ビジネス

わずか6年でホテル業界ナンバー1も視野に 次々と日本進出する「OYO」の強み

【この記事のキーワード】
わずか6年でホテル業界ナンバー1も視野に 次々と日本進出する「OYO」の強みの画像1

OYO公式サイトより

 2019年3月に日本でスタートした賃貸サービス「OYO LIFE」。「OYO LIFE」は、敷金、礼金、仲介手数料なし、水道光熱費込み、WiFi、家具・家電付き(選択可能)で、部屋を提供している。物件探しから入居、決済、退去までスマホ1台で可能な、新しいスタイルの賃貸サービスだ。「旅するように暮らす」という謳い文句を聞いたことのある人も多いであろう。

 4月には「OYO Hotels Japan」が、ホテル事業を開始した。利用客はアプリを利用してOYOと提携したホテルを検索し、手頃な価格で宿泊できる。ホテル経営者にとっては、OYOとの提携により、収益性の向上が期待される。

 「OYO LIFE」は、ヤフーとインドの企業「OYO Hotels & Homes」の合弁会社「OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN」が運営。「OYO Hotels Japan」は、ソフトバンクグループと「OYO Hotels & Homes」の合弁会社「OYO Hotels Japan」が運営する。

 日本の巨大企業、ヤフーとソフトバンクグループとのコラボで日本に上陸したインドの企業「OYO Hotels & Homes」とは、どのような会社なのか。

OYOと提携後のホテルの変貌

 まず最初に、筆者が実際に見たOYOと提携後のホテルの変貌ぶりを紹介しよう。

 筆者はインド在住時、北西部ラジャスタン州にある全50室ほどのホテルに居住していた。広いガーデン、スイミングプールのあるホテルで、駐車場の前にある離れの一室を借りていた。

 住み始めた当時は、まだホテルはオープンして数年で古いタイプの客室が多かったが、次々とガーデン脇に部屋を新築していった。しかし、新しい部屋ができてもしばらくは空室が多い状態が続いていた。

 ある日、ホテルの入り口とフロントにOYOの看板がついた。OYOは独自の基準を満たした既存のホテルと提携するビジネススタイルが主である。OYOを通して提携ホテルに宿泊した際のホテルからの手数料が、OYOの収益になる仕組みだ。

 しばらくすると、次第にお客さんが入り始め、部屋は満室、駐車場も満車の日が増えてきた。

 ホテルオーナーに「最近、お客さんが増えて良かったですね」と言うと、「OYOがお客さんをどんどん送ってくれるんだよ!」と満面の笑みで答えが返ってきた。

 ホテルオーナーは、一帯の地主で親から引き継いだ土地と資金はあるがホテル経営は素人で、パソコンの操作が苦手な30代後半の男性であった。しかし、OYOと契約し、アプリで予約管理が出来るようになり、スマホ一台で経営管理が可能になった。それ以来、筆者に「パソコンの使い方を教えてくれ」とは、言わなくなった。

 その後、客室にも変化があった。カーテンや部屋にかけられている絵なども、洗練されたものに変わっていった。最適なデザインを見つけ定型化するOYO独自のデザインアルゴニズムにより、客室の稼働率が2倍、3倍になった客室もあるとOYOはいい、ここでもその効果が見られたのではないかと思う。

 またOYOは、OYOのロゴ入りのポロシャツをホテルに支給した。制服を着るようになってから、スタッフの働き方も心なしか変わったように見えた。筆者がスタッフに「あら、その制服良いわね!」と言うと、スタッフが得意げな表情を見せた。インドのホテルでは、高級ホテル以外は制服のないところが大半なのだ。制服を着ることにより、心構えが変わったのではないか。

「あと数カ月で世界第1位になるだろう」

 「OYO Hotels & Homes」は、2013年に同社のCEOであるリテシュ・アガルワル(Ritesh Agarwal)氏が、19歳で起業したホテルチェーンだ。

 創業6年あまりで、客室ベースで世界第2位のホテルチェーンに成長した「OYO Hotels & Homes」。現在も3カ月で9万室もの新しい部屋を提供するペースで業績を伸ばしている。アガルワル氏は、「あと数カ月で世界第1位になるだろう」と述べている。

 アガルワル氏は、インド国内を旅行していた際、快適なホテル滞在には、部屋の清潔さや質の高いサービスが欠かせないと実感した。これが創業のきっかけになったという。

 その後、PayPalの創業者ピーター・ティール氏によるティールフェローシップにより、10万ドルの資金を得て、OYO のサービスを開始。ティールフェローシップでは、20歳以下の学生を世界から20人選抜し、それぞれに10万ドルの資金を提供され、アガルワル氏もその一人に選ばれたのである。

需要予測とダイナミックプライシング

 OYOの特筆すべき点は、AIによる革新的なテクノロジーを利用して、事業を展開していることだ。OYO は、ホテル事業においてAIの技術を駆使し世界を先導している。ヤフーやソフトバンクグループは、単なる宿泊産業と組んだのではなく、時代の最先端のテクノロジーを持つOYOに価値を置いているのだ。

 OYOでは、ビッグデータの分析やデジタル化により、システムの効率化を図っている。

 ビッグデータとは、文字通り、巨大なデータを指すが、構造化、定型化できないデータ、日常的に無限に生成されるリアルタイムのデータ、時系列のデータなども指す。

 ソフトウエアを軸とするデジタル化は、OYOを牽引するエネルギーだ。その中には、AIを用いた自動プログラムで行う需要予測とダイナミックプライシングがある。

 ダイナミックプライシングとは、市場の需要により価格が変わる変動料金制をいう。曜日や天気、ホテル周辺のイベントなどを基に、OYO では毎時14万4000件のデータを解析し、1日に5000万回もの価格調整が行われる。これにより、ホテルの稼働率が3〜4割から7割まで上がった例もあるという。

人材確保に事欠かないインド

 この記事を書いている時に、筆者の滞在していたホテルがトリップアドバイザーの「2019年エクセレンス認証」の認定施設になっていることを知り、正直驚いた。

 エクセレンス認証とは、最高のサービスと優れたホスピタリティーを提供していると、旅行者に高く評価された施設に授与されるものである。これは、OYOとの提携により、ホテルの質とサービスが上がっていったことも無関係ではないだろう。

 OYOでは、2020年までに2000人以上のIT技術者を雇用すると表明している。人口13億人、平均年齢27歳のエネルギッシュな大国インドには、優秀な若者が数多く存在する。IIT(アイアイティー)と呼ばれるインド最高峰の国立大学であるインド工科大学はインド各地にあり、グーグルCEOを輩出するなど、人材確保には事欠かない。

 OYOが今後のホテル業界や不動産業界で切り拓く新しい道筋が楽しみだ。 

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。