社会

精度の高さが示されたハザードマップ、課題は周知の向上

【この記事のキーワード】

「Getty Images」より

 10月中旬に日本列島に上陸した台風19号は、関東・東北地方を中心に深刻な被害をもたらした。11月1日現在、台風19号で亡くなったのは全国で90人、5人が行方不明となっている(NHK報道より)。

 今回の台風では、未曾有の降水により70以上の河川で堤防が決壊、各地で相次いだ浸水が被害を拡大させる大きな要因となった。普段は平穏に流れている河川が、大雨などでひとたび増水すれば、狭くないエリアを水没させるほどの脅威となることを、多くの人が痛感したのではないだろうか。

 氾濫のおそれのある河川や浸水リスクの高い地域を平時から把握し、避難場所に関する情報を集めておくことが賢明だが、そんな災害避難に必要不可欠な情報を提供するツールが、ハザードマップである。

 台風19号ではこのハザードマップが想定していた浸水地域と、実際に被害に遭った地域との重複率が高いことが判明し、テレビ局や新聞社もこの点に着目して報道した。ハザードマップは防災・減災対策のうえで極めて重要なアイテムであることが浮き彫りとなったかたちだ。

 NHKによると、宮城県大郷町の吉田川、同県角田市周辺の阿武隈川の氾濫によって浸水した地域が、自治体作成のハザードマップの浸水想定区域と広い範囲で一致したという。同様の一致は、長野県千曲川、埼玉県入間川、越辺川、都幾川、茨城県那珂川などの氾濫地域でも見られた。

 精度の高さが示されたハザードマップだが、自治体は想定外の事態に備え、マップの見直しを逐次進めているという。ハザードマップの有効性を十分に生かし切るには、自治体により、住民や企業の周知徹底を図っていく必要がある。

『重ねるハザードマップ』と『わがまちハザードマップ』

 ハザードマップは各自治体が作成する、災害における被害を予測した地図である。各地域の地質や地盤、地形、地歴などの情報を参考に、地震、津波、豪雨、洪水、土砂災害などの自然災害における被害範囲を予測する。ハザードマップは公表している各自治体のホームページで確認できる。

 国土交通省では、住民・自治体が災害情報の取得に役立てられるよう情報公開する「ハザードマップポータルサイト」を運営している。同サイトで活用したいのが、『重ねるハザードマップ』と『わがまちハザードマップ』の2つのサービス。このサイトとは別に、国土交通省の『地点別浸水シミュレーション検索システム』という堤防決壊の予想地点などが分かるサービスもある。

重ねるハザードマップ

  全国の地図上に、災害リスク情報や避難ルートなど防災に役立つ情報を重ね、地域における防災・避難情報を一覧できるサービス。

 たとえば「洪水」のアイコンをクリックすると、全国の洪水浸水想定区域が図示される。洪水被害の危険度は色別で識別できるところも特徴。

 閲覧できるのは洪水関連の情報のほか、道路冠水想定箇所、緊急輸送道路、事前通行規制区間、ため池決壊による浸水想定区域、津波浸水想定、土砂災害警戒区域・危険箇所など、多岐にわたる。複数の災害情報を組み合わせて表示させることも可能だ。

わがまちハザードマップ

 全国の市町村が作成したハザードマップを災害種別に検索するシステム。トップページから、災害情報を調べたい市町村を選択。次のページで災害の種類を選ぶと、各市町村のハザードマップ公開ページへ移動する。

 閲覧できるのは、河川が氾濫したときに想定される浸水域や避難場所ほか、台風の影響などで海水が堤防を越えやすい地域、地震、津波、土砂災害などのリスク・防災情報。市町村名と災害種のみ選択するだけで幅広い情報を一覧できる便利なサービスだ。

地点別浸水シミュレーション検索システム

 国土交通省が管轄するオンラインシステム。検索可能範囲内に限られるものの、堤防決壊の怖れのある河川と破堤点を検索できる。また、特定の地点(住所、地名など)を選択してそこに影響を与える想定破堤点を調べられる「逆引き検索」サービスもある。

 住んでいる地域や職場、子どもの通う学校などの身近な場所の洪水浸水リスクは、どの河川のどのあたりの堤防が決壊することでもたらされるのかが分かるシミュレーションシステムだ。アニメーション表示やシミュレーショングラフ表示など、分かりやすく伝えるために視認性にも配慮されている。

ハザードマップの周知はなぜ進まないのか

 もちろん、ハザードマップといえど万能ではない。宮城県丸森町などは、マップ想定の範囲外で住宅地や田畑が浸水する被害が起きた。これは川の規模が比較的小さい支流の氾濫によって起きた被害で、そもそもハザードマップではこうした小規模河川を浸水想定の対象としていない。浸水想定区域をどこまでカバーできるかが今後の課題といえるだろう。もちろん、浸水想定外のエリアが必ずしも安全ではないとの認識を持つことも重要だ。

 ハザードマップの正確性と有効性は、西日本豪雨など過去の水害でも示された。にもかかわらず、ハザードマップの認知度はまだ高いとは言えない。5年前にミツカンホールディングス(愛知県半田市)が行った、三大都市圏の住民に対するハザードマップ認知度調査では、ハザードマップについて「知っている」と答えた人は39.3%にとどまったという。

 認知していても防災対策として活用していないという人が大半を占め、周知不足という課題が浮き彫りになった。また、4年前に発生した関東・東北豪雨を受け中央大学の研究グループが行った住民調査でも、ハザードマップを知らない、見たことがないとの回答は約65%という結果だった。

 地震や台風、集中豪雨などの災害が頻発する日本。ハザードマップの周知が今以上に進めば、堤防決壊や洪水、浸水などが起きた際の被害軽減につながることも期待できるだろう。わが身と家族を救う確率を少しでも上げるためにも、自宅周辺の浸水リスクや避難ルートの把握が求められる。特に河川の近くに住む人は、ハザードマップの有効活用が望まれるところだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。