式サイトより

 NHKの教養バラエティ番組『チコちゃんに叱られる!』のキャラクターで永遠の5歳女児という設定の「チコちゃん」が、スポーツ庁の女性スポーツ促進キャンペーンのアンバサダーに就任した。

 スポーツ庁によれば、10代から40代の女性は同年代の男性に比べてスポーツに取り組む割合が低いという調査結果があるという。10月30日のアンバサダー任命式において、鈴木大地スポーツ庁長官は「チコちゃんの例の決め台詞で、分かってはいるんですけど、ついついスポーツや運動に対して腰が重い女性に対して、バシッと言ってもらいたいと思っています」と発言。チコちゃんはお馴染みの「ボーっと生きてんじゃねーよ!」という決め台詞を披露し、女性のスポーツ参加を促した。

 しかし同じ調査で、10代から40代の女性がスポーツに取り組む割合が低い理由は、「仕事や家事、育児の負担が大きいため」と出ている。ボーッと生きているからではないといえるだろう。ゆえにこの決め台詞を用いたPRは、不適当にうつる。

 実際、SNSでは「運動したいけどする暇がないんです」「家事育児仕事で全然ボーッと生きてないのに、チコちゃんに叱られるのイラっとする」「女性が運動できない理由が分かってるんならそっちを改善してほしい」などと厳しい意見が相次いでいる。

11歳の女の子の相談に「母性」を持ち出すチコちゃん

 永遠の5歳児であるチコちゃんが、芸能界の大人たちを「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と一喝し、豆知識を授ける『チコちゃんに叱られる!』。CGを駆使して豊かな表情を見せるチコちゃんのコミカルさと、構成の面白さでまたたく間に人気コンテンツになった。

 子供ウケもよく、文房具やぬいぐるみなどの関連グッズも多く作られている。しかし幅広い年齢層のファンを獲得しているからこそ、慎重な番組づくりが求められることは言うまでもない。おりしも11月1日の放送回では、看過できない一コマがあった。

 視聴者からの悩みにチコちゃんが答える「縁側コーナー」で、11歳の女の子からのおたよりが紹介された。その相談内容は「8歳の弟がお母さんに甘えている姿をみるとイライラしてしまう、そんな自分がとってもいや」というもの。

 チコちゃんは「お姉ちゃん(相談者)には、『私にも甘えてほしい』って母性があるんじゃないかしら」「ドーンと構えておけば(弟が)『お姉ちゃんも抱っこして~』ってなるかもしれないわよ」とアドバイス。数分程度のコーナーのため、すぐにエンドロールが流れて番組はそのまま終わった。

 ほんのミニコーナーであり、小さな女の子のかわいらしいお悩み相談としてこのハガキを扱ったのだろうが、それこそ「ボーッと」作っているかのような数分間だった。11歳の女の子に対して「母性」を持ち出して規範意識を植え付けることが、あまりに自然になされている。

 11歳の女の子は果たして「自分も弟に甘えられたい」という気持ちでハガキを書いたのだろうか。むしろ逆に、自分も母親に甘えたいのに「お姉ちゃんだから」我慢している気持ちを綴ったのではないか。ミニコーナーとはいえ残念でならない。

 『チコちゃんに叱られる!』は、常識とされていることや日常の素朴な疑問を検証してあるひとつの答え(「諸説あります」と注釈が加えられることが多い)を提示し、視聴者に「へえ」「なるほど」といった気づきを与えてきた。前述のように、きぐるみのチコちゃんが大人を一喝するところも魅力だった。しかし「ボーッと生きてんじゃねえよ!」の使いどころを誤ると、たちまちそのコンテンツの良質さは失われるだろう。

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