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夫婦別姓、愛称、ルーツ…こんなにも違う日本とアメリカの名前事情

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「Getty Images」より

 名前をめぐる問題は日本にも多々ある。在日韓国人/朝鮮人の通名、選択的夫婦別姓制度の導入検討、外国姓(カタカナ姓)では不動産賃貸を断られるなどだ。いずれも名前が単に個人を特定する記号ではなく、人種、国籍、ジェンダー、文化に深くかかわり、故に偏見を招くものにもなり得るからこそ起こってしまう問題だ。

 以下、アメリカの名前事情を考えてみる。一般的にアメリカでの名前の使い方、使われ方は日本に比べるとユルいと言えるが、深いエスニック事情もはらんでいる。

愛称(ニックネーム)

 まず、アメリカでは愛称(ニックネーム)の使用が浸透している。例えば「マイケル」という名前には「マイク」「ミック」「ミッキー」など多くの定番の愛称がある。

 マイケル・ジャクソンは本名で活動したわけだが、親しい人たちからは「マイキー」の愛称で呼ばれることもあった。「ミッキー」もマイケルのニックネームであることから、ミッキー・マウスとマイケル・ジャクソンを合体させたイラストを見掛ける。ローリング・ストーンズのミック・ジャガー、ボクサーのマイク・タイソンも本名は共にマイケルだ。ちなみにミックはイギリスで使われる愛称であり、アメリカ人にはあまり見られない。

 愛称を使うのはエンターテイナーだけではない。元大統領ビル・クリントンの「ビル」は「ウィリアム」の愛称だ。したがってニュースではビル・クリントンと報道されても、ホワイトハウスの正式な書類には「William Jefferson Clinton」と書かれていた。署名もビルとウィリアムを適宜、使い分けている。

 いずれも「マイケル=マイク/ミック/ミッキーetc.」「ウィリアム=ビル/ビリー/ウィル/ウィリーetc.」であると誰もが知っているため、混乱は起こらない。

 男性の名にはマイケルを筆頭に聖書由来のものが多く(聖書には男性のほうが多く登場するため)、従って同名が多い。友人同士で「ヘイ、チャールズ、久しぶり!」「よう、元気か、チャールズ!」といった会話も起こる。定番の愛称がいくつも生まれたのは、これも理由ではないだろうか。

英語以外の名前:文化とスティグマ

 移民大国アメリカには様々な国・地域・言語の名前が存在する。誰の耳にも馴染み、発音や綴りを尋ねる必要もないマイケルやビルばかりではない。英語話者には聞き取れない、発音できない、覚えられない名前を持つ移民も多く、彼らは苦労する。

 アメリカはそもそもファースト・ネームで呼び合う習慣を持つ国だ。ファースト・ネームを覚えてもらわないことには社交や仕事にも差し障りが出る。これが理由で英語のニックネームを自分で付ける人もいる。アジア圏の名前、特に韓国人の名前は英語話者には非常に難しく、エイミーやジミーといったシンプルなニックネームを使う人がいる。日本人も同様だ。米国にある日系企業勤務者から名刺をもらうと、日本語で本名+英語のニックネームが書かれていることがある。

 ミュージシャンや俳優などの名前も、エスニックな本名ではなく芸名であることがある。ブルーノ・マーズの本名はピーター・ヘルナンデス(ヒスパニック)、ナタリー・ポートマンの本名はネタリー・ヘルシュラグ(ユダヤ系)、ラルフ・ローレンの本名はラルフ・リフシッツ(ユダヤ系)だ。ファンや業界関係者の記憶に残りにくい不利さだけでなく、エスニック性によって音楽性、配役、イメージを限定されるのを防ぐ為でもある。

 これとは逆に、自身のエスニック・アイデンティティとして本名を貫く人もいる。筆者の知人で南アフリカ共和国出身のダンサーは「スドゥドゥゾ」という名前だ。英語話者にも発音が難しく、初対面では何度も聞き直され、挙句に間違った発音をされ、次に会った時には「ごめん、名前なんだったけ?」と聞き直される。それでも南アの文化をアメリカでリプレゼントしている自覚からニックネームは付けなかった。ただし、ダンス教室で幼い子供を教える時は子供にも言いやすく覚えやすい「ミスター・ヌーヌー」という愛称を使っていた。

移民の子供の名前

 移民の親はアメリカで生まれた子供に命名する際、二手に分かれる。アメリカで生まれた我が子にも祖国の文化を継承させたく、祖国の名を付ける親。「この子はアメリカでアメリカ人として生きていくのだから」と、英語名を付ける親。両方を持たせるために、ファースト・ネーム(英語名)+ミドル・ネーム(祖国の名)とするケースもある。また、第一子は祖国の名、第二子以降は英語名という家庭もある。子の名前に対する親の考えが変わったためだろう。

 祖国名を付けられた子供は、幼いうちは「自分だけ他の子たちと名前が違う」「ヘンな名前とからかわれる」、時には「移民扱いされる」と、英語名を欲しがることがある。だが、多くの子供は成長と共に祖国の文化を再認識し、自分の名前を受け入れ、やがてプライドとする。

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