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増税で貧しくなっても「共働きすれば良い」「スマホ決済で乗り切れ」? なぜ法人税を上げないのか

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「Getty Images」より

 10月から消費税が8%から10%に上がって1カ月が経った。総合転職エージェントの株式会社ワークポートが全国の転職希望者を対象に行った調査によると、「消費増税1カ月後の変化」として消費増税を負担に感じているとの回答が57.8%と半数以上にのぼっている。 

 また、帝国データバンクは10月の景気動向について、「10業界中8業界が悪化した」と試算。台風の影響を考慮しつつも、消費増税の影響により「小売業」や「サービス業」などの消費関連業種が打撃を受けたと分析した。わすか2%、されど2%。“消費税10%”のインパクトは大きい。

 税金は国の予算となるが、国民の生活保障にしっかり役立てられているかは疑問だ。たとえば性犯罪被害者をサポートするワンストップセンターの人件費など予算は削減され、政府が毎年4月に新宿御苑で開催する「桜を見る会」の招待客人数と支出額が増え続けていることが参議院予算委員会で問題視された。「桜を見る会」は安倍晋三首相や閣僚らが多数の地元後援会員を招待していたことも発覚、法的な問題も追及されており来年度の開催は見送ることが発表された。

 このような情勢では納税者の不安と不満もたまるばかりだが、11月5日に放送された『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)では、「“大増税時代”を生き抜く道!~消費税増税から1ヶ月~」といったタイトルで消費増税後の生活を特集。これもまた、9月放送の『クローズアップ現在+』同様に、納税者である消費者がいかに工夫して順応するかという内容だった。

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ウェジー 2019.09.28

 番組冒頭、千葉県在住の夫婦と子供2人の4人家族が取り上げられ、妻は専業主婦であったが消費増税を期に仕事を始める姿が映される。「消費増税分の家計の支出増を、専業主婦が働くことで補填する」というストーリーだった。より多くの国民が働き、納税しろという話である。こうしたケースを取り上げて「増税後を生き抜く」と言われても、しらけるばかりだ。

 現金派を主張する中年男性が、スマホ決済のやり方について子供たちからレクチャーされる場面も取り上げられた。スマホ決済をすれば2020年6月まで最大5%が還元される取り組みが実施されており、「スマホ決済をマスターして消費増税を乗り切ろう」ということだ。しかしスマホ決済により還元されるポイントには税金が充てられており、その予算額は今年度分だけでも1786億円を計上。本末転倒ではないだろうか。

法人税の代わりに消費税を引き上げている?

 番組では日本経済新聞上級論説委員の大林尚氏がスタジオに登場し、次のように消費増税の必要性を説いた。

「消費税の税収は年金や医療など社会保障のために使われています」
「将来の負担を減らすために、増税をして“痛みを分かち合う”。これが消費税10%の引き上げになった」
「(将来的には)消費税率は10%ではもたない。2040年には国民の4割が65歳以上になり、社会保障費は約190兆円になるので最終的に15%までの引き上げは避けられない」

 財務省が7月に発表した2018年度の税収総額は約60兆4000億円と過去最高。その内訳を見てみると、所得税(19.9兆円)、法人税(12.3兆円)、消費税(17.6兆円)、その他(11.6兆円)となっている。消費税の割合は非常に高く、反面、法人税は低い。約30年前と比較してみよう。1990年度の税収総額(約60兆1000億円)を見ると、所得税(26.0兆円)、法人税(18.4兆円)、消費税(4.6兆円)、その他(11.1兆円)となっている。所得税と法人税は減少しているのだ。これは所得税の最高税率が1990年度(70%)よりも2018年度(45%)が大きく下がっているため。同様に法人税率も1990年度(40%)から2018年度(23.2%)と引き下げられている。

 これではまるで、「所得税や法人税を下げる代わりに消費税を上げられている」かのようだ。実際、番組では消費税廃止を訴える政党「れいわ新選組」の山本太郎代表の主張も紹介。山本氏は、「日本は20年以上に及ぶデフレで成長がほとんどできていない。この状況で強制的な物価の引き上げである消費増税がされれば消費はより冷え込む」「税の基本は何かを考えてほしい。『無いところから取るな。あるところから取れ』という当たり前の考え方です。法人税・所得税を変える税制改革をしていく」と、大林氏と全く逆の見解を示した。

 消費税はすでに10%となっており、消費者は「順応」せざるを得ない。しかし消費増税で消費意欲が抑制されれば、モノやサービスが売れず、結果的に景気は伸び悩む。今の日本に必要な税制改革は、消費税UPではなかったはずだ。

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