「#KuToo」石川優実さんはなぜTwitterのクソリプに反応し続けるのか

文=雪代すみれ
【この記事のキーワード】

クソリプに返信し続ける理由

――それにしても、日々これほど膨大なクソリプに返信し続けるのは容易なことではないですよね。石川さんは、なぜクソリプに返信し続けるんですか?

石川:グラビアの仕事をやってきて、これまで2ちゃんねるやAmazonのレビューにクソリプと同じような人格攻撃や侮辱の言葉をたくさん書かれてきたからです。以前は「私がグラビアの仕事をしているからだ」「売れないから仕方ない」「私が悪いんだ」と思い、黙って見過ごしていました。グラビアをやっていたけれど、誹謗中傷に傷ついて辞めちゃった子も見てきました。

 ただ、芸能人だからといって何を言われても我慢しなきゃいけないとか、言い返すのはみっともないとか言われたりするのは絶対おかしいとずっと思っていたんです。Twitterって、2ちゃんねるやAmazonレビューとは違って、やり取りができるじゃないですか。それもあって、今はちゃんと言い返していこうと思っています。

――精神的に辛い時はありませんでしたか?

石川:誹謗中傷まがいの言葉はグラビアの頃から受けていたのでそんなに辛くはなかったんですけど、「#KuToo」の運動が大きくなるにつれて、私の勤務先の葬儀場を特定しようという動きもありました。勤務先に迷惑がかかるといけないので、そのお仕事は辞めたんですが、その時は本当に辛かったです。

 ただ、クソリプと闘っているといいこともあって。たとえば、やっぱり最初は穏やかに物事を解決しようとして下手に出ちゃうんですけと、その時点で自らの立場を下げているようなものなんだということに気がついて、それからは自分のためにもきちんとブチギレていこうと決めることができました。あとは、こうしてインタビューなどでスラスラと回答できるようになったのは、クソリプに言葉を返すために自分の気持ちや疑問を言語化するトレーニングが生きているのかも。

――クソリプとのやり取りのおかげで、言葉の引き出しが増えた?

石川:そうなんです。たとえば「グラビアをやっているくせに」とクソリプを飛ばされた時、相手は私がグラビアをやっていることについて何がおかしいと言いたいのか、そして自分はその言葉の何に怒っているのか、すぐには分からなかったんです。でも、クソリプについてじっくり考えると、この人は「グラビアを仕事にしている人は社会運動しちゃいけないと思っている=グラビアを仕事にしている人は女性差別にあっても仕方がないと思っている=グラビアを仕事にしている人を差別している」ということになるのか……と分かったんです。

――石川さんが返答を続けることで、誤解が解けたり相手の考え方が変わったりした例はありましたか?

石川:うーん、匿名のクソリプで絡んでくる人にはいないですね。きっと、わかろうって気持ちもないんだと思います。

 ただ、悪意なくクソリプを飛ばすようなタイプの男性の友人から、「ヒステリーな言い方はよくないよ」と言われた時に、私もすぐには言い返せなかったんですけど、ちゃんと考えたうえで「前にそういうこと言ってたけど、よくないよ」って怒ったんです。彼は自分の母親に対しても「ヒステリーだから話を聞かない」と言うこともあったそうなんですが、私が怒った理由を理解してからは、「これも女性差別だったんだね」と改めてくれました。ただし、これは大前提として、友人としての関係性をつくっていく気持ちが互いにあったからこそ成立したのかも知れません。

 私もリアルでは、たとえば会話の中で誰かが差別的な発言をして「んん?」って感じても、やっぱり咄嗟に怒ることはまだできません。あと、これは昔のクセなんですが、相手を立てるような話を提供してしまったりすることもあります。

――石川さんのクソリプ対応を見ていると、一見すると言葉や態度は悪いのかもしれませんが、じつはとても真摯で丁寧な行動だなあと思います。

石川:ありがとうございます(笑)。ただ、相手に対して真摯でいたいというよりは、ただ自分のために、モヤモヤを解き明かしているという感じです。丁寧に説明したところでクソリプしてくる人には伝わらないかもしれないんですけど、自分が納得できることが一番大事なんです。

怒ること、楽しいことは両立する

――今回の著書で石川さんが、「怒るのがめっちゃ楽しい」と仰っていたのもとても印象的でした。

石川:怒ることによって自分の感情を表現できるので、気持ちが安定するんですよね。ストレス解消にもなりますし、健康にも良いと思う(笑)。

 あとは、女性はステレオタイプな女性像、たとえばおしとやかであることを求められているので、喜怒哀楽のなかでもとくに怒るという感情を表出することは良しとされていないと感じていて、違和感があります。

――石川さんを見ていると、イヤな言葉を浴びせられたり、軽んじられたりしたときは、ちゃんと怒ったほうがいいし、怒ってもいいんだよなって思えます。

石川:怒っているロールモデルを見せたいという気持ちはありますね。Twitterで酷いこと言ってくる相手には、わざと強く出たり、言葉遣いを相手に合わせて私もあえて悪くしたりしている側面もあります。もちろん、怒っているだけでは終われないので、きちんと結果を出していきたいとも思っていますね。

――石川さんのその姿に勇気づけられる女性は多いと思います。自分の怒りという感情をないがしろにしていた女性も多いと思います。

石川:私もこれまでは、自分の怒りという感情をちゃんと見てこなかったんですけど、こうやって怒ってみると意外と冷静な自分もいて、楽しいと感じている。この感覚を言語化するのは難しいんですが、怒ることと楽しいことは両立するんじゃないかなと思っているんです。私自身、怒ることができるようになった今の方が幸せなんですよ。

 もちろん、怒りたくない人は怒らなくていいんです。ただ、我慢をしている人には、怒るという選択肢もあるし、怒りを表明するこちら側にきても楽しいよ、と伝えたいです。

 あと、怒っていたら女性はモテない、というのは幻想だと思っています(笑)。私は怒るようになってからの方が男性ともうまくいくようになりましたし、そもそも女性が怒っているだけでイヤだなんていうようなつまらない男性にはモテなくてもいいって思えるようになりましたから。

――私も、怒ってもいい時は、怒れるようになりたいです。

石川:一番大切なのは、自分のために行動するということなんです。「自分を大事にする」という言葉は昔から言われてきたし、上辺だけの言葉は知っていましたけど、私が本当の意味を理解したのは30歳を超えてからなんです。もしどこかモヤモヤした思いを感じている方がいるなら、ジェンダーやフェミニズムのことについて自分なりに調べてみると、もしかしたら解決していくかもしれません。

 「#KuToo」を発信したことでクソリプもたくさん頂戴しましたが、私がすごく心強いなと思っているのは、「#KuToo」の運動を説明する場に呼ばれて行くと、いつも年上のフェミニストの方々がアドバイスをくださったり、優しく応援してくださったりすることなんです。フェミニスト同士が世代を隔てずにつながって、上の世代のフェミニストの先輩たちからもっと学んでいけるようになったらいいなと思いますね。

 怒ることも、フェミニズムについて勉強することも、自分が心地よく生きていくためには何をしたらいいのかという視点で考えてもらえたら嬉しいです。自分を本当に大切にするってどういうことなんだろうと考え始めてから、私は変わりました。

(取材・構成=雪代すみれ)

1 2 3

「「#KuToo」石川優実さんはなぜTwitterのクソリプに反応し続けるのか」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。