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兵庫県明石市が「紙おむつ無償宅配」検討、情報収集が困難な母子の孤立を防ぐ

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「Getty Images」より

 兵庫県明石市が、来年4月より市内の0歳児を養育する家庭を対象に、紙おむつなどの育児用品を無償で提供・宅配する事業を行う方針を固めた。今年の12月議会にて、補正予算案を提出するという。同様の事業は滋賀県東近江市などでもすでに実施されているが、明石市での実施が決定すれば兵庫県内初となる。

 神戸新聞によると、0歳児家庭への育児用品の無償提供は、子育て世帯の金銭的負担軽減に加え、母子の見守り活動も兼ねているという。宅配ドライバーは子育て経験のある女性が担い、母子の健康状態、虐待の有無、サービスの利用状況などをチェック項目に沿って確認。家庭の状況に応じて市が、保健師派遣、相談窓口を紹介するなど育児支援につなげるという試みだ。

 明石市は、正当な理由なく養育費を支払わない親に過料を科す新条例の施行を目指すなど、子育て世帯への支援に注力していることで知られている。事業の詳細を明石市子育て支援センターの担当者に聞いた。

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ウェジー 2019.10.12

定期的なおむつ宅配は孤立しがちな家庭のケアにつながる

――0歳児を育てる家庭に紙おむつなどの育児用品を無償で提供・宅配する事業は、どのような経緯で持ち上がったのですか。

明石市担当者:市民の誤解を招くといけないので最初にお断りしておきますが、事業は来月の12月議会に議案を提出し、決議すれば実施できるものであり、現段階ではまだ未確定です。
この事業を計画したきっかけは、0歳児を育てる世帯では、紙おむつをはじめとする生活用品・消耗品の支出が非常に負担になっているということからです。以前から、「経済的負担が大きいので支援してほしいという声」も市には届いていました。

――市民の声があったのですね。

明石市担当者:経済的負担に加え、赤ちゃんが0歳児の間は子連れの外出が難しく、母子ともに家に閉じこもりがちになります。そのため、外からの情報が入りにくく、地域での孤立や支援を求めにくい環境に陥ることもあります。そこで、赤ちゃんがいる家庭への在宅支援として、経済的負担や心身の負担を軽減するために、このような事業が提案されました。

――母子の健康を見守る制度として、保健所による保健師または助産師の新生児訪問事業もありますが、それだけでは不十分なのでしょうか?

明石市担当者:新生児訪問は、赤ちゃんが生後4カ月以内までの間に、保健師などの専門職が自宅を訪問するものですが、たった1回だけなので、その後は行政との関わりが薄くなってしまいます。新生児訪問だけではなく、月に1度のペースで0歳児のいる家庭を委託業者の配達員が訪ね、見守りや情報提供をすることによって、家庭と行政とのつながりを作っていきたいと考えています。

――紙おむつなどの育児用品の宅配を行う配達員は、子育て経験のある女性ということですが、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?

明石市担当者:宅配は、「簡単な育児相談ができる知識」を有している方にお願いしたいと考えております。ご自宅に配達するものなので、市民の方々には、女性のドライバーさんの方が安心して応対いただけるのではないでしょうか。予算が成立次第、業者からの企画の提案を募り、業務委託で行う予定です。
また、宅配した際に母子の状況を確認するチェック項目については、これから検討に入ります。

――配達員が訪問した際、家庭に気になる点があった場合は、どういった流れで育児支援につなげていくのでしょうか?

明石市担当者:配達員の方から報告をいただき、市のほうで再度訪問する、児童相談所に連絡するなどの判断を行いたいと考えています。明石市の場合、市が児相を設置していますので、市の内部で情報を共有して、お子さんや親御さんの対応・ケアにあたることが可能です。

もちろん、配達員が強制的に家庭に介入していくことはありません。配達員は保健師などの専門職ではありませんので、積極的に相談を受けるのではなく、あくまでも宅配時に家庭の様子で気になることがあった時や、親から相談を受けた時などに、市に報告する役割を担ってもらいます。

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 現在の日本で実施されている育児支援は、ほとんどの場合、支援を必要とする親が、自ら調べ、連絡を入れる、窓口に出向く必要がある。しかし、最も支援を必要としている人々は、支援の存在を知らない、調べることも困難なケースも多い。孤立しがちな家庭のケアにつながる事業は、これからますます重要になっていくだろう。

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