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令和に振り返る、大正天皇嘉仁はどんな人物だったのか

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「Getty Images」より

 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、ときに舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 今週末の11月10日は、天皇陛下の即位に伴う「祝賀御列の儀」、祝賀パレードが予定されています。同日にはフジテレビが、皇后雅子さまの物語を「本当のお姿」と銘打って初ドラマ化。新しい時代の訪れと日本における皇室の存在を強く感じます。一方では、まだ記憶に残っているひとも多い昭和天皇を「歴史の中の存在」としてパフォーマンスアートのモチーフに用いたことが議論にもなりました。

時代の流れと個人の資質

 改めて皇室、そして天皇へ思いをはせるにあたり、近代で、最も印象が薄い天皇は、おそらく大正天皇でしょう。先月まで上演されていた劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」は、治世の短さに加え、身体に不自由を抱えていた暗君ともいわれることのある大正天皇嘉仁(よしひと)の物語。「現人神(あらひとがみ)」の立場にあえぎながらも重責をまっとうするために全力であがき、まるで平成や令和を先取りするかのように大衆に寄り添そおうとした、その短い生涯を描いています。

 同劇団は2000年に結成されました。脚本の古川健の綿密なリサーチに基づき、社会問題などをモチーフにした作風で、海外の芸術祭などにも招聘される気鋭の劇団です。「治天ノ君」は同劇団で2013年に初演され、第21回読売演劇大賞の選考委員特別賞、本公演でも嘉仁役を演じている劇団員の西尾友樹は、同役で優秀男優賞を受賞しており、2016年の再演時には全国公演のほか、ロシアでも公演も行っています。

 明治天皇睦仁(むつひと)唯一の男児、嘉仁は、体が弱く勉強も苦手。西欧列強から日本を守るため激動の時代を率いてきた父の明治帝からは「帝に私的な意思は不要、周囲に見せることも、もっての外」と厳しく接せられ、父と呼びかけることも許されず、家庭的な愛に恵まれずに育ちます。しかし、皇太子妃節子(さだこ、松本紀保)との仲睦まじい夫婦生活や、兄のような存在である皇族で教育係の有栖川威仁(ありすがわのみやたけひと、菊池豪)との日々から、健康さを手に入れ、好奇心旺盛で周りを気遣う優しい資質を伸ばしていきます。

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