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秋葉原のアダルトゲーム屋外広告はなぜ撤去されたか。“オタクの街”の在り方と行政の対応

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「Getty Images」より

 過日、秋葉原の大通りに出現した巨大なアダルトゲームの屋外広告が問題視された。

 秋葉原の街中に位置する、ゲームやDVDを販売する店舗(トレーダー秋葉原3号店)のビルに張り出された問題の広告は、バストや臀部を極端に露出した大勢の女性キャラクターのイラストが描かれたもの。「超エッチ」「おっぱいハーレム」「孕ませ」などのコピーが並ぶ、アダルトゲームの広告だった。

 この広告掲示についてSNSで拡散されると、「あんなに肌が露出している内容の広告を街中に出していいのか」「アダルトゲームの屋外広告は不適切ではないか」と疑問視する声が続出した。徒歩2分ほどの距離には小学校もあり、登下校中の児童への影響を懸念する意見も多かった。

 結局、問題の広告は11月8日までの時点で撤去されている。

 一方で、ネットでは広告が撤去されたことに抗議する声も見られた。秋葉原はサブカルチャー・オタク文化の街として有名であることから「秋葉原はそういう街だろう」「秋葉原に来ない奴が文句を言うな」と反論も噴出。ただ、そうしたカルチャーを支持する人たちの間でも「これはさすがにやりすぎ」「文化を守るためにもゾーニングは必要だ」と見解がわかれている。

【お詫びと訂正】

本稿は千代田区の環境まちづくり部担当者に取材し、原稿の確認もしていただいたうえで掲載しました。しかしながら初出時、記事内容に事実誤認がありました。読者の皆様ならびに関係各位に大変ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びし、訂正いたします。あらためて千代田区の環境まちづくり部担当者および東京都都民安全推進本部・総合推進部都民安全推進課担当者に取材をし、変更・加筆しておりますことをご了承ください。(2019年11月22日18時/wezzy編集部)

千代田区には届け出が出されていなかった

――問題の屋外広告は、どういった経緯や理由で撤去されたのでしょうか。

千代田区担当者:東京都の担当者が現地に赴き、有害な広告に対する措置が条項に含まれている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に基づいて広告を確認し、店舗側や広告主側とも協議の結果したと聞いています。11月8日の午前中には撤去されたとのことでした。千代田区としては、東京都の報告を受けて9日に現地を訪れ、確認と指導を行いました。

――問題の広告は秋葉原の目抜き通りに面したビルに堂々と張り出されていましたが、広告板の設置を千代田区は許可していたのでしょうか。

千代田区担当者:秋葉原エリアに屋外広告物を出すには、千代田区に申請を出した上でチェックを受けて屋外広告物許可を取っていただくという手続きが必要になります。これは東京都の屋外広告物条例に基づくもので、23区やその他の市町村共通の指導根拠です。ただし、問題の広告は届け出が提出されておらず、そのため千代田区としても騒動になってから問題を確認したというのが正直なところです。

――実際に広告を撤去するという段階では東京都の主導で動いたということですが、これはなぜですか?

千代田区担当者:屋外に広告物を出す場合、関連する条例はいくつかあり、すべてが千代田区で事務を行っているわけではありません。千代田区は「東京都屋外広告物条例」に定められたサイズや位置などの規格を遵守しているかを確認し、問題がなければ許可を出しています。
 ただし、「東京都屋外広告物条例」には、広告物の内容に関する詳細な規定がないため、千代田区がイラストや文章などの内容について指導したとしても、法的な根拠はなく強制力がないんです。

――今回のように、届け出なく広告物を掲示した場合にペナルティはありますか。

千代田区担当者:千代田区としては、条例違反があった場合には是正指導を行います。注意を繰り替えしても改善が見られないなど、悪質であると判断した場合には、条例に沿って然るべき対応をいたしますが、そのようなケースは多くはありません。

――騒動を受けて、千代田区ではどのように対応していきますか。

千代田区担当者:先ほど申し上げた通り、千代田区には「東京都屋外広告物条例」に基づく権限しかないため、広告物の内容については指導ができません。ただ、今回の騒動のような例もできましたし、今後は申請時に問題になりそうな内容と認めた場合は担当者が口頭で注意をしたり、必要と判断すれば東京都に情報を提供したりと対応していくことになると思います。

――秋葉原という街の特殊性から、こうした広告も許容すべきだという意見もネット上では一部見受けられます。

千代田区担当者:実は、今回の広告撤去についても「無理やり撤去するのはどうなんだ」「表現の自由ではないか」という反対のご意見も多くいただいています。秋葉原は近年、こうしたサブカルチャー文化のおかげで活性化しているという側面もありますし、行政としては表現に対してどのような線引きをしていくか、そういった難しさはあります。
 ただし、今回のように一般の方の理解を得られないものを認めることはできませんし、こうした広告が増えていくようであれば看過はできません。千代田区としては、地域の皆さんの目やご意見を大切にしつつ、東京都をはじめ関係各所と連携を取って対応を考えていくというのが今後の姿勢になると思います。

東京都が「指導」して撤去されたわけではない

 続いて、東京都都民安全推進本部総合推進部都民安全推進課の担当者に話を聞いた。

――当該広告を知ったきっかけと現地に行ったときの対応を聞かせてください。

東京都担当者:11月5日の13時頃に、都民から電話で『このような広告が出ているのですが』と申し出があったので、職員が現地に行き、事実確認をしました。

 東京都青少年健全育成条例第4条の3「都民は、(中略)青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認めるものがあるときは、その旨を知事に申し出ることができる。」という規定を踏まえ、適切に対応する必要がありました。

 まずは都民からの申出があった広告がどのようなものであり、いつから貼り出されているのか等の事実関係を確認する必要がありました。現地に行った職員からは、トレーダー秋葉原3号店の店長の方から広告の掲載目的や期間等の事実関係をお聞きし、広告の状況を確認した旨の報告を受けています。

 その時点で「指導」などはしてはいません。あくまでも事実確認のみです。青少年健全育成条例の第14条(有害広告物の措置)の対象となるかどうかの判断や、撤去の指導は、確認をした職員の一存ではできませんししておりません。

――では11月5日の事実確認から撤去に至るまでの流れを教えてください。

東京都担当者:調査した職員が戻ってきた後、11月5日のうちに店長の方から『広告主と話し合って、差し替えることにしました』との連絡があったとの報告を受けています。

―――なぜ撤去されたのだと思いますか。

東京都担当者:「なぜ」という点については、店舗のご判断ですので東京都としてはお話しする立場にはありません。

――千代田区との連携というのは?

東京都担当者:千代田区の担当の方がどのような意図で、本件についての「連携」とお話しされたのかは東京都としてはよくわかりません。

 そもそも千代田区の担当の方と本件についてお話しした最初は、11月8日に千代田区の担当者から電話があり、別のweb媒体から取材申請を受けたが、どうなっているのか説明がほしいという内容でしたので、上記の状況をそのままお伝えしたと報告を受けています。

 本件について言うと、仕事の根拠となる条例も千代田区のお話になった条例と私どもの条例は全く違うものです。

――そうだったのですね。ネット上では当該広告について「アリかナシか」という極端な議論が巻き起こりましたが、東京都としての見解を教えてください。

東京都担当者:制度としては、有害広告物に当たるかどうかは、条例第14条及び同施行規則第28条を踏まえ、青少年健全育成審議会の意見を聴く仕組みとなっています。

 こうした事務は本部内の都民安全推進課と若年支援課が連携して行っております。

 今回の広告そのものについては既に掲示されていないため、東京都として、特段のコメントをすべきことはありません。

 表現の自由と青少年の健全育成との関係については、さまざまなご意見があるということは承知しており、そのため条例上は青少年健全育成審議会で慎重に議論する仕組みとなっています。

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