夫婦別姓、愛称、ルーツ…こんなにも違う日本とアメリカの名前事情

文=堂本かおる
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アフリカン・アメリカン名

 アフリカン・アメリカンはこの地に400年暮らすアメリカ人であり、多くが熱心なクリスチャンでもあることから、かつては一般的な英語名がほとんどだった。しかし近年は自身のエスニック・アイデンティティの模索が行われ、子供たちにアフリカの言葉に由来する名前が付けられるようになった。

 様々なヴァリエーションがあるが、一時、女性はラティーシャ、ラトーヤなど「L」で始まる名前、男性なら「デヴォンテ」「ディアンジェロ」など「D’」で始まる名前が流行した。こうした名前は強いアイデンティティになり得ると同時に、他者から名前だけで黒人と見分けられる要素にもなった。

 アメリカの履歴書には写真は貼らず、人種の記入欄もないが、こうした名前で黒人と分かり、履歴書選考の時点で落とされる率が高いとする調査結果も出ている。

名前の自由度とエスニック性

 法的な書類以外では愛称もかなり自由に使える一方、名前はエスニック性の表明にもなる。複雑な二面性を抱えてしまう理由である。

 以下、その他のアメリカの名前にまつわるトリヴィアを挙げてみる。

■ジュニア/シニア

 長男が生まれると父親と同じ名を付ける家庭がある。父親がジョン・スミスであれば、息子は「ジョン・スミス Jr.(ジュニア)」となる。出生証明書に「Jr.」付きで登録され、これが正式なフル・ネームとなる。父親の名は法規上はジョン・スミスのままだが、通名として「ジョン・スミス Sr.(シニア)」となる。ドナルド・トランプと長男がこのパターンだ。

 さらに孫息子にも同じ名が付けられ、「ジョン・スミス III(ザ・サード)」とするケースもある。日本語では「三世」にあたる。

 父子のケースほど多くないが、娘に母親と同じ名を付ける家庭もある。女性の場合は Sr. / Jr. は使わず、単に同じ名前となる。

 ちなみに郵便物の宛名から「Jr.」が省かれることもあり、親子同居のうちは若干の混乱が生じることもある。

■ミドル・ネーム

 ミドル・ネームの選び方には異なる理由がある。

 ミシェル・オバマのミドル・ネーム「LaVaughn(ラヴォーン)」は祖母の名前だ。このように祖先、もしくは非常に近しい親族の名をミドル・ネームとして付けることがある。  

 バラク・オバマのミドル・ネームは「フセイン」だ。父親(故人)がケニア人でイスラム教徒であったことから付けられたものと思われる。大統領選中はこのミドル・ネームが「イスラム過激派」「テロリスト」と揶揄される原因となり、トランプも含め「オバマはケニア生まれで、大統領の資格はない」と主張するバーサー主義者(birther)を生んだ。

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バーサーが「米国生まれを証明するために出生証明書を公開しろ」とオバマ大統領に執拗に迫り、大統領は公開。後にユーモアと皮肉を込め、出生証明書をプリントした公式マグカップを作った。

 キリスト教徒がクリスチャン・ネーム(聖書由来の名)をミドル・ネームとすることも多い。

 ただし、ミドル・ネームは付けなくともよい。

 ミドル・ネームを含めると長くなるため、日常生活では名乗らない、使わない人が多い。書く際も省くか、「ミシェル・L・オバマ」のようにミドル・ネームはイニシャルのみにすることも多い。

結婚(選択的夫婦別姓制度)

 婚姻の際、姓名は自由に変えられる。以下、日本人がアメリカ人と結婚した場合を例に挙げる。

  • ・日本名をそのまま使う(夫婦別姓)=Yuka Suzuki
  • ・配偶者の姓を使う=Yuka Smith
  • ・日本の姓をミドル・ネームとして登録する=Yuka Suzuki Smith
  • ・日本の姓とアメリカの姓をハイフンでつなぎ、一つの姓とする(厳密には夫婦別姓となる)=Yuka Suzuki-Smith
  • ・実践するカップルは少ないが、全く異なる姓名にすることも可能
  • ・新たにミドル・ネームを作って加えることも可能

 いずれのケースも日常生活では臨機応変に使い分ける人がいる。例えば自分は日本姓だが、子供にアメリカ姓を与えた場合、子供の学校では混乱を防ぐために自分もアメリカ姓を使うなど。ただし、正式書類は本名に限る。

 米国での婚姻時に名前をどのように変えても、日本に婚姻届を出す際、戸籍上の姓名を変える必要はない。したがって国際結婚者に限り、選択的夫婦別姓制度が施行されていることになる。

ハイフン、アクセント記号

 上記のように婚姻によるものだけでなく、親の再婚や養子縁組など様々な理由で2つの姓をハイフンでつなぐケースがある。

 アメリカは命名に関する法がほとんどないとはいえ、詳細は州によって異なる。スペイン語名の「José(ホセ)」などに使われるアクセント記号を受け付けない州がある。ちなみにアクセント記号、ハイフン、スペースなどは州が受け付け、正式に姓名の一部であっても、クレジットカード会社など企業によっては コンピュータ入力の際に受け付けないところがある。

 文字数も基本的には規制の対象外だが、コンピュータ入力可能な26文字以内としている州がある。書類記入の場合、ファースト・ネーム+ミドル・ネーム+ハイフンのある苗字は長くなり、名前欄に収まらないケースがある。

 以上、たかが名前、されど名前、なのである。
(堂本かおる)

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