小児科医に聞く、「風邪って一体何なんですか?」

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「Getty Images」より

 クリニックや病院を受診して「風邪ですね」といわれることはよくあると思いますが、いったい「風邪」ってなんでしょう? 風邪は、医学用語の「感冒」と同じです。日本小児呼吸器学会と日本小児感染症学会が作っている「日本呼吸器感染症診療ガイドライン2017」では、このように書いてあります。

普通感冒とは、『鼻汁と鼻閉が主症状のウイルス性疾患で、筋肉痛などの全身症状がなく、熱はないか、あっても軽症なものを指す。鼻炎といわれるが、より正確にはrhinosinusitis(鼻副鼻腔炎)である』と定義されている。軽症の発熱とは、おおむね38.5℃未満と解釈される

一口に「風邪」といっても

 ……ちょっとわかりにくいですね。つまり風邪とは、鼻水が出たり鼻が詰まったりするウイルスによる病気で、熱はないか、あっても38.5℃より低いもの、という意味です。

 でも、風邪といえば咳があることが普通です。だから、空気の通り道である気道に病原微生物が入ってなんらかの症状が出るけれど重症じゃないもの、ということだと私は考えます。病原微生物とは、ウイルスのほかに細菌があります。マイコプラズマという、ウイルスと細菌の中間のものもあります。『子どもの風邪』(南山堂)という本では小児科医の西村龍夫先生が、風邪とは「ほぼ自然治癒が見込める軽症の気道感染症」といっています。

 空気の通り道には、鼻の穴(鼻腔)から肺の末端部分の肺胞までいろいろあります。上気道炎といわれるものは鼻腔、咽頭、喉頭で、下気道は気管、気管支、肺胞です。これは、くっきり境目があるのではなく、連続していますから、ウイルスが入ってどこまで炎症があるかというのを毎回明確に特定することはできません。

 また、風邪の原因になるウイルスの多くは十種類程度、頻度として低いものや同じウイルスでも血清型の違うものなどを入れたら数百種類になるので、いつも特定できるわけではありません。感染した体の場所の特定も原因病原微生物の特定もできないし、できたとしても症状を和らげる薬を処方されるだけで、根本的な治療はできないのです。

 迅速診断キットで、アデノウイルスやヒトメタニューモウイルス、RSウイルスなど患部にいるウイルスの種類がわかっても、その抗ウイルス薬があるわけではありません。それらが原因だと特定できても、行うのはやはり対症療法です。風邪の原因はほとんどがウイルスなので、抗生物質(抗菌薬)は効きません。かえって下痢をするなどの副作用が増えることもあります。

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