『ザ・ノンフィクション』のシングルマザーは“甘え”? 頼ることへのハードルを高く見積もりすぎていないか

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『ザ・ノンフィクション』公式サイトより

 11月24日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)の内容が、視聴者間で物議を醸している。この日の番組は、未婚シングルマザーで出張料理人の新羅彩乃さんと、彩乃さんを支える彼女の父・孝志さんに密着したものだった。まず、その概要を記す。

 結婚せずに長女を出産した彩乃さんは、1歳になった長女と都内の家賃14万5千円・1LDKのマンションで暮らす。妊娠した時、長女の父親である男性は「堕ろしてほしい」「結婚はできない」と言ったという。

 彩乃さんの仕事は、自宅で本格的な料理を楽しめるのが売りの“出張料理”だ。仕込み・調理・配膳・後片付けをすべて一人で行い、この数年は充分な収入を得ていたという。しかし依頼は不定期、時間も予測がつかない。仕事の時は姉や知人に長女を見てもらったり、仕事の合間に自宅に戻って長女を寝かしつけるなどして仕事に精を出しているが、“収入の安定”と“自分で時間をコントロールできる方法”を模索する彩乃さんは、新事業を立ち上げる。戸越銀座の路地の一角に自らの拠点となるキッチンを作り、料理ビジネスを展開するのだ。

 新規ビジネスのために、銀行から750万円を借りた。今年の春に長女が保育園に入園すると、彩乃さんは自分のキッチンが完成するまでの間、平日は近所の寿司屋で時給1000円のアルバイトを始める。アルバイトでも料理人としての実力を発揮する彩乃さんだったが、長女が急に熱を出すこともあり、仕事と育児の両立は容易ではない。

 そんな彩乃さんを支えるべく地元・石川県から上京してきたのが、父・孝志さんだ。孝志さんはプログラマーとして30年間勤務した会社を辞め、彩乃さんの仕事と育児をサポートするために、当面、東京にいるという。

 孝志さんは、彩乃さんについて<彼女は僕より人生経験が豊富じゃないかと思うくらい世間に相当揉まれているし、色んなところに突き落とされ、救われ、そういうのを聞いている><彼女ができないことを僕が後ろでフォローする程度で、僕に手伝えることがあったら手伝う>と評価しており、温かい姿勢で見守っているようだ。

 今年7月、彩乃さんのキッチンは無事完成。孝志さんのサポートもあって仕事に集中できるようになった彩乃さんは、スタッフとして昔の勤務先で知り合った男性を雇う。順調な滑り出しに見えたが、相手とのコミュニケーションがうまくいかず、翌月男性は辞めることになった。

 スタッフが辞めたことで「誰ともうまくいかないんじゃないか」と悩んだ彩乃さんだが、9月に入り、結婚パーティーのオーダーが入った際には臨時のアルバイトと和やかな雰囲気で仕事ができたようだ。

 一方、孝志さんは、彩乃さんをさらにサポートすべく、簿記の試験勉強に取り組み、彩乃さんが弁当の移動販売で使用するリヤカーまで手がける。「人件費を抑えるには親父を使うしかないよね」と言う孝志さんは、11月に彩乃さんが弁当の移動販売をスタートした際も、チラシ配りに励む。初日の売上は80個中わずか2個だったが、彩乃さんは「(孝志さんに)感謝を忘れずがんばります」と意欲を見せていた。

 番組放送後、ネット上では、孝志さんの辣腕ぶりに感心する声や、彩乃さんを応援する感想などの一方で、彩乃さんに対して「自分の夢ばっかり追っている」「実家に帰ればいいのに」「子供をほったらかしにしている」という批判も散見された。母親たるもの自分の夢ではなく子どものことだけを考えるべき、という「理想の母親像」は根深いようだ。

 彩乃さんは、友人や姉だけでなく、父親が仕事を辞めてまでサポートをしてくれるという、恵まれた環境にいると言えるかもしれないが、これに対して「人に頼りすぎ」「甘えている」という意見も聞こえる。しかし彼女は人を頼りながら自分自身で積極的に動いている。働くために必要なサポートを「甘え」だというのはおかしいだろう。

 「人を頼るべきではない」という声は、第三者の助けが必要な母親を委縮させ、助けを求めることへのハードルを高くしすぎてしまう。助けやサポートを求めることも甘えることも、決して悪いことではなく、私たちが生きるために必要なことだ。

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