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もっと強く、カッコよく。K-POPアイドルは「自分らしく生きる女性たちのロールモデル」になった

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 韓国の大衆音楽、おもにティーンエージャー向けのポップスがK-POPと呼ばれるようになったのは1990年代後半のこと。それからわずか20年ほどでK-POPは世界的な知名度を誇るジャンルに成長した。

 これほどまでに愛される理由はいろいろとあるだろう。キレのいいダンスパフォーマンス、華やかなビジュアル、エッジの利いたサウンドメイクなど、具体的にあげればきりがない。

 中でも最近のK-POP人気を拡大させる原動力となっているのが“ガールクラッシュ”だ。「女性が憧れる女性」という意味で、特にアイドルグループを形容するときによく使われる。

 それではどんなところが女性を引き付けるのか、それがなぜ重要な要素となったのか、ガールクラッシュと評されるアーティストたちを通じて紹介したいと思う。第1回はK-POPシーンのトップを走る3組にクローズアップする。

■ITZY(イッジ)

ITZY『IT’Z ICY』

 ガールクラッシュを明確に意識したコンセプトで大きな成功を手に入れた5人組。TWICEの妹分として今年2月に登場し、デビュー曲「DALLA DALLA(違う違う)」の大ヒットでいきなりスターダムへ。<綺麗なだけで魅力がない子たちと私は違うの/あなたの基準に私を合わせようとしないで/私は今の自分が好きなの/私は私よ>という同曲の歌詞の通り、誰にも媚びずに我が道を突き進む姿に多くのリスナーが共感した。

 続く第2弾「ICY」でも自立した女性の魅力をアピールした彼女たちだが、その魅力が同性のみならず男性にも支持されているのが面白い。ガーリーな要素をほどよく散りばめたクールビューティと言ったらよいのだろうか、男女を問わず人気を集めるこの絶妙なバランスは、所属会社・JYPエンターテインメント(以下、JYP)の先輩であるTWICEや、さらにもっと上の先輩・WONDER GIRLS(少女時代やKARAとともに一時代を築いたアイドルグループ)のエッセンスも感じ取れる。

<私たちは“モンスタールーキー”という呼び名を手に入れたい。新人だけどすべてを上手くこなせる、今まで見たことのないグループになりたいんです>

 これはデビュー直後のショーケースでのITZYのコメントである。ブレイク前に自らハードルを上げるのはかなり勇気のいることだ。にもかかわらず、彼女たちは強気の発言を続ける。

<TWICE先輩はラブリーで美しいけど、私たちはガールクラッシュな魅力と明るく若いエネルギーを持っています>

 メンバー全員が自由に発言できるのは所属会社の理解があってのことだろう。今年2月、JYPはソニーミュージックと合同で新たなガールズグループを手掛けることを発表したが、そのときにJYPの設立者であるパク・ジニョンが語った内容が興味深い。

<審査基準は他の会社とは少し違うはずです。ダンスや歌が上手かどうかよりも大切なのはナチュラルさ。自分の声、自分の表情、自分の性格で踊っているかを見ます>

 同様の基準は、おそらくITZYのメンバーを選考する際にも適用されたと思われる。周囲が求めるものに合わせるのではなく、自分の中から自然に出たもので勝負することが今のアイドルには必要だとJYPは確信しているに違いない。ITZYのガールクラッシュ的な魅力はこのような選考過程を経て生まれたと言えよう。

☆ITZY「ICY」

■BLACKPINK

BLACKPINK『KILL THS LOVE -JP Ver.-』(ユニバーサルミュージック・ジャパン)

 日本は現在、第2次K-POPブームが巻き起こっているが、その中心的役割を担っているのがBLACKPINKである。所属会社は大手のYGエンターテインメント(以下、YG)で、先輩のBIGBANGや2NE1の美学を継承しながら、自分たちのスタイルを追求。ITZYが「こういう感覚ってよくわかる」と女性の共感を呼んでいるのに対し、こちらは女性が「こんな風になりたい」と憧れるような存在だろうか。サウンドの方向性やファッションなどで独自性が際立っているのがグループの最大の強みとなっている。

 彼女たちの主要作品を手掛けているのは、TEDDYというK-POPの黎明期から活動する男性アーティストで、BIGBANGと2NE1の楽曲にも関わってきたことで知られる。BLACKPINKが今年4月に発表した「Kill This Love」にも彼はメインコンポーザーとして参加しているが、トラップをほどよく加えた重低音のリズムと力強いボーカルが複雑に絡み合う様はTEDDYならでは。このクセのあるサウンドを難なく自分のものにしてしまうメンバーたちは、間違いなくトップクラスのガールクラッシュである。

 代表曲「DDU-DU DDU-DU」(2018年)をリリースするにあたり、TEDDYはYGのヤン・ヒョンソク代表とともに、BLACKPINKの4人に<女性らしくする必要はない。もっと強く、カッコよく踊れ>とアドバイスしたという。「Kill This Love」も同じ方向性でやった結果、ついにオンリーワンのスタイルが完成したというわけだ。

 メンバー全員がスタイリッシュなビジュアルを誇り、ステージ衣装でも私服でもモデルのようなオーラを放つ。女性ファンはインスタグラム等でメンバーの服装をチェックして参考にすることが多いらしく、日本進出のときにファッション雑誌や女性誌を中心にした広報を展開していたのもうなずける。

☆BLACKPINK「Kill This Love」

■TWICE

TWICE『&TWICE』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 もはや説明は不要なほど、日韓で国民的人気アイドルとなったTWICE。ポジティブ、スポーティー、キュートといった言葉が似合う彼女たちは、先に紹介した2組と異なるカラーでブレイクを果たしているものの、同性の人気がダントツに高い。

 支持されるいちばんの理由は「親しみやすさ」ではないだろうか。「ある日、街でスカウトされた」「オーディションで選ばれて人気者に」といった数々のエピソードは、一般の人たちに「ひょっとしたら私も努力すればなれるかも」という思いを抱かせるには十分だ。

 デビュー当時の雑誌インタビューで、彼女たちは自身の魅力について次のようにコメントしている。

<TWICEは重複するキャラクターがなく、多様なカラーを持つチームです。さらにステージに立つと、すべてのカラーがよく調和するんです>

 ファンは好みのメンバーを見つけて、その活躍ぶりを自分のことのように喜ぶ。その選択肢の多さと親しみやすさが同世代の女性を引き付けているようだ。

 そんな彼女たちも日本2ndアルバム『&TWICE』(2019年11月20日リリース)ではガールクラッシュ的な魅力を前面に出している。リードトラック「Fake & True」では「ありのままの自分であきらめずに進もう」と励まし、「Stronger」では勇気と信念を持って次の時代を切り開いていく力強さを表現するなど、同世代の女性たちへのメッセージを込めた曲が数多く並ぶ。本作によってTWICEの人気はさらに拡大するだろう。

☆TWICE「Fake & True」

 今回は超大手芸能プロダクションに所属し、トップクラスの人気を誇るグループをピックアップした。
 次回は、より自覚的に「男性上位で保守的な社会と対峙する」「自由な生き方を求める女性たちのロールモデルになる」といった役割を背負ったグループを紹介する予定。
 お楽しみに!

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