社会

ラグビーは野球やサッカーのように「プロ化」できるのか?

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「Getty Images」より

 日本で大きな盛り上がりをみせたラグビーワールドカップが終わり、約1カ月経ちましたが、日本代表のメンバーがメディアに出ない日がないほど、そのフィーバーぶりは衰える様子がありません。

 開幕当初、ラグビー日本代表を詳細に報じるテレビメディアといえば、試合の放映権を持つNHKと日本テレビのみという状況でした。日本代表の初戦、ロシア代表との試合では開始から日本代表のミスが目立ち、先制点を奪われるなど本来の調子とはいえない立ち上がりでしたが、徐々にペースを掴んだ日本代表が30-10と勝利。

 平均視聴率も18.3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ/以下同)と好調でしたが、日本テレビ以外の民放でのニュース、情報番組などの扱いはそこまで大きなものではありませんでした。

 しかし、世界ランク2位のアイルランドに19−12と大番狂わせを起こしたあの一戦から、日本代表に対しての視線が一気に熱いものになりました。NHKでの生中継の平均視聴率も22.5%と20%超えを果たすと、ついに日本テレビ以外の民放のニュース番組、情報番組でもトップ項目で取り扱うほどとなり、ここから日本代表への取材が過熱することになります。

 その結果、第3戦のサモア戦では平均視聴率32.8%、瞬間最高46.1%と激増。さらにはその日の全国12都市、16会場ある公式のファンゾーンには15万4165人の来場が記録され、そのほかの地域で開催されたパブリックビューイング会場も満場の賑わいになったと報道されました。

 その後も視聴率は連日、年間最高記録を更新し続けました。

・スコットランド戦  
平均39.2%  瞬間最高53.7%

・南アフリカ戦
平均41.6%  瞬間最高49.1%

 今秋日本で開催された他のスポーツの国際大会の視聴率と比較しても、大差をつけています。

・WBSCプレミア12決勝 日本vs韓国
平均19.2%

・FIVBワールドカップバレーボール男子 日本vsブラジル
平均13.5%

 また、SNSやデジタルコンテンツでも、ラグビーワールドカップ関連の注目度は日に日に増していきました。公式Twitterのフォロワー数は開幕前9万9769から、23万406と増加、インプレッション(表示回数)も3億4000万以上を記録しました。

海外から認められた日本と日本が熱狂したワールドラグビー

 9月の訪日来客数は、日本を除く出場17カ国での集計で前年同月比36.2%増の34万7200人となりました。チケットの販売分の3割は外国の観客で、期間中は40万人が訪日したとも推定されています。

 カンタベリーオブニュージランドジャパンが手掛けた日本代表レプリカジャージー(定価1万800円)は約20万枚生産され、それがほぼ完売したそうですが、街には日本人のみならずインバウンドの観客が桜のジャージーを身にまとう様子が多くうかがえました。まさに日本の戦いぶりが世界のラグビーファンに認められた証左と言えるでしょう。

 大会運営に関しても、チケットの販売率は99.3%にまでのぼり、台風で中止となった3試合を除き、ほぼすべての会場で満員となりました。またファンゾーンにも113万7000人が来場するなど各地で盛り上がりをみせ、ワールドラグビーのビル・ボーモント会長も「ラグビーワールドカップ2019は、最高の大会のひとつであり、私たちが愛するラグビーに新たな観客をもたらしたという点で非常に画期的でした」とコメントしています。

 さらには、日本vsアイルランドで敗北を喫したアイルランド代表が試合終了後に拍手で日本代表を迎えるシーンや、釜石での試合が中止となったあとボランティア活動に参加するカナダ代表の姿など、選手の紳士的な行動がメディアで報じられたりSNSなどで発信されたりしたことで、ラグビーに対する好感度が上昇するのも感じられました。それが如実に数字として現れたのが、日本代表戦以外の試合中継の視聴率です。

・準決勝
ウェールズvs南アフリカ 平均19.5%
イングランドvsニュージーランド 平均16.3%

・3位決定戦
ウェールズvsニュージーランド 平均11.7%

・決勝
イングランドvs南アフリカ 平均0.5%

 ラグビーの世界最高峰の戦いという希少価値があるとはいえ、開幕当初は外国勢同士の試合で視聴率は稼げないものと予想されていたのですが、準決勝以降の試合の視聴率はすべて10%を超える関心度の高さを示し、決勝戦は20%超え。あの熱狂の発端となった日本vsアイルランド戦に匹敵する関心度となったのです。

今後の日本ラグビー界が目指すべきもの

 ワールドカップ閉幕後も日本代表選手はメディアに引っ張りだこで、ニュース、情報番組だけでなくバラエティ番組にも毎日のように出演しています。またユーキャンが主催する新語・流行語大賞には「ジャッカル」「にわかファン」「4年に一度じゃない。一生に一度だ」「笑わない男」「ONE TEAM」といったラグビーワールドカップ関連の言葉が5つもノミネートされました。

 このような現象は、2011年のFIFA女子ワールドカップサッカーでの日本代表優勝や、2018年の平昌冬季オリンピックでの女子カーリング日本代表銅メダル獲得のときにも見受けられました。

  では、それらの競技の観客動員数は、そのフィーバーを受けどうなったでしょうか。日テレ・ベレーザに所属する籾木結花選手がnoteに1試合観客動員数の比較データを載せています。

 それによれば、日本女子サッカー「なでしこリーグ」の観客数は、ワールドカップ優勝当時に前年の3倍に跳ね上がりましたが、その後は年々降下の一途をたどり、2015年のワールドカップでも準優勝の好成績を残したものの、2011年ほどの伸びを見せてはいません。

 カーリングも、競技人口が3000人から大きく増加してはいません。カーリング専用のシートがある専用施設は日本全国で11カ所しかなく、天然アイスリンクを含めプレーできる施設も33カ所と、裾野が広がる環境にもなっていないようです。また新設されたばかりのカーリングワールドカップがスポンサー撤退により2019−20シーズンは中止になったという不運もあり、世間からの注目を集める機会にも恵まれない状況です。

 では、ラグビーはどうでしょうか。

 日本でのラグビー競技人口はもともと多く、かねてより大学ラグビーは冬の花形スポーツでもありました。4年前、2015年のラグビーワールドカップイングランド大会では、日本代表が南アフリカに“世紀の番狂わせ”を演じ、予選リーグで3勝するなど世間の耳目を大いに集めました。その余韻も冷めやらぬ中開幕した2015−16ラグビートップリーグは観客動員年間50万人突破を目論みました。しかしその開幕戦で、ラグビー協会は失態をさらしてしまうのです。

 秩父宮ラグビー場で行われたパナソニックvsサントリーの試合の前売りチケットは完売となり、文化放送が試合を中継すると発表。当日も開場前から2000人近いファンが並ぶほどで、誰もが満員のスタンドに沸く開幕戦を想像していたことでしょう。ところが蓋を開けてみると、観客はバックスタンド中央にのみ集中し、両サイドはガラガラ。ゴール裏にはほとんど観客がいないという寂しい風景。結果、来場者数は前年シーズンの開幕戦よりも少ないという惨状でした。

 原因は2万席分のチケットのうち、一般の前売販売に回ったのがたった5000枚のみだったこと。両チームへの販売分が9000枚、回数券3000枚、スポンサーや各都道府県協会用3000枚の計1万5000枚分のチケットによる入場が思ったほど伸びなかったことが理由です。

 結局、そのシーズンの観客動員数は前年比124%でしたが、49万1715人(1試合平均6470人)と目標の50万人には到達しませんでした。その後も観客数は伸びていません。

  • ・2016−17 46万364人(1開催平均 5059人)
  • ・2017−18 46万6446人(1開催平均 5688人)
  • ・2018−19 45万8597人(1開催平均 5153人)

  なおサッカーJ2リーグ2018年の1試合平均動員が7049人なので、それよりも低いという現状であります。

  日本ラグビー協会副会長の清宮克幸氏はトップリーグをプロ化すべく、以下のような改革を推進しています。

  • 1. リーグの運営事務局を一般財団法人に
  • 2. 各チームホームスタジアム化
  • 3. アジア各国での試合の開催
  • 4. ホーム&アウェー方式の2回戦制

  しかし4年前の惨劇が記憶に残るラグビーファンの中には、この改革の実現性に疑問を呈する方もいらっしゃいます。プロ化となれば、チーム名は地域名+愛称となり、これまでのように企業名が使われることはなくなるでしょう。そうなると、これまで社会人ラグビーの発展に寄与してきた企業が積極的にリーグ運営に協力するのかという懸念が残ります。

 またラグビーはボディコンタクトが激しいスポーツという特性上、野球、バスケットボールのように試合数を多く設定することができません。そのため、チケット収入だけで大きな収益を上げることは現時点では困難と言えるでしょう。さらには、各チームがホームスタジアムを持つことを求められていますが、現在日本には秩父宮、花園、熊谷、釜石と4つしかラグビー専用スタジアムがありません。

 「4年に一度だけじゃない」スポーツにするためには、選手がメディアで活躍するのを促すだけでなく、ハードウェア、ソフトウェアの充実を図り、フィールドで活躍する場面をより多くの観客に観てもらう施策を練るべきでしょう。

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