「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを、信じてほしい。ココトモハウスの取り組み

【この記事のキーワード】
「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを、信じてほしい。ココトモハウスの取り組みの画像1

東京・都立大学にあるココトモハウス

 仕事やプライベート、メンタルヘルスなど、社会で生きていく上で悩みは尽きないものである。

 カウンセリングサービスのアドバンテッジリスクマネジメント【*】によると、サービス利用者の75.5%は「仕事のストレス」や「プライベート」についての相談をしていた。残りの約24.5%は「メンタルヘルスの不調」についての相談。どの相談に関しても、他者との関係で悩みを抱える人が多いことがわかる。

 日頃の悩みを相談する窓口に、会社の上司や家族、友人ではなく、カウンセリングサービスを選択している人は意外と多い。

 同調査では、気軽に相談できる相手がおらず、孤立する状況が発生しやすいのではないかと考察している。メンタルヘルスの不調を改善することだけに注目していても、悩みをすべて解決することは難しい。相談することで、悩みの本質を理解する必要があるとも述べている。

【*】株式会社アドバンテッジリスクマネジメント」のカウンセリングサービスにおける相談内容調査(2015年から2016年)

 筆者も過去にうつ病を発症し、治療した経験がある。しかし投薬などの治療よりも、家族が悩みを理解してくれたことのほうが回復に大きな影響を与えたと感じている。自分の悩みを理解してくれる人や場所があることは、とても心強いのだ。

 都内の都立大学駅にあるボランティアのコミュニティスペース「ココトモハウス」は、あらゆる悩みを抱えた人が相談できる場所として、癒しの空間になっている。今回は、ココトモハウスの創設者である大薗翔(おおぞのしょう)さん、副管理人のジョジョさん、利用者の方に、悩みを理解してもらう場所の大切さや運営する上での課題についてうかがった。

病気の有無に関係なく、悩みを打ち明ける場所

「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを、信じてほしい。ココトモハウスの取り組みの画像2

ココトモハウスの副管理人・ジョジョさん

 ココトモハウスには「お話を聞くのが大好き」なスタッフが常駐する。利用料金は何時間でも一律:1,000円(税込)で、営業時間は平日:17:30~21:00、土日祝日:14:00~21:00だ。(日によって変動あり。詳細はホームページのカレンダーを確認)

ーージョジョさんはココトモハウスの副管理人ということですが、具体的にどのような活動をされているのですか?

ジョジョさん 雑談しているときもあれば、さまざまな悩みをお話したり、自分のバックグラウンドについてお話することもあります。

ーーどんな悩みを抱えている人が多く訪れるのでしょうか?

ジョジョさん さまざまな人が来られます。うつ病や双極性障害の人が多いのですが、基本的には人とつながれてない人や、友達ができない人が多いです。

 特定の病気についての悩みを話したい人であれば、その病気の「自助会」を利用すればいいと思います。ですが、病気の有り無しは関係なく、友達と悩みについて普通に話せる場所も必要なんですよね。

ーーココトモハウスを設立したきっかけは何ですか?

ジョジョさん ココトモハウスができる以前に、「ココトモ」という相談団体があったんです。実は「ココトモ」をつくった大薗自身がうつ病になってしまって、友達に話を聞いてもらって救われた経験があるそうです。その後、大薗はWebエンジニアの経験を活かして、友達に相談にのってもらえるWebサイトをつくりました。そのWebサイトの活動がだんだん大きくなっていって、今度は「リアルに集まれる場所があったらいいよね」という話になったんです。それがきっかけで、4年前に「ココトモハウス」を設立しました。

パニック症の利用者Aさんの場合

 悩みを相談できる場所ができると、心や体にどのような変化があるのだろうか。ココトモハウスの利用者であるAさんに話をうかがった。

ーーココトモハウスに通われるようになったきっかけは何ですか?

Aさん 今年5月の中旬に、専門学校で行き詰まってしまって、学校へ行けなくなりました。そのときに、話を聞いてくれる場所を探していて、見つけたのがココトモハウスでした。

ーーココトモハウスに通い始めたときのことを教えてください。

Aさん 突然、バスの中で気持ち悪くなったことがありました。外出するときに動悸やフラフラすることが2カ月くらい続いたので、心療内科を受診したら「パニック症」と言われました。「外出するときに、また症状が出るのではないか」という不安から、外出したくても怖いと感じる日が続いていました。

ーー人に悩みを話すことで、何か変化を感じましたか?

Aさん はい。いろんな年代の人がいらっしゃるので、「こういう人もいるんだな」「こういう生き方もあるんだな」など、多くのことを学べました。自分の中だけにしまっておくのではなく、同じように悩みを抱えている方たちとお話をすることが大切だと思います。自分を理解されたり、他の人も同じようなことで悩んでることがわかるので、それだけで気が楽になりました。

ーー直接的な解決方法がわからなかったとしても、話すだけで気が楽になるのですね。

Aさん そうなんです。これは私にとってですが、人と話すことがパニック症の治療に一番良い方法だと思っています。私は人と話していると、発作が起きないんです。パニック症だということを忘れてしまうくらい、話に没頭している自分がいます。外に出かけることがすごく怖くても、出て人と話すことが大切だと思います。

ーー人に悩みを話すようになってから、変化があったのですね。

Aさん はい。以前は部屋で泣いてばかりいたのですが、そのときと比べたら薬もよく効いていますし、身体的な症状もまったくなくなりました。たまに少し気持ち悪くなることはあるのですが、「しょうがないよね。いつものアレだし、とりあえず薬を飲もう」と、落ち着いて自分のことを見られるようになりました。

滑らかに自信をつけて、うまく社会に戻れる仕組みが必要

「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを、信じてほしい。ココトモハウスの取り組みの画像3

ココトモハウスの創設者である大薗翔さん

 ココトモハウスの創設者である大薗翔さんは、自身のWebエンジニアの経験を活かし、「Webエンジニア養成スクール」を開催している。その意図について話をうかがった。

ーー「Webエンジニア養成スクール」を開催されたきっかけを教えてください。

大薗さん Webエンジニア養成スクールは、僕の運営する悩み相談団体の「ココトモ」と、社会参加応援団体の「ばなうた」さんとの共同企画として行っています。僕も「ばなうた」の代表の方も、相談団体の運営に必要な要素は、「悩んでいる人が自分を休ませてあげ、人から否定されずに自分のことを認めてもらえるような場所であること」だと感じていました。

 悩んでいる人も気持ちが安らいでいくと、また頑張りたい気持ちが出てくるようになるんです。僕たちは「何か頑張りたいと思う気持ちの後押しもしてあげたい」という考えで、Webエンジニア養成スクールをつくることにしました。悩みを抱えている人、引きこもりの人でも通いやすいスクールをつくりたかったんです。

ーーWeb技術を身につけて、外出しなくても仕事ができるようになることが目的なのでしょうか?

大薗さん そうです。でも、仕事云々というよりも、自信をつけさせてあげられる場所をつくりたいという思いがずっとありました。人に悩みを話すと、自分のことを受け止めてもらえたと感じ、大きな「安心」が生まれます。すると、また何かやってみようと思えて、社会に戻れるようになるんです。

 でも、何かやってみようという気持ちと社会の厳しさに若干乖離があって…。また打ちのめされて、ココトモハウスに戻って来る人も結構いるんですね。社会に戻るときの“段差”を少し埋められるような何かをつくらないと、ずっと同じことを繰り返して、自信がどんどんなくなっていくと思うんです。何か頑張ろうと思ったときに、滑らかに自信をつけて、うまく社会に戻れる仕組みづくりが必要だと思いました。

ーースクール修了後は、フリーランスで活動したいという方も多いのですか?

大薗さん そういう人のほうが多いですね。なかなか会社の雰囲気にうまく馴染めない人や、自律神経失調症で朝起きるのが苦手で、自分のリズムで仕事ができるようになりたいという人がいます。そういった要望が強いので、自分に合った働き方を見つけようとすると、必然的にフリーランスになるのかもしれません。

社会課題をビジネス化していく

 最後に、ボランティア団体が抱える課題について、副管理人のジョジョさんにもう一度お話をうかがった。

ーー他の場所にもココトモハウスのように悩みを相談できる場所をつくりたいと考えていますか?

ジョジョさん 新しくつくることはあまり考えていないです。それよりも、ココトモハウスでの活動を通して、社会で生きづらさを感じている人の存在を知ってほしいと思っています。日本はこれから、ますます少子高齢化社会になっていきますよね。社会全体が本当の意味で豊かになるためには、社会につながれていない人たちを、社会の中に入れてあげることが必要だと感じています。

 生きづらさを感じている人たちが生きやすい社会になったら、「すべての人」にとってもっと生きやすい社会になる、ということを伝えていきたいですね。

ーーココトモハウスのようなボランティアの施設には、どのような課題がありますか?

ジョジョさん 社会課題を、いかにビジネスとして解決していくかが課題です。ですが、ココトモハウスのようなボランティアの活動のみでは、資金の面で解決できないと思っています。ですので、現在は「チャレトモ」というスキル取得活動の中で、清掃支援プロジェクトを始めています。

 私たちの活動に賛同してくださる清掃会社で仕事を体験してもらい、働きたいと思えた人には仕事を提供する仕組みです。「働けない人たちの価値を見つけ、その人たちが社会の中で認められていく」という動きを、ビジネス化する必要があると思います。

ーー生きづらさを感じている人へ、仕事を紹介するビジネスをしたいということですか。

ジョジョさん  そうですね。元気になってきた方に安心できる環境で、次のステップを用意してあげたい気持ちはあります。ですが、就労支援を事業としてやろうとすると、多額の資金が必要になるんです。

 多額の資金が必要だからといって就労支援事業所を作らずに就労支援活動をしようとすると、国の補助を受けられないので、これも難しいものがありますね。そのため、ボランティア団体などは、次のステップをどう用意してあげるかを模索しているところも多いかと思います。

ーー最後に、一人で悩まれている方へ何か伝えたいことはありますか?

ジョジョさん 多分、一人で悩まれている方は、何も頑張れない状態だと思います。僕は、そういう人たちには、「助けてほしい」と伝えることだけを頑張ってほしいと思うんです。ふと漏らしたSOSで、何かにつながることってあるんですよ。「言っても助けてもらえないだろうな」と思わず、「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを信じてほしいですね。

あなたにオススメ

「「助けて」と言ったら助けてくれる人がいることを、信じてほしい。ココトモハウスの取り組み」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。